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筆記試験から四日後の朝。
ユキはルディにいた。
玄関ホールに集まったのは地獄と化した筆記試験を合格した者たちで、四百人近くいた受験生は、百人ほどに減っていた。その人数の少なさに周りの受験生たちは動揺を隠せず、落ち着きなく口を開いていた。
しかし複数人の足音が近づいてくるのが聞こえ、受験生たちは口を閉ざした。
現れたのは黒曜の騎士事務局長を務めるカーランと二名の騎士。
口を開いたのはカーランだった。
「これから二次試験の会場へ案内する。全員ついて来るように」
カーランが背後にいた騎士の一人に目配せをする。
その騎士は了承の意をこめ、頷き、口を開いた。
「〈此の地、彼の地を結ぶ大いなる道を開き給え〉」
騎士の前に光り輝く魔方陣が現れる。
その細やかな紋に魔法を嗜む受験生から感嘆の声が響く。
魔法が発動すると成人男性の高さがある光の渦が作られた。その眩い光で行先は見ることが出来ないが、その先が二次試験の会場であることは間違いなかった。
「さぁ、ここを通りなさい」
カーランが促すと、受験生たちは前から順に揃って中へ入って行く。
順番を待っていると後ろから受験生の声が聞こえた。
「あれが転移魔法の使い手、リド・エズゲーフか」
その声色には尊敬、畏怖の二つが均等に交わっていた。
「……改めて思い知らされるよな」
「ここは化け物の巣窟だよ」
ユキはリドを見る。
静かな青年に見えた。
でも彼はきっと数々の死線を潜り抜けてきた一人なのだろう。
そしてその隣にいるカーランもまたその一人だ。
ここにいる人間がどういう人間なのか、それを考えて、ユキは気を引き締めた。




