本編#95 突如の襲来
庁舎が設置されている軍事基地に到着したが、基地の兵士達は皆険しい顔をしている。
「何があったんだ」
異様な光景に困惑しながらも仮庁舎へ進む。
「ここに居ましたか」
廊下を歩いていると、ウラジーミルの声が背後から聞こえた。
振り向き、彼が近寄ってくる。
「向かわせた衛兵から大体の事は聞かされたと思いますが……とにかく、執務室へ来てください。とても重要な話があるので」
彼に腕を引っ張られるがまま、執務室へ行った。
簡素な執務室に設けられたソファに座ると、対面のウラジーミルが口をゆっくりと開けた。
「ペーターさん、農村は覚えていますか?」
「ああ、もちろんだ」
忘れる訳がない。何しろ、村長から金銭を贈呈したもらったのだから。
「実はあの農村とその一帯に敵が攻めてきて、防衛していた兵士は壊滅、そして占領されたのです」
ウラジーミルは悔しそうに説明する。
「それであの地域を解放するために、部隊を結成したのですが、貴方も参加してくれないでしょうか? いや、貴方の力が必要だ!」
彼は勢いよく立ち上がると、必死な形相で頼み込んできた。
そんなウラジーミルを見て、私は微かな笑みを浮かべる。
当然、彼の願いに対する答えは決まっている。
「そんな事言われなくても、分かってるよ。さあ、とっとと準備を済ませるぞ」
彼のゴツゴツとした手を握る。
「貴方には、本当に頭が上がらない……」
ウラジーミルもまた、握り返してくる。
彼の掌には、覚悟の魂が籠っていた。