再崩壊
この作品は、とある「嘘」によって成り立っています。
チープなトリック紛い……トリックの形さえ成していないのですが、その「嘘」を考えながら読むというのも読み方の1つかと。
後静読、ありがとうございました。
では、本編スタートです。
……足場が揺れる。立っていられない。
突然の事態に、僕は膝をついて四つん這いになり、後頭部を両手で押さえた。
揺れは続く。
ごうごうと、はらはらと、心が散る。
がらり、と砕けた地面が、僕を拒絶した。
変わらぬ夕暮れが世界を覆う。
断層へと差し込む朱い光が僕を刺し貫く。
土に映った自分の影が、血を流していた。
足掻く。死にたくない、まだ、死にたくない。
何も、救われてなんかいない。何も、変われてなんかいない。
岩壁に手を伸ばす。届かない。
岩壁に手を伸ばす。届かない。
岩壁に手を伸ばす。届かない。
離れてゆく世界。
終わる世界。
死ぬ世界。
――さよなら。
聞こえたその幽かな声の先… …地獄に響くその声を辿る。
奈落の底へと落ちてゆく僕の視線の先。か細い蜘蛛の糸を手繰るように、ふっ、と空を見上げた。
そこに、いたのは――。
「天、使――」
赤い瞳に、白い翼と黒い翼。
移り変わる相反。脳内を駆け巡る事象。
僕には、わからない。
僕には、救えない。
ただただ、堕ちるだけ――。




