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「お帰りなさい!」


 宿屋に戻るとサーリャが元気よく挨拶をしてくれた。

 自宅ではないのにそう言われてしまったユキはどうしようかと困った。

 そしてちょっと小さめの声で答えた。


「えっと……ただいま、です」


 はにかんだ笑みを浮かべ、言い慣れていない感じのその初心な姿にサーリャは「か、可愛いっ」と胸を押さえた。まるで何かの矢に心臓が撃ち抜かれたような姿だった。


「えっ、あの……」

 

 突然の行動に戸惑い、どうしようかと立ち尽くしている間にも、サーリャは一人でぶつぶつ喋っている。


「見た目はとても大人っぽいかっこいい系の子が突然年下らしい可愛らしい一面を見せてくるギャップとかもう本当にたまんない……可愛い…あぁオサナーン様の隣に並んでほしい。オサナーン様の前ではきっと年下特有の可愛らしい一面を見せてくれそう……いや、聖女の様のお隣でもそれはそれでとても素晴らしい画になりそうだわ!痛っ」


 ゴンッと箒の柄の部分で娘の頭を殴った主人は大きなため息をついた。


「ちょっとした病気みたいなもんさ。気にしないでおくれ」

「お母さん、病気なんて言い方酷いわ!私は可愛い人や美しい人が隣で並んでいるのを想像するのが好きなだけよ。ちなみにこれは、どんな薬を持ってこられても治らないからね」


 胸を張って言う娘に母親は先程よりも大きなため息をつくのだった。


 ユキは久々に思った。


(……杉浦君元気かな)


 オタク特有の早口を思い出して、ユキは在りし日を少しばかり懐かしんだ。

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