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7.メイドのソフィー

 お屋敷に帰った私は、部屋でソフィーと二人きりになった。

「どうしたんですか、お嬢様?

 いつもは状況報告だけで、相談なんかされないのに」


「それが、今日は媚薬を王子に飲ませることに失敗しただけでなく、媚薬を含んだお菓子を王子の飼い犬が食べてしまったの」

 最初から犬の飲む水に仕込んだと言ったら怒られそうだったので、ちょっとウソを混ぜた。


「飼い犬を手なずけるのも成功と言っていいでしょうから、今日は成功したということですね?」


「違うのよ。

 媚薬を摂取したら、犬が苦しみ始めて狼男になってしまったのよ」


「そんな効能は、あの媚薬には無いはずですが」


「多分、狼男になったことと媚薬は無関係だと思うの。

 媚薬が効いて私に好意を持ったから、正体を見せたのだと思うわ」


「なるほど、それだと理解できますね。

 ただ、狼男だという正体をばらしても、好意は成就しない気がしますが」


「そこなのよ。その狼男は、私と子を設けたいとか言っていたのよ」


「それは、穏やかではありませんね。

 王子の飼い犬なら、王子とお嬢様が婚約なさっていることも分かっているでしょうに」

 ソフィーは、首を傾げた。


「それがね。

 その狼男は、王子の情報を探りつつ、時が来たら暗殺するというミッションを帯びたスパイだったのよ」


「スパイですか」


「それで、そのスパイはあっという間に逃げてしまったのよ」


「お城の中からですか?」


「そうなのよ。

 あの警備をかいくぐってよ。

 すごく危険でしょ」


「そうですね」


「だから、あなたに聞きたかったのよ。

 あの媚薬は、私に対して好意を抱くのよね?」


「その通りですが」


「媚薬を飲んだ時に目に入った異性とかじゃないのよね」


「はい。お嬢様の言うことを聞くように、お嬢様のフェロモンにだけ反応するようになっています」


「私のフェロモン?

 まあ、いいわ。

 とにかく、ということは、私を求めてしまうということなのね?」


「そうですね」


 これは、よく考えると危険だ。

 私の振りまくフェロモンって、どれくらい遠くまで届くんだろう?

 とにかく、聞いてみる。

「私が近くにいるということも分かってしまうのよね?」


「そうなりますね」


「それは一体、どれくらいの距離なの?」


「ざっと、数百メートルといったところでしょうか」


「そ、そんなに?

 つまり、お屋敷どころか敷地内に侵入されたら、私がどこにいるか分かるということよね」


「ハッ、お嬢様が危険ですね?

 敵国のスパイかもしれないわけですし」

 ソフィーもやっと危険に気付いた様子だ。


「やっと分かってくれたかしら。

 あの媚薬のせいで、私は怖くて仕方ないのよ。

 お城の警備をかいくぐって逃げおおせてしまうような腕利きのスパイが、私を狙っているかもしれないのよ。

 お屋敷の警備が心配だわ」


「分かりました。

 警備を強化しておきます」


「お願いするわよ。

 腕利きのスパイがお屋敷に侵入できないようにしてね」


「こころえました」


「ところで、私のフェロモンに反応するっていうことは、私自身があの媚薬を飲んだらどうなるのかしら?」


「それは、自分のフェロモンは身近に大量にあるわけですからね。

 自分の魅力に悶絶することになりますね」


「なんだか、苦しくなりそうね」


「それはもう、死ぬほどの苦しみですよ」


「ええっ? 死んじゃうの?」


「死には、しません。

 周りには死んだように見えるほどですが。

 2,3日仮死状態になった後、おそらくスッキリと目覚めることができるでしょう」


「どうして、そんなに具体的なの?」


「それは、以前私用の媚薬を作って、試したことがあるからです」


「そんな実験をするために、そんな危険な媚薬を作ったんですか?」


「違いますよー。

 私だって恋愛の一つや二つは、いたしますよー」

 ソフィーの笑顔を初めて見た気がする。

 しかし、恋愛したとして、媚薬を作って成就しようなんて、やはり常人の考えではない。


「それで、その恋愛は上手くいったんですか?」


「いやー、私が好きになるのは奥手の男性が多くて……

 間違いなく私に惚れたはずなのに、『自分は、不器用っすから……』とか言って手を出してこないんです」


「つまり、あなたの媚薬は完璧ではないってことね」


「そんなことありません。

 間違いなく私に惚れていたんですから、完璧です。

 ただ、相手が奥手すぎただけです」

 媚薬には相手に言うことを聞かせる効果もある。

 命令することで告白されたりするわけだが、そうしなかったところを見ると、ソフィーも乙女なのだろう。


「それはそうと、媚薬を仕込んだお菓子を私が食べる危険もあったわけでしょ?

 そこは、どうなのよ?」


「それは、気を付けてくださいとしか言えませんね」


「何よそれー」

 ずっと怖いと思っていたけど、ちょっとソフィーとの距離が縮まった気がした。




 その夜、ベッドで寝ていると寝室の窓がソーッと開いた。

「だ、だれかいるの?」

 私はできる限り平静を装って、声を上げた。


「私です。フレディです」

 やはり、侵入してきたか。

「お屋敷の警備は強化してもらったはずです。

 どうやって、ここまで忍び込んだのですか?」


「私は、腕利きのスパイですよ。

 お城の警備に比べたら穴だらけの警備など、簡単にすり抜けてきますよ。

 さて、今宵は私と子を設けてもらいましょうか?」


 カトリーヌというか、私の貞操、ピーンチ!


次回更新は、金曜日の予定です。

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