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第1話 王女の決意

エリザは6歳、北方に位置するフロストバルドの王女である。

フロストバルド王宮は晴れており、最高の気分だ。


「今度は、アッシュ様がオニの番でございます。

エリザ様はお隠れになってください。」


次はアッシュの鬼の番だ。

はやく隠れなければ!!


今日は弟のアッシュと

侍女の二コラとかくれんぼをして遊んでいる。


かわいい弟が、こっちに気が付かず、

あっちに行ったりしている。


なんてかわいい弟なんだろう。

みているだけで幸せになる。


しばらくすると

侍女のニコラが悲鳴を上げて走ってきた。


なんだろう。兄さまにいたづらでもされているのだろうか。

まったく兄さまは、限度を知らないから。

とエリザが考えていた。


しかしながら、エリザが次に見た光景は、

ニコラが後ろから来た男達に、

惨殺されるシーンである。


切り付けられた二コラは

けいれんを起こしている。


エリザの体は動かない。


そしてもう一人の男は、

アッシュを手にかける。


「これがターゲット依頼は一人だったな。」

「いや、ガキは二人いて、大きいほうだぞ。」


エリザの体は動かない。


エリザは声も出ない。


音に気が付いたのか

別の男がこっちにくる。


「いや、こっちに来ないで」


とエリザは心の声でつぶやく。


そして突然男は剣を突き出した。

エリザの左肩に剣は刺さった。


エリザの左肩に痛みが走る。


_____________________

エリザは夢から目をさます。


今日も同じ夢を見た。

昔の夢、何も変わらない夢


何もできなかった自分

皆を見殺しにした自分

反撃もできなかった無力な自分


この夢を何回これから見るのだろうか。


この夢を見るたびに、

神官長になったあとでも、

自分の無力感に、自分が殺されそうになる。


そのたびにこの傷の痛みを思い出しながら

歯を食いしばって努力してきたのだ。


さぁ、今日も自分の身支度をし始めなければ。

_________________________


エリザ・ノースフォードは、フロストヴァリアの王女であり、

王国の最高神官の一人だ。

現在はエリドールの難民の保護のために王国最南端都市、ティアモに滞在している。


現在フロストバルドは、

南方に位置するエリドール公国から発生している大量の難民を支援していた。


財産を失ったもの、

家族を失ったもの、

そして、もともと何も持っていないもの、


懸命に働いているもの、

争いをしているもの、

無気力に生きているだけのもいる。


もともと無気力なものが、

生き延びてきたとしても、

何もないままなのである。


おしむらくは元の地域ではそれなりに仕事もあったであろうが、

異国の地で、持つものも失い、習慣も違えば、

仕事を得ることは難しい。

難民の皆がなにか高い生産性があるわけではないのである。


それに、この急激な増加に見合う分の仕事や食料や場所も

さっぱり足りていないのが現状である。


難民間のいざこざを起こさず、

現地民との衝突の緩衝材として機能し、

弱きものを守るのが、神官長のエリザの任務であると、

自分で決めてやってきているのだ。


意欲のあるもの、

技術を持つもの、

争うだけの元気があるものには、

仕事を、


無気力なもの、

何もできない老人や子供でも、

できることは手伝ってもらう。


生きているだけで、

人生を取り戻してもらうのがエリザの目標だ。


でも、明日は愛する弟のアッシュ王子が学園都市から戻ってくる日だ。

このエリザお姉さんに会いに来るのだ!

近隣にいた『愛する』イングリスも呼び寄せた。


どうやら弟には学園都市でかわいいお友達もできたらしい。

まぁ、かわいい弟には少しくらい虫がつくのも仕方のないこと。

ただ、その虫はどうやらとても強くて、きれいな蝶のようだけれども。


エリザは兄がどう言おうが、アッシュとリリアのことは、応援しようと考えていた。たとえ自分にはできないことも、次の世代の人間ならば、クリアできるかもしれないのだ。


エリザはしばらくぶりの再開を楽しみにしていた。

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