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 中に入り、大会議室へ足を踏み入れる。

 百三十五と書かれた席に案内され、そこへ腰掛けると静かだった会場がまるで水の波紋のように、ユキを中心としてざわめき出した。


「あいつ、女だよな?」

「どういう考えしてたら女が黒曜に騎士になろうと思うんだ」

「魔力だってそんなにないだろ」


 あちこちから聞こえてくる声。

 気にしないように正面だけをただ見つめた。


「静粛に」


 一人の声でざわめきはぴたりと止まった。


 受験生の前に一人の騎士が立った。

 そして部屋全体を見渡し、口を開いた。


「これより筆記試験を行う」


 大会議室の前にある入口から数十人の騎士たちが受験生の前に紙を配布し始めた。

 その枚数はざっと五十枚。


 地理、歴史、語学、生物、兵法。

 魔法学を抜いたありとあらゆる分野が試験の範囲だった。


 受験生がその厚みに顔を強張らせていると、試験官が何かを宙に放つ。

 その何かは複数に分裂し小さな丸になり、虫のように羽ばたきながら受験生の上を飛び回る。

 どうやら受験生一人一つあるらしい。


「それは〈覗き見るモノ(ピープライ)〉といって、それを通じて君たちが不正をしていないか見ていく。当然魔力の動きなども捉えることができるので、この試験は自分の脳ミソ一つで頑張るように」


 上から視線を感じる。


「制限時間は二時間。それでは、開始」


 その声で会議室には紙を捲る音が響いた。


 ざっと問題に目を通す。


(大丈夫だ。先生と勉強したことばかりだ)


 ただ枚数が多いので一つの問題にあまり時間をかけているわけにはいかない。

 この量を二時間で解くというのはなかなか過酷なことをさせる。


 しばらく経った頃。


『五十七番、失格』


 その声が会場に響いた。

 全員が答案用紙から顔を上げる。


『振り向かないように。失格にしますよ』


 その声は自分の上を飛び回っている〈覗き見るモノ〉から発せられていた。


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