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9.エリザベスとブライアンの出会い?

 ソフィーの指示で、フレディは公爵邸の地下牢に収容された。


 私は、不安になったのでソフィーに聞いた。

「王子の命を狙ったスパイなのに、王城に通報しなくて良いの?」


 ソフィーは、当然という表情で答える。

「通報して、我々に何か得がありますか?」


「いやだって、こんな大事を隠していたら、バレた時に大変じゃないかしら」


「バレるも何も、媚薬を王子に飲ませようとしていたことがバレたら、それこそ一大事ですよ。

 あいつは媚薬を飲んでお嬢様になついているんですから、あの犬が王家につかまったら本当に危ないです」


 それもそうか。腕利きのスパイが私の言いなりになるんだから、王子も媚薬を飲んでいたら同じことになっていたわけよね。

 つまり、王子が世を継いだら、王家を乗っ取ることも可能なわけだから、罪としては同じくらいなのか。

 まあ、日本人的に考えると、人を殺すかどうかだから私たちの方が罪は軽いんだけど。

 この世界だと、人の命よりも貴族の家の方が大事だものね。




「カットリーヌさまーーっ」


 ドーンッ


 ウッ


 息が詰まる。

 週が明けて学校に着いたとたんに、エリザベスが私の胸に飛び込んできたようだ。


「ど、どうしたんですか?」

 息を取り戻した私は、取り繕って明るく聞く。


「お休みの間、カトリーヌ様成分が摂取できなかったので。

 もう少し休みが長かったら、体調を崩してしまいそうでした。

 ああーっ、今は幸せですぅ」

 思いっきり息を吸い込んでいる。


 この娘は、私の描いた漫画の主人公だ。

 当然、私の分身的な思い入れがある。


 だが、おかしい。

 確かに一生懸命天真爛漫に設定したけど、しょせん暗い私の考えたキャラだ。

 こんなにも明るいはずがない。


「そ、そうですか。光栄ですわね」

 一応、一生懸命笑顔を作った。


「それはもう。

 カトリーヌ様は、私たち下級貴族の憧れの的ですからー」

 夢見るような瞳で、ジッと見つめてくる。


 カトリーヌ。あんた、どうしてこんなかわいい子に意地悪ができたの?

 私には無理だわ。今は私がカトリーヌだけど。

 でも、エリザベスとは、そんなに仲良くしたくもないけど。

 元来明るくない私とは、話が合いそうにないから。


 とは言え、取り繕っておく。

「私も、エリザベスさんのような可愛いお方とお友達になれて、うれしく思っていますのよ」


「ええっ? 本当ですか?」


「もちろんですわよ」


「ところで、カトリーヌ様は、お休みはどうお過ごしなのですか?

 きっとお忙しいのでしょうね」


 これは、そうでもないと答えたら、週末に予定をぶっこまれる流れね。

 それは、阻止しないと。

「そうですわね。

 いろいろとお呼ばれして、なかなか自由な時間がありませんわ」


「まあ! さすがはカトリーヌ様」

 エリザベスの目が、ますますキラキラ輝いている。


 本当は、結構ダラダラ過ごしているのに、ちょっとウソをついている。

 だから、そんな目で見ないでー。


 エリザベスとの会話をなんとなく続けていると、教室に着いた。




「おい、カトリーヌ」

 ブライアン王子だ。

 こんなに馴れ馴れしいキャラにした覚えはないんだが……


「何かしら?」


「少し話があるんだ。

 ところで、その子は誰だ?」


 あなたが私との婚約を解消して結婚することになるエリザベスちゃんよ、と言いたいところだったが、それを抑えて答える。

「エリザベス・ウッドフォードさんです。

 最近友達になりました」


「フーン、そうか」


 あれ? 興味なさそうね。

 いや、心臓はズキューンと撃ち抜かれてるけど、平静を装っているだけかも。

 何せ、入学式での出会いが無くなったので、これが二人の出会いかもしれないわけだから。


 私は、話を戻す。

「それで、話って?」


「前の週末のパーティーでの話だ。

 分かっているだろ?

 あまり、ほかの人に聞かれたくない話だ」


「それでは、また昼食を特別食堂で」

 今日は、ソフィーから媚薬を渡されていないから安心だ。


 言いたいことを言ったブライアンは、私たちから離れていった。


「ウフフフ

 さすが、カトリーヌ様ですね」


「えっ、何が?」

 エリザベスが何のことを言っているのか、さっぱり分からない。

 ちょっとキツめに聞いてしまった。


「週末にお忙しいのは、婚約者とのパーティーのせいだったんですね。

 しかも、なんだか秘密のお話があるなんて、どうしましょう。

 でも、こんな素敵なカトリーヌ様と週末を一緒に過ごして、学校がある日には特別食堂で密談なんて、ブライアン王子に嫉妬してしまいそうです」


 あなたにそんなキャラ付けをした覚えはないわ。

 それと、ブライアン王子はあなたの夫になる人なんだから、嫉妬する相手を間違っていますよー。

 私は、心の中で叫んだ。




 さて、王子との密談……ではなくて、食事をしながらのお話の時間になった。

 また、少し遅刻して来やがった。

「待たせたな」


 ううん、今来たとこ、と言いたいところだが、言ってやんない。

「うん。しっかり待たせてもらったわ」


「ハッハッハ

 手厳しいな。

 でも、今日はまだ料理が運ばれていないな」


「あなたが前回好き嫌いを言ったから、注文しないで待っていたのよ」


「そうかい。前回は、そうだったかな」

 王子は、以前の記憶がないかのように給仕を呼んで料理を注文した。



 料理が運ばれてくると、話を切り出してきた。

「実はな、カトリーヌ。

 あの後、王都にあるハミルトン辺境伯の公邸を訪ねたんだが、見事に逃げられてしまったよ」


「ええっ? どういうこと?」

 辺境伯って全然知らない人だけど、逃げたってどういうことかしら。


次回更新は、水曜日の予定です。

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