おまけ2
先生のもとを訪れるといつものようにミルクが差し出された。
「あの先生」
「どうした?」
ふぅと息をかけてミルクを冷ます先生。
彼は猫舌だった。
「私、黒曜の騎士になろうと思います」
ちょうどカップを傾け、ミルクを口に入れようとした瞬間に発せられた言葉。
「ぶっ!熱っ」
動揺したことによりカップは大きく傾けられ、想像以上の量が口に流れ込んだ。
持っているハンカチで口の周りを拭き、涙目になりながら先生は「黒曜の騎士に?」と弱弱しい声で聞いた。
「はい」
真っ直ぐ見上げてくる生徒に何度も確認するのは無粋なことだと思った先生は、「何故」と問う。
ユキは先日あった出来事の一連を述べた。
「そういうことか。君も突然凄いことを言ってくるな」
落ち着いた先生はユキの隣に腰をかける。
「ふむ、筆記試験に魔法学が無いのが救いだな。それ以外ならここで十分学べるだろう」
出題傾向を考えていると視線を感じる。
ユキは不思議そうな表情を浮かべていた。
「なんだね?」
「いや、あの…先生は無理だと仰らないのですか?」
村の人間に黒曜の騎士になりたいと言ったとき、まず最初に無理だと言われた。
だから先生にもそう言われると思っていたユキは驚いた。
先生はそれこそ何を言っているんだという不思議そうな顔をした。
「魔法の試験があれば無理だろう。それ以外はやってみなければ分からないことだろう」
「…そう、ですね」
ユキは口角を上げて言った。
「やってみなきゃ分かんないですもんね」




