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光の中を抜けるとそこは森だった。
「森?」
「なんでこんなとこに?」
周りの受験者と同じように辺りを見渡しているユキの横に自分よりだいぶ小柄な一人の受験者が並んだ。
何気なくその顔を見てユキは目を丸くした。
可愛らしい大きな目の上には上を向く長い睫毛。
小さな鼻と小さな口。
そして膨らみがある柔らかそうな頬。
肩まである桃色の淡い色の髪が風になびいて綺麗に揺れた。
(女の子!?)
自分以外の女性の受験者がいるのかと驚いたが、細い首には男性特有の喉仏が控えめに主張していた。
その視線に気づいた少年がユキを見て、可愛らしい口を開いた。
「あ? 何見てんだよ」
そのあまりの可愛らしくない言葉遣いに面食らったユキは、「い、いえ」と小さく答えるしかなかった。
「フンッ」
鼻を鳴らしてその少年は少し前に移動していく。
その右手には小柄な彼にふさわしくない長い箒があった。
そして、ここに来て初めて女だという目で見られることが無かったことに、動揺したユキは気が付くことが無かった。
最後に光の中から現れたカーランが説明を始める。
「この道をひたすら行くと崖の上に学校がある」
カーランの声で受験生は視線を斜め左に向けると確かに学校のような建物が崖の上にあった。
「そこに三時間以内にたどり着くのが今回の試験内容となる。どうやって行ってもらっても構わない」
距離はそんなに遠くないように思うが、三時間も猶予があることに違和感を覚える。
「では、はじめ」
しかし開始を告げる言葉で考える間もなく全員行動を始めた。




