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「こんなの魔法でさっさとやればいいじゃないですか……」
黒曜の騎士の本部ルディの事務室にて、五人の男が仕事に追われていた。
期限は三日間。
その間に先程行われた筆記試験の採点を終えなければならない。
その恐ろしく地味な作業に選抜されたのは救聖隊の護衛を今現在していない者たち。
救聖隊の護衛は基本ローテーションで組まれている。
例外として決まった一人が日中問わずずっと守り続けていることもあるが、希少である。
そのローテーションに組み込まれていない人材がこのように事務作業にあたるのが基本的だった。
カーランは事務局長という肩書もある為、もっぱら事務仕事ばかりで、このように面倒な作業も嫌でも引き受けなければならない。
「仕方ないだろう。記述問題に至っては正解と間違いが曖昧で、我々人が精査しなくてはならんのだから」
他四名の騎士たちよりも遥かに高く積まれた答案用紙に挟まれたカーランが答える。
「こんなこと三日もしてたら体が鈍っちゃいますよぉ」
「だる」
既に飽き始めたのが二人もいる。
どうやって喝を入れようかカーランが考えていると、飽き始めた二人の前の騎士が「お」と声を上げた。
「お、お、おっ!?」
「うるさいよ、ロント。なに?」
ロントと呼ばれた騎士はそのまま「おぉ~!?」と声を上げ続ける。
「だからなんだってんだ、ロント」
「満点だ」
「は?」
部屋にいた全員の手が止まる。
「満点がいた」
「いや、さすがにそれは無理だろ」
飽きた騎士がロントの方へ移動し、答案用紙を覗き込む。
「……満点だな」
「名前はホリー・ミーラード」
「秀才すぎるだろ」
カーランは積み上げられた答案用紙を見た。
今年は満点に近い者が多くいた。
「まったくもって楽しみな年だよ」




