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第1章 希望と絶望の世界

この世には異世界転生系の物語がとてつもなく多い、多すぎて同じ始まり方や同じ展開、同じ結末を辿ったりでうんざりだ。この物語もその内の1つなんだろうな。だがこの物語は世界に1つだけだ。この世界も君の憧れの1つになって欲しいと願う。


 ……というライトノベルをたまたま行きつけの本屋さんで見つけた。中身は見ていないがどうせテンプレのパターンなんだろう。突然異世界転生、何かしらの事故で異世界転生、目覚めたら異世界転生……


もううんざりだ!!だが物語を描くのには描きやすいのだろう。俺はそう思ってそのライトノベルを棚に戻す。


しまった!タイトルを忘れてテキトーに戻してしまった!!確かこれだったはずだが……


……その本をじっくり見た瞬間、その本に吸い込まれるかのように、俺の意識は無くなった。


――これは、水の音……いや、噴水か?さらに賑やかな音がする。


 目を覚ました時、彼は目を疑った。


 中世ヨーロッパ風の街並み、平和に暮らす人間と人と化した獣、自分の服装だけ浮いている。


 間違いない!これは異世界転生だ!!俺は驚愕した。本当にその世界があるんだと言うことを。


 そして俺はまだ気づかなかった。この世界で自分の身に起こる幾多の地獄を……


 多くの人間が夢見た異世界転生を俺は経験してしまった。もう元の世界に戻ることは出来ないのだろう。そう思うと俺はかなり絶望的な状況にあるがとりあえず乗り越えるしかない。


 俺が動かなければ始まらない。俺は主人公なんだ。大丈夫、何か特別な力もきっと……


 ――これは、異世界転生してしまった彼の壮絶な物語である。


 まずは情報収集だ。ここがどこで、俺が()()なのかを理解しなければならない。目覚めたのは噴水のそばだ。何故そこで目覚めたのかは分からないが、周りを見るとこの街の中心っぽい気がするな。


そもそも言葉は通じるのだろうか?日本語は存在するのだろうか?とりあえず話しかけやすそうな()を探そう。頼むから友好的であってくれ。


 広そうな素朴な建物に作業している女性を発見、俺と同じ人間だ。彼は勇気を出して声をかけてみた。


「あの、すみません……」


 彼の声に女性は反応した。


「〇□✕△□✕〇△??」


女性は返事をしたが、彼にとっては全く聞き取れない言葉だ。


 最悪だ……この世界に日本語の概念は無い。英語とか、ていうか現世の言葉が通じない以上この異世界の言語を一から学ばなければならない。現世では覚えるのにおよそ6年ぐらいかかったのにここでは何年になるんだ……


 早々に絶望する彼だが黙っている訳には行かない。彼は何とか身振り手振りで状況を伝えた。


 幸い伝わったのか女性は颯爽と中に入りしばらくするともう一度出てきて中に案内された。


 ……なんとか伝わった。ここはどうやら宿屋の様だ。とりあえず今はここで休める……が、お金が問題だな……


 先程の女性が水を差し入れてくれた。相変わらず何を言ってるのか分からないが有難く飲むことにした。


「〇△□〇〇!!」


 あれ?俺何言って……


「良かった!元気なさそうにしてたけど大丈夫みたいね!!」


 言葉が分かる……と言うか、喋れるようになった!?むしろ日本語が忘れて……


「あの、俺は一体何を飲んで……」


 戸惑う彼に彼女はこう答えた。


「ああ!この水ね!これはヒーリング薬っていうの。これを飲めば何かしらの回復効果があるの。あなただと、言語聴覚の障害が治ったみたいね!さっきまで私の言ってること通じて無さそうだったから。」


 俺はすごい液体を飲んでしまったというのか。言語問題が一気に解決した。これが解決しなければ詰んでいたところだった。


「ありがとうございます。ですがお駄賃の方が……実は、一文無しで……」


 そういうと彼女は笑顔で答えた。


「お金?私の宿は常にフリーだよ。疲弊した旅人を癒すのにお金なんか取らないよ!」


 ……神か。出来ることならずっとここに泊まりたいところだがそんなことをしてる暇は無い。


「本当にありがとう。俺はイトウ カイト。カイトって呼んでくれたらいい。」


 カイトは少し安らいだ気がした。


「カイト……いい名前じゃない。私の名はルー。ルーの宿と言えば私の事よ。いつでも泊まりに来てね!」


 ルーはとても親切な方だ。彼女の笑顔を見るとまた寄りたくなる。


 ……ッ!グァォォァァッッ!!


 ルーの宿を出て数秒後、突如カイトに激しい頭痛が襲いかかる。


「何だ……!この頭の内部から締め付けられる激しい痛みは……!!」


 カイトは今まで感じたことの無い激しい頭痛に耐えられずしゃがみこむ。


「ダメだ……ハンマーで叩かれてるのかと思うほどに痛い……!!このままでは死んでしまう……!!何が原因だ……!?……ダメだ耐えられない!!」


 カイトはあまりにも激しい痛みに耐えきれず、ついに倒れてしまう。


「力が……入らない……多分これは死ん……」


 カイトの意識が無くなる寸前、走馬灯のようにある光景が彼の脳内に映し出される。


「なん……だ、これは……」


 それは何者かによって襲撃を受けて燃え広がるルーの宿だった。カイトはその光景を目に焼き付けて……



 ――その後、彼は死亡した。――


 ――俺は死んだのか?それにしては意識があるし、考えることができる。と言うか、生きてる!?


「目が覚めましたか?」


 目が覚めると横にはルーがいた。さっき見送っていたはずなのに……


「あれ……俺一体……なんでここに……」


 困惑するカイトをルーは心配そうに見ていた。


「とても顔色が悪いわ……まるでさっき死んだみたいな。」


 さっき死んだ……?そういえばそうだ。俺は激しい頭痛に襲われて、何者かがこの宿を襲撃……

……!!


「ルー!ここから逃げろ!!ここが攻撃される!!」


 ルーは困惑する。


「急にどうしたのですか?と言うかどうして私の名を?」


 ……は?


「店の前で倒れているのを発見したのですよ?苦しそうにしていましたからずっと診ていたのですが……」


 ……待て、本当にどういう事だ。なぜルーは初対面のように話すんだ。なぜルーは俺に名前を教えてくれたことを覚えていない?


「えっと……俺が誰か分かり……ますか……?」


 カイトは恐る恐る聞いてみた。


「あなたが誰かなんて分からないわ。掃除をしようかと店を出た途端に倒れているあなたを発見したのですもの。」


 ……覚えて、無いのか……と言うか俺は倒れてたということはこの世界に来て倒れたということなのか……?ルーと会ったのはその時……ならなぜ言葉を喋れる!?あの水を飲んでから喋れるようになったからルーとは必ず会っているはずだ!


「……俺の名はカイトだ。俺に何か飲ませたのか?例えばヒーリング薬とか。」


 カイトの質問にルーは困惑した。


「何を言ってるのか分からないわ。本当に大丈夫?落ち着くまでここで泊まってていいから。」


 ルーが部屋を出た後もカイトの頭の中には疑問しかなかった。


 ……本当にどういう事だ。ここが襲撃されたのを確かに見ていたはずだ……激しい頭痛……


 待て、これは異世界の話だ。もっと発送を飛躍させろ。何故ルーは初対面のように接していた?時間が戻ったかのような……!!


 カイトはあることに気づいた。


 ……間違いない!!俺はあの頭痛で死んだ。そしてここで倒れているかのようにそこまで時間が巻き戻った。死んで時間が戻るつまり、死に戻り。


 ……しかもそれだけではない。どうやらあの光景は幻覚のようだがその頭痛の中で見たものだ。予知能力を得たんだ。


 ……つまり俺は予知能力と死に戻り能力を持っているということか……!!


 俺はてっきりルーが毒薬を飲ませたのかと思っていたが違う!俺は未来を予知して死んだ。


 つまり能力は「予知をすると死んで時間が戻る」


 カイトはその能力を知ったことで、喜ぶわけはなく、ただ驚愕していた。


 ……ただ言えることは一つだけ。


 この先……俺の身に何が起きるというのだ……


 ―続く―

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