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ホラー小説集

越冬中に捕らえられた蓑虫

作者: 大浜 英彰

挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。

 すっかり寒くなった冬の日の放課後。

 下校途中に通り掛かった児童公園で見かけたのは、木の枝にぶら下がって越冬している蓑虫だったの。

 挿絵(By みてみん)

「見てよ、メグリちゃん。蓑虫なんて珍しいね。」

「本当ね、枚方君。最近は少しずつ回復しているみたいだけど、『一時は蝿の食害で絶滅寸前だった』って理科の授業で言ってたわね。」

 同じクラスの枚方修久君に応じながら、私は手袋をした手でそっと蓑虫を捕まえたの。

 同級生の女の子達には虫を素手で触らない子も少なくないけど、私は男の子達と一緒に遊ぶ機会も多いから大した嫌悪感もなく触れるんだ。

「枚方君、図工の時間で使わなかったお菓子の空き箱を持っていたわね?一つ貸してくれないかしら?」

 ランドセルから取り出した折り紙をビリビリと破りながら、私はクラスメイトの男子生徒に催促したの。

「チョコチップクッキーの空箱ならあるけど…でもさ、メグリちゃん。こんな物を一体、何に使うつもりなの?」

「蓑虫の着せ替えよ、枚方君。蓑虫の蓑を剥いで千切った色紙と一緒に入れておくと、色紙でカラフルな蓑を作るらしいのよ。」

 こう枚方君に得意気に語ったのは良いんだけど、私も実際に試みるのは今日が初めてなんだ。

 学習雑誌の記事には「蓑の端っこを切って爪楊枝で優しく押したら、中のミノガが這い出してきます」って書いていたけど、果たして上手く出来るかな。


 工作用の小さいハサミと、先端の程良く丸まった赤鉛筆。

 越冬中のミノガを引き摺り出す道具は、ランドセルの中身で充分に間に合ったの。

 こうして準備が整ったなら、後は実行あるのみね。

「よく見ててよ、枚方君。今から私、ハサミで蓑を切ってミノガを引き摺り出してみるわ。」

「わ…分かったよ、メグリちゃん。」

 枚方君が固唾を呑んて見守る中、私は蓑の先端を軽くハサミで切り落としたの。

 ピクッと何かの動く手応えがしたから、私は赤鉛筆の先端で軽く突っついたんだ。

「あっ!飛び出すよ、メグリちゃん!」

「これがミノガよ、枚方君。って、ええ…?」

 モゾモゾと蓑から這い出した物を見て、私は絶句したの。

 何故なら、それはミノガの幼虫ではなくて人間の小指なのだから。

 大きさも形も、幼児の小指に瓜二つ。

 ご丁寧に、先端には白い爪までついているじゃない。

「こ、これは…」

「うっ…」

 蓑から現れた小指は、私たち二人の事なんか歯牙にもかけなかった。

 やがて関節をグッと曲げ、シャクトリムシみたいな動きで這い進み始めたの。

 そうしてそのまま、公園の茂みの奥へ消えてしまったんだ…

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― 新着の感想 ―
蓑虫でお財布を作ってましたね小学生の先生が。 現実逃避・・・。 悍ましい。
[良い点] いや、これは何とも怖いです。 なんで小指が出てくるの……なんて問いはヤボのような気がします。 この指。 男のもの、女のもの、どちらだったんでしょうね。
[良い点] ミノムシ……最近見ないんですよね(*´ω`*) ヨコバイも見ない……(*´ω`*) 子供の頃はいつも目にしてたのに……(*´ω`*) ……(*´ω`*) すみません関係なかったです…
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