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本編#9 廃村調査

 やっと道から出る。

 着いた先は予想通り村だったが……


 「これはどういう事だ?」


 広がる村の景色に私は唖然とした。

 村は無人の、いわゆる廃村というやつだ。しかし、そんな事は別に変ではない。気にかかるのは、村が人為的に破壊されているという点だ。家屋には砲弾が撃ち込まれた跡があり、どの家も人が住める建物ではなくなっていた。地面にも何か所も大穴が発生しており、そんな事が出来るのは榴弾砲やロケット砲ぐらいしかないだろう。ともかく、この村が自然に廃れたという話は無理があるだろう。


 「やっぱり、ここで戦争でも起こっているのでは……」


 怪訝な顔で考察するミハエル。

 彼が言っている仮説は8割は合っているだろう。

 村の荒廃した雰囲気に戸惑いつつも、私はミハエルに調査を再開する声を掛けた。


 「まずは、家屋に入って何か無いか調べるぞ」

 「それもそうですね。今は考える事よりも調査が大事ですもんね」

 「では、あそこの家に入ろうか」


 そう言って指さすのは自分達の斜め左にある損傷が激しい家屋だ。何とか家の形を保っているが、いつ崩れてもおかしくなさそうだ。

 地面に空いたクレーターを横目で見ながら家屋まで歩く。

 到着すると、崩壊寸前の家屋を見上げた。と言っても、屋根は砲弾で粉砕されていて、その手前には屋根の瓦礫が散乱しているが。


 「入るぞ」


 半分以上が消え去った木製の扉を開ける。

 今にも取れそうなドアノブを回すと、扉が開閉する部分を支えている金具が壁からすっぽりと抜けた。その弾みで、壊れかけの扉が前に倒れてしまい、完全に扉としての機能を失ってしまった。


 「本当に大丈夫なのか……」


 倒れて見た目通り木っ端微塵になった扉の姿を見ながら不安そうに呟いた。

 扉が壊れてしまった事を受け、私とミハエルは慎重に、ゆっくりと、足をそっと家の中に踏み入れた。


 「一応、入れたが……」

 「怖いですね……」


 激しい動きを取らないようにしているが、少し片足を浮かせただけで、木材が使われている床からはギシギシという不安を煽る音が鳴っていた。まるで、私達を怖がらせようとからかっているみたいだ。

 すっかり廃墟と化した家屋の中には、そこそこ無事なタンスと脚が折れて斜めになっている机があった。他にも家具は置かれていたのだろうが、そのほとんどは木片となっており、原型が分からなかった。


 「ボロボロだが、意外と綺麗だな」


 この家には誰も住んでいないので、中身は不純だろうと思っていたが、ここに元居た住人がきちんと掃除を心掛けていたためか、埃はそれほど気にならなかった。

 ゆっくりと家屋をうろついていると、斜めに傾いている机に面に一枚の紙が張り付いていた。


 「これはなんだろう」


 中腰になると、紙を取った。

 紙を眼前に持って来ると、私はその内容を読み始めた。

 文字はやはりキリル文字みたいな変なヤツで、何が記されているのかは全く分からなかったが、得た情報もあった。

 1つは、紙に記載されている写真だ。その写真には航空機や戦車など、軍人にとってはお馴染みの兵器が写っているのだが、写真の兵器はどれも複葉機や菱型戦車ばかりで、今の時代では不必要な代物だった。

 そして、2つ目は年代だ。現在の西暦は1945年で世界大戦が終結に向かっている頃だが、この紙……新聞紙のような紙の題名欄には「1916」という数字が書かれていた。その数字が何を意味をしているのかは不明だが、写真から推測して西暦と考えるのが適切だろう。

 だが、それが事実だとすると、私達は第二次世界大戦から先の大戦へ逆行した事になる。一応、タイムスリップという不思議な現象は知っているつもりだが、そんなのはただの都市伝説だろう。そのようなおかしな事が起こる訳ない。


 「一体、どういう事なんだ……」


 タイムスリップなんて信じるものかと言い聞かせているが、頭のどこかではその都市伝説じみた現象を受け入れようとしていた。

 だけど、今思えばおかしな事だらけだ。まず第一に、私も仲間もライヒスタークで戦死した。だというのに、怪我の一つも負っておらず、何事もなく、至って普通に動き回れているのだ。それに、ヨハネスだけが居ないというのも不可思議だ。もしも全員が助かっているなら、ヨハネスもティーガーに居たはずだ。


 「車長、あれを……」


 一人で悶々と悩み考えていると、ミハエルが何かを見つけたらしく、声を掛けて来た。

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