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23.これぞ悪役令嬢

 ブライアン王子が、驚いた様子で私に突っかかってくる。

「カトリーヌ、何を血迷ったことを言っているんだ?

 君は俺と結婚する運命にあるんだぞ」


 いやいや、そんな運命にはないから。

 私とあなたは、絶対に結婚できない。

 なぜなら、私がそういうストーリーにしたから。

 テヘッ


 大体、裏切り者を炙り出すパーティーを開いたり、婚約者に薬を盛って眠らせてけしからんことをしようとしたり、それを邪魔する者を裏切り者認定するとか、幻滅しちゃうことこの上なしって感じなんだよね。


 そう思うと、だんだん怒りが込み上げてきた。

 元はと言えば私の作ったキャラクターのはずなんだけど、私はサイボーグイケメンを作ったはずだ。

 私の作ったキャラは、こんなイケメンを鼻にかけて我を通す奴じゃない。


 見かけは、最強のイケメン。

 全てにおいて爽やかで、エッチなことなど考えもしない。

 でも、女性が求める時にはちゃんと応える。

 いつも冷静で、時々熱い思いをのぞかせる魅力満点の男のはずだった。


 何でそんな風に育った?

 そして、カトリーヌ目線だと親の仇? いや、自分の仇なのだ。

 ブライアン王子にその自覚は無いと思うけど。



「ブライアン王子。

 ここは、今は、公式の場ですわよね?」


「あ、ああ。

 二国間の外交交渉の席だからな。

 間違いなく公式の場だ」


 私は、力を込めて言い渡す。

「それでは、宣言いたします。

 私カトリーヌ・ド・ノエビアは、ブライアン王子との婚約をこの場で破棄いたします」


 言ってやった、言ってやった。

 世の中の悪役令嬢モノは、ほぼ全て悪役令嬢が王子から婚約を破棄される。

 でも、私は自分から婚約を破棄してやった。

 すごいぞ、私。


 しかし、王子は言い返してくる。

「ちょっと待て、カトリーヌ。

 俺たちの婚約は、王家と公爵家の間の公式なものだ。

 当事者たちの都合で破棄できるものでは無いぞ」

 えっ、アンタはストーリーの中で自分の都合で破棄したジャン。

 ストーリーを作ったのは私だけど。


「いいえ。私はもう公爵家の人間ではありません。

 家同士の関係に縛られる者では無くなっているのです」

 私は、胸を張って答えた。


 ブライアン王子もひるまない。

「お前はさっき、この場が公式の場だと言ったよな?」


「ええ。言いましたわ」


「俺たちの婚約も公式のモノ、今のこの場所も公式の場。

 つまり、何をするにしても公的に認められるだけの理由が必要だってことだ」


 なんだ、急に理屈っぽくなったな。

「もう公爵家の人間じゃないから、好きな人と結婚したい。

 あなたのことは好きじゃないから、婚約は破棄します」

 どうだ?


「相手が好きじゃないから婚約を破棄だって?

 そんな理由が許されるわけないだろ」


「じゃあ、どういう理由だったらいいんですか?」


「そうだな。

 例えば、他に結婚相手が出来たとかならば仕方ないだろうな」


 おいおい、婚約しているのに他に結婚相手ができることで婚約破棄ができるって、そんなのあり?

 でも、そんな考えだからストーリーの中では、エリザベスと結婚するために私との婚約を破棄できたんだ。


「それならば、大丈夫です。

 私にも新しい結婚相手の候補がいますから」


「な、何だと?

 どうしてそんな相手がいるんだ?

 逃亡していた間に誰かとそんな関係になったのか?」


「ご紹介します。

 モッフー王子です。

 まだ返事はいただいていませんが、私は彼と結婚したいと考えています」


 ごめんなさい、モッフー王子。

 後で謝るし、ブライアン王子を誤魔化せたら、私と婚約までなさらなくて結構ですから。


 私は、モッフー王子の方を向いて、ウインクした。

 モッフー王子も察してくれたようだ。


「ブライアン王子、お聞きの通りです。

 カトリーヌ様と私は、結婚の予定でお話を進めている最中です」


 ええーっ?

 そこまで話を合わせてくださるの?

 いいの? 本当に良いの?



 ブライアン王子は、うなっている。

「ウウーム

 このような公式の場で宣言なさるということは、本当のことなのか」


 モッフー王子が一礼する。

「私とカトリーヌ様は、この辺境伯邸で初めてお会いしてから、何ヶ月も親交を深めてまいりました。

 あなたとの婚約を解消することも決定事項としてお聞きしておりましたので、私たちの婚約も後日発表する予定でした。

 しかし、あなたが婚約破棄の理由を求められたので、今日発表させていただく運びになってしまいました。

 何分準備不足での発表ですので不備はございますが、この件に関しましてはお引きください」


 ブライアン王子は、悔しそうだ。

「くっそー

 このような場で、女性の方から婚約解消されるなんて……

 国辱ものの失態だ」


「申し訳ございません」

 私は、とりあえず謝った。


 ブライアン王子は、あたりを見回すと、私の後ろに控えているメイドの中にエリザベスを発見した。

「おい、エリザベス。

 お前は、カトリーヌの少し前に王国から逃亡したエリザベスだよな」


 エリザベスは、黙って首を縦に振った。

 それを見て、ブライアンはニヤリと笑う。

「カトリーヌ。お前が婚約破棄する前に、俺が婚約破棄をするぞ。

 王国の威信がかかっているんだからな」


 まあ、別に順番などどうでも良い。

 でも、何か悔しい。

 だから、逆らってみる。

「さぞかし立派な理由が、あるんでしょうね?」


 ブライアン王子は、スルスルとエリザベスの前に移動した。

「もちろんだ。

 おい、エリザベス。

 名誉回復のチャンスだぞ。

 俺は、カトリーヌとの婚約を解消して、お前と婚約する」


 ま、まさか、こんなパターンで本来のストーリーに揺り戻されるっていうの?

 飛んだ茶番だわ。

 信じられない!

次週水曜日、最終回の予定です。

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