表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/40

26

 宿屋に入ると先程の母子が迎えてくれた。


「お客さん、見苦しいところを見せてすまなかったね」


 母親が頭を下げると隣でサーリャも同じように頭を下げた。


「いえ、お二人に怪我が無くてよかったです」


 そう言うと二人は安堵の表情を浮かべた。


「お部屋はこちらです」


 案内されたのは二階の一番奥の一室。

 白いシーツのベッドと決して広いと言えないテーブルと椅子が一脚。

 小さなランプ。

 それだけの質素な部屋だった。


「夕飯の時間になりましたら、またお呼びしますね」


 そう言ってサーリャは部屋の扉を閉めて出て行った。

 荷物を置いて、窓を開ける。


 ふわりとユキの髪がなびく。

 窓の外を見下ろすと男の子と女の子が楽しそうに走り回っている。


 宿屋の主人とその娘であるサーリャは先程あんな目に遭ったのに、何事もなかったかのように仕事を再開した。こういうことは日常茶飯事なのだろうか。


 この街は綺麗だと思った。

 行き交う人は楽しそうに笑っている人が多かった。


 それでも、それが全てではない。

 目に見えるものだけが全てではないのだ。


 汚い部分も、苦しいことも、この街には沢山あるのだろう。


「君たち、そろそろ暗くなるから帰りなさい」

 警備兵の声に子どもたちは「はーい」と返事をし、来た道を戻って行った。


 日が沈む。

 これからこの街は闇に包まれる。

 それでも多くの街灯が人々を明るく照らすだろう。

 それに安心している街の人々は娯楽を求め、歩く。


 街灯と街灯のその僅かな闇の中で襲われることも知らずに。


 それがこの街。

 ヴィクトワール王国の要、アズカルスなのだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ