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アルタ・ダーナ ~巡る運命~  作者: 元帥
第二章~謎の竜使い~
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二ヶ月後

「はぁぁぁぁ!!」

 アインの拳は空気を払いながら、私の顔面へと最短距離をなぞって飛んでくる。頭を数センチ動かす。一重に交わしたことによりアインの攻撃は当たらず、大きく体を泳がせた。勿論、勝負の世界は非常だと、稽古を付けるためには先に言っておいたので手加減をするつもりはない。

「ふっ!」

 流れたアインの腹部めがけて掌打を当てる。苦しそうに表情を変えている間にも二撃三撃と急所を的確に気絶しない程度に打ち込んだ。

「っく!!」

 それでも、アインはめげずに何度も何度も立ち向かってくる。それはもう楽しそうに私との稽古を楽しむようにだ。

 私がアインをアーク村から連れ出して二ヶ月が経った。

 口実通りにアインを独り立ちさせるのなら、まず考えたことの一つとして上げるのなら、アインを強くすることだった。とにかく強くすること。純粋に、誰にも負けない強い子に育て上げることを、目標に取り組んでいる。

 はじめはアインも乗り気ではなかった。もともと心が優しかった子なので、私としても争いごとは避けさせたかったのだが、彼の人生は、村から連れ出すまで悲惨であったがために、私はアインをこうして稽古をつけてあげているのだ。

 半分姉さんの血を引いているアインは、この二ヶ月の間に見つけたことなのだが魔法の才能があることだった。潜在的に流れている魔力を引き出す為にも色々と試してはいるものの、まだ自分の内に潜んでいる力を出すには無理があった。長い年月で見ていくつもりなのでゆっくりと引き出しを開けていけばいい。

 逆に驚いたのはアインの運動能力だ。

 私の頬をかすめたアインの腕を取り、流れた勢いでアインの体を自分の体と密着させる。上半身を倒すとアインの体は大きく旋回するように持ち上がり、鈍い音と共に地面に叩きつけられた。

「しまった!」

 私は事の全てが終わったあと、はっ、と気づいてアインに駆け寄るが、打ちどころが悪いところもあり気絶してしまっていた。

 さてと、運動能力の話を持ち出してきたばかりなのに、こう簡単に気絶をされるとまるで能力値がゼロだと言うしかなくなってしまうではないか。

 まあ、これはしょうがないという事にしておいて、これまでの二カ月間に稽古をしてきているのだが、ちゃんと本気で稽古をしている。はじめは手加減をしながら相手をしていたが、最近は違う。

 先ほどの攻防でも、アインの拳は何度も私の体を掠めて来ていたこと。簡単に交わしているようにも見えるが、実は額に汗が滲むくらいに私は追い込まれているのだ。

 まだ本気でないとはいえ、竜人の身体能力についていける人はそれほどいない。

「さすが、英雄の血を引いている子ね」

 膝に頭を乗せ、アインの髪の毛を掻き撫でる。

 ざぁっと草原に風が吹く。散った草花たちが上空へ舞ってどこかに消えてしまう。

 アインが独り立ちをするためには、まずは竜が必要だ。

 この二カ月間で思い考えてきた事だったのだが。やはり竜が必要なのだと考えが行き着いた。街を三つ通ってきて目に付くのは、人と寄り添っている竜の姿。

 私はもとより必要ない生き物なのだが、アインには必要となる相棒だ。竜がいないというだけで侮蔑されるような目を向けられると流石にいい気分でもない。これから一人となるアインには、心の支えとなるものも居なければならないのだ。

 だが、竜自体が簡単に手に入る生き物なのかと問われるとそうではない。むしろ難しいと分類される方が近いだろう。

 幸いなことに、竜の卵が手に入る場所も知っているので、私たちはそこに向かっているわけだ。

 “はじまりの樹”

 そう呼ばれる所以は諸説あり、人々の妄想話によってオカルトな話になっていたり、死人が集まっているというホラーな話があったりするが、私たちが知りうる限り話すとなると。

 一度、この世界は滅びた。

 寄生竜によって世界の全てが書き換えられたといっていい。

 まだ言葉も離せないような猿だった人間は、書き換えられた世界により知識を与えただけだったが、そのたった一つの意思疎通を出来る様になっただけで人はこんなにも愚かな生き物と成り果てた。

 その書き換えにより、天まで届きそうなほどの大樹がはじまりの樹と言われる所以だ。つまるところ、はじまりの樹は寄生竜の死骸であり、今では竜の巣となっている。

 何度も世界を変革されてくれると、いろいろと困る。前々回は人が言葉を話すようになったけれど、その後のことが怖いので抑止力として私たちが動いている。ただ、三体目の寄生竜を倒したのは姉さんのお婿さん。つまり、お義兄さんが頑張ってくれて、世界は救われている。

 次に出てくるのはいつだろうか…などと思いながらいると、膝の上でもぞもぞと動く気配がしたので視線を下に向けた。

「おはようさん?いい夢見れた?」

 私がそう言うと、アインはじとりと目を細めて頬を膨らませてから頭を横に向けてボソリと呟く。

「いい夢なんて見られる訳ないじゃん」

 膝に置かれていたアインの頭をどかして私も同じように寝転がる。アインは何事かと視線だけをこちらに向けていたが、そんなのもお構いなしに私は後ろから羽交い絞めにした。

「よしよし、大丈夫だよ。アインは強くなってるんだから自信を持ちなさいって」

 うりうりと、抵抗しようにもできないアインの体に密着しながら頭を撫でてあげる。草原のど真ん中で私たちは何をやっているんだろうかと思いつつ、可愛いアインに目一杯愛情を注いであげると。

「やめてよミーナ!そんなに子供扱いしないでよ…」

 顔をほんのりと赤らめながらアインは抗議するが、言葉とは裏腹に体はそんなに抵抗してはいない。

「何言ってるの、私からすればアインは全然子供なのよ?七百歳を舐めないで頂戴。それに、本当は嫌じゃないくせに」

 その言葉を最後にアインは抵抗するのを止め、ぼそぼそと聞こえないくらいの小声で何かを呟いていた。

「さてと!」

 私はアインの手を支点に立ち上がり、あとに続いてアインも立ち上がる。

「行くんだ…」

 アインは丘の下にある街に目配せをした後、私に向き直る。

「うん、あそこにはもう用事はないし、アインの働いていたキュートな姿も見られたことだし?」

「………」

 アインは黙りこくって歩きだした私の後ろを付いてくる。

 一週間前の話に遡るのだけど、聞いてくれると嬉しい。

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