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第九話 第十八階層

 玉座の間から出ると、早速魔物たちが鼻息荒く出迎えた。




 肌を真っ黒に染めた巨大な人型の魔物は十二階層以降に現れるオーガにも似ているが、放たれるプレッシャーはその比ではない。




 「な、なんですか。この魔物……!」




 顔を引きつらせる小雛に湊が答える。




 「たぶんマルゴラスって言う悪魔化したオーガかな」




 湊が宙から杖を取り出す。




 湊は聖浄に輝くその杖を、マルゴラスに向かって無造作に振るった。




 「悪徳散らす正義の光権ディバイン・スラッシュ




 杖に浮かぶは幾何学模様。




 円陣が輝き、傲慢な光が悪を断罪するかのように強大な魔物、マルゴラスのその身を二つに裂き、存在すら認めぬが如く内から焼き払った。




 「へ」




 たった一撃。




 光の剣によるその一閃に、小雛が千度戦っても勝てないと思わせる十八階層のその魔物が一瞬にして消え去った。




 ────一撃・・・だと!?




 ────強すぎィィィィイイイイイ!!




 ────十八階層も大したことないんだな




 ────強すぎて草




 ────今のスキル?




 ────聞いたことない




 ────上級探索者ワイ、開いた口が塞がらない




 湊の力にコメント欄が若干引いていた。




 「いやぁ、やっぱり弱点特攻だよねー」




 得意げになった湊がブンブンと杖を振りながら進んでいく。




 それに小雛はただついていくだけだが、湊の適当な攻撃に次々とマルゴラスが斬られ、塵へと還っていく。




 すぐに城の出口である大扉へと辿り着いた。




 「やっとこの階層から出られるんですね!」




 安心したような小雛をきょとんとした顔で見つめる湊が、大扉押して開く。




 「なに言ってるの?城から()に出るだけでまだまだ十八階層だよ?」




 その言葉に固まった小雛が、ギギギと軋んだ音が立ちそうなくらいのぎこちなさで風が入り込んできた方向へと振り向いた。




 開け放たれた大扉の向こうには、黒く汚染された大地が広がっていた。




 空には黒い太陽が僅かな陽光を大地に降らしている。




 暗く、人が住めるとは絶対的に言えない大地に小雛の瞳から光が消えた。




 遠くには、城より大きな影が動いている。




 「私、ここで死ぬんですね」




 諦めた暗い声で、遺書を書こうかと考える小雛に湊とコメント欄が心配した。




 「大丈夫だよ。ほらこのマスク着けて。これがあればこの階層の毒霧を中和できるから」




 別に毒が怖いとかそんなのではなくこの光景自体が絶望そのものなのだと小雛は言いたかった。




 と言うか、毒霧まであるのか、と小雛に更なる絶望がのしかかった。




 しかし、毒なんか吸い込みたくない小雛は大人しく渡されたマスクを着ける。




 なんとなく息と気持ちが楽になった気がした。




 「マスターは着けないんですか?」




 「うん、高レベルな探索者にはそもそも通用しない毒だからね。適正の探索者なら世界観のフレーバーテキストくらいの感覚だよ」




 「やっぱり、気持ち悪いくらいでたらめですね」




 「ははは、辛辣になったね。それにそのマスク着けてる間は本音しか喋れなくなっちゃうから僕は遠慮したいかな!」




 「またそんなもの!?」




 ────また変なのwww




 ────まともな商品ないんか?




 ────先に説明してから渡さんかぁぁぁいい!




 ────デメリットつけないと気が済まないのか笑




 ────ひなっち結構マスターに対して溜まってたんだね




 ────もしかして、ほんとは腹黒い?




 ────放送事故の予感




 「ち、違うよ!みんなの事は大好きだよ!でも切り抜きから来た奴は許さないから────あっ!」




 ────ひぇっ




 ────本性現したわね




 ────古参民ワイ高みの見物




 ────イエエェェェエエエイ!!新参見てるぅぅぅうううう!




 ────ごめんなさい




 ────古参ですが、切り抜きには大変お世話になってます!切り”抜き”だけにってな!




 ────・・・




 ────・・・




 ────・・・




 ────え




 「ち、違うから!私のこと知ってくれて嬉しいから!……でも人の嫌がる姿見て悦ぶとか最低だよね」




 ────漏れてる漏れてる




 ────そんな風に思っていたのか!ショック!




 ────怖い




 ────それが本音か




 ────ゾクゾクする




 ────だから女は・・・




 ────・・・正論では?




後ろでわちゃわちゃする小雛を尻目に湊は前を歩き出した。

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