表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶をなくした私は、春の死へと向かう  作者: 星々路
第1章 春に戻った少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

第5話 静かに芽生える疑念

翌朝、目が覚める。


――どうして、私は殺されたのか。


それを知るためには、まず自分に恨みを持つ誰かがいたかを調べなければならない。

記憶が戻れば、きっと手がかりが見つかるはず。


私は学校へ通いながら、屋敷の部屋や学校の談話室、図書室――自分が訪れたかもしれない場所を、ひとつずつ確かめて歩いた。


だが、何も思い出せなかった。


触れれば記憶が蘇るかもしれない——そんな小さな希望も、ひとつずつ消えていった。

どうしよう。殺されるのが卒業式なら、もう一年もないのに。


***


そんなある日。


「ルナ、今日うち来ない?最近あんまりゆっくりしてなかったし!」


リリーがいつもの笑顔を向けてきた。しずんでいた胸が少し軽くなる。


「……うん。行きたい」


「よし、決まり!」


リリーの家は広くて、家具や装飾も豪華だった。裕福な家庭だということが、すぐにわかった。


「ルナ、いらっしゃい」


玄関で出迎えてくれたのは、落ち着いた雰囲気の男性――リリーの父だった。


「お父さんね、いつもルナのこと心配してるの」


「ルナ、君のことはずっと気にかけているよ。君のご両親とは旧友だからね。困ったことがあれば、いつでも頼ってくれ」


私の両親を“旧友”と呼ぶ人に会うのは、初めてだった。


「……あの……私の両親は、どんな人だったんでしょうか」


問いかけると、リリーの父は穏やかに微笑んだ。


「お母さんのセレステは、とても優しくて強い人だった。

 昔、私が周りから理不尽に扱われていた時、何度も助けてくれたよ。

 亡くなったと聞いたときは、本当に……つらかった」


うっすら涙が光る。


「お父さんのサイラスは頭が良くてね。学年で常にトップにいるような青年だった。二人はいつも、眩しいほど仲が良かったよ。

 ...ごめんね。用事があって、そろそろ出なければ。また話そう、ルナ」


差し出された手に触れた瞬間――


バチッ。


小さな衝撃が指先をはしった。

胸の奥で、何かが“拒絶するように”震えた。


手を離すと、彼の指がわずかに紫がかって見えた。

冷たく、ひんやりとした硬さを帯びて。


「……静電気かな。失礼」


穏やかな微笑みとは裏腹に、その目の奥の感情は読めなかった。


玄関のドアが開き、彼は静かに外へ出ていく。


その背中を見送ったとき――

開いたドアの向こう、光の中に“誰か”が立っているのが見えた。


アダム――?


瞬きをすると、その影は跡形もなく消えていた。


「ルナ? どうしたの?」


リリーが覗きこむ。


「……ううん。なんでもない」


そう答えながらも、胸の奥に沈んだざわめきは消えなかった。

かすかな違和感――手に触れた瞬間、私のどこかが確かに拒絶した。


――リリーのお父さん……なにか、私の死と関わっている?


頭に浮かんだ疑念を振り払おうとしても、一度芽生えたものは胸の奥にしっかり根を下ろしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ