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記憶をなくした私は、春の死へと向かう  作者: 星々路
第1章 春に戻った少女

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第2話 保健室で告げた秘密

保健室のベッドに座る。

水を口に含みながら、心臓の鼓動がまだ落ち着かない。


アダムはそばで静かに立ち、心配そうに見守ってくれていた。


「……あの……わたし、何も覚えてないの」


思わず口から出た言葉に、自分でも驚いた。

アダムがどんな人かも知らないのに、つい言ってしまった。


「え……」


頭がおかしいと思われたとしても、不安で言葉が止まらない。


「急にごめん、信じられないよね。でも本当に自分が誰かも覚えていなくて...。

だから今私がどんな状況なのかを教えてほしいの。」


声が震える。思わず涙が一粒落ちた。

アダムは息を飲み、一瞬視線を逸らす。

すぐに微笑み直したが、どこかぎこちない。


「……そ、そうなんだ……」


アダムは少し考えてから、手を握ってくれた。

「まずは落ち着こう。焦らなくていい、なんでも教えるよ」


その言葉に安堵し、「何故こんなにすぐ信じてくれるのか」という疑問は心にしまっておいた。

今も知らない世界に囲まれているはずなのに、アダムの手を握ると少しだけ落ち着く。


そのままアダムは知っている限りの私のことを教えてくれた。


私の名前はルナ・ヴァレンティナ、高校2年生になったばかり。

両親はすでに他界しており、今は残った屋敷で使用人と暮らしている。

特別な能力はなく、魔法植物を使った医療魔法を勉強している(私が通う魔法学校は、通常、特別な能力がある人しか入れないが、何故か私は能力がなくても入学できたみたいだ。意欲が認められて?らしい)。

いつも一緒にいる友人・リリーは、今日はたまたま体調不良で学校を休んでいるらしい。


とにかく自分が何者かが少しでも分かって安心した。

「何も覚えていないなんて、変な話してごめんね。でも色々教えてくれて、助かった」


「正直、まだ信じ難くはあるけど、助けられたならよかった。

あとで病院に行ったほうがいいと思う、なにか記憶を戻せる治療が見つかるかも知れない。

でも、とりあえず今は休みな、顔色が悪いよ。」


「ありがとう。たしかにすごく体が重いから、このまま眠らせてもらおうかな」


私は保健室のベッドで横になり、一瞬で眠りについた。


再び卒業式で死ぬイメージが見える。

血、痛み、叫び声。

その時気がついた。死ぬ時に聞いた叫び声はどこか、アダムの声に似ている――。


ハッと目が覚めると、ベッドの隣の椅子で、アダムが眠っていた。

また心臓の鼓動が大きくなるのを感じた。

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