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 男の額に青筋が浮く。


「っざけんじゃねぇ、女のくせに! くそったれがぁぁっ!」


 男がユキに飛びかかろうとしたその瞬間。

 背後から二名の男たちに飛びかかられ、潰れた。


 彼らは、警備兵だった。


「大人しく、してろっ」

 再度顔面に拳をいれられ、男は完全に意識を失った。

「おら、行くぞ!」

 意識がないのに呼びかけ、殴った方の警備兵が男の首根っこ掴んで、ずるずると引きずって行った。

 

「お怪我はありませんか?」

 残された片方がユキに声をかえる。

「私は大丈夫です」


 そう答えると、「よかったです」と柔らかい笑みを浮かべ、宿屋の親子の方へ駆けて行った。

 その際、ユキの方へ向かってきたオサナーンへ敬礼していた。


「見事な足さばきだった」


 ユキの前に立ったオサナーンはユキよりもわずかに背が低い。けれども一般的な女性よりは幾分か高い方である。

 捲り上げた袖からは白い腕が見える。細く見えるが先程の一撃を見る限り、力強いに違いない。


 そしてほかの女性と違って足首まで丈のあるワンピースを着ていないのが不思議だった。

 思わず目線を下げていると、オサナーンは「珍しいかな?」と首を傾げた。


「あ、いえ、その、不躾なことをして申し訳ありません」


 ユキが謝ると優しく微笑んだ。


「いや、構わないよ。動きにくいのが苦手でね。いつも動きやすい恰好を選んでしまうんだ」


 その言葉には同意しかない。

 ユキも訓練の際はワンピースから動きやすい恰好に着替えて動き回っていた。

 案の定98%の女性がワンピースを着ている世界なので、外部の人が来るときは絶対にやめるように村人たちから言われていた。


「まぁ、きっと普通の女性ならば、動きにくいと思うほど動いたりはしないのだろうけどね」


 女性の中には髪の毛を見られるのも嫌がる人もいる。

 彼女たちは布で髪を覆い、見られないようにお淑やかに歩く。

 走り回ることなどない。


「さて、それでは私はこれで」


 恭しくオサナーンが一礼する。


「頑張ってね」


 その一言を残して去って行った。


「え?」


 その言葉の意味を知るのはまだ先のこと。

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