Third chapter 1.最初の事件
「かみ殺された?人間が?そんな馬鹿な。」
ありとあらゆる事件を取り扱ってきたが、人がかみ殺されるなんて、聞いた事がない。もちろん、犬や狼にというのなら話は分かるが、しかし、噛み後から見て犯人は、人間だと。
この街には警察という組織が存在しない。最も、これまで警察という組織を必要としなかったからである。街の人はある盟約の下ここに集まったのであるから。
『人に迷惑をかける事は一切ない。もし、かけるとしたら、それは自身が街を出る時。』
おかげで警察は無く、それに頼ることもしなかった。他とは違う、そんな街がこの街なのである。
しかし、いろんな相談事はある。道に迷ったり、野良犬を捕まえたりしたときにそれを話す相手がいなかったらどうしようもない。
そういった理由で作られたのが、この街で警察の代わりを務める組織『ガーディアン』である。ガーディアンにはいろいろな相談が寄せられる。上記のような道案内だったり、迷子の野良犬を元の場所へ帰してあげたりと、日々そんな平和な事件を安い給料で解決している。
今回もいつも同様、警察は動かない。動くのは『ガーディアン』。特殊部隊ではないが、きちんと統率のとれた行動で、いくつかの殺人事件を解決した事もある。もちろん、その時は警察の怒りを受けてしまったが。
「警察には頼らん。」
組織の長は口癖のように言う。今回の事件も警察の怒りを買う要因になりそうだ。
『ガーディアン』支部は街のあらゆるところに点在するが、本部は街の中心にある。噂によれば、『ガーディアン』の方が街が出来るより前にあったとか、無かったとか。
「大体、人が人を・・・」
「目撃者は?」
こういう時、人は二つに分けられる。事実をニュースのように繰り返すものとそれを冷静に判断し、自分の行動を決めるもの。もちろん、何も考えずに紅茶飲んでるやつもいるかもしれないが。
「目撃者、居ません。なんでも、今朝の出来事だったらしく。」
「どうして、今朝だと?」
「目撃者ではないのですが、昨夜その道を通りかかった女性がその時には何もなかった事を証言しています。」
「なるほど。」
「とりあえず、現場に行ってみよう。」
『ガーディアン』の中でとりわけ重要な役割を担っているのが、レナード隊長。それからその部下数名。
レナードとその部下数名は、殺人現場へ向かうべく車に乗り込んだ。