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氷雪のフルーレ  作者: たなぼた まち
はじまり
14/40

14

 父親のウォルトは娘の目を見て、重い口を開いた。


「リリィが救聖隊として選ばれた」


「え?」


 ユキは姉が魔法を使っている姿を見たことが無かった。

 でも、魔力があることは知っていた。

 

 魔力は感じることが出来る。


 魔力が多ければ多いほど相手の魔力量を感じることができる。

 逆に魔力が少ないユキでも感じ取れるということは、それだけリリィが魔力を秘めている証となる。

 それでも〈光魔法〉が使えるということは見たこともなければ、聞いたこともなく、知りもしないことだった。


「お父様は、知っていたのですか?」

 

 娘の問いに父は左右に首を振る。


「私は知っていましたよ」


 アリアの言葉が部屋に響く。

 その声にウォルトは目を見開いた。


「どうして…」

「私はあなたよりも、そして村の皆より少し多く魔力を持っているから、見えるのです」

「なにを?」



「あの子を纏う光が」



 ふと思い出したことがある。

 あれはまだユキがリリィに抱きしめられていたとき。

 彼女は暖かくて優しくて、時折光みたいなものがキラキラと輝いていた。


「あの子が生まれてきたとき、あまりにも光り輝いていたから神様がくれた宝物だから、そう見えるのねって思っていました」


 アリアはそのときのことを思い出して、親馬鹿でしょう、と小さく笑った。


「でもその光は消えることがなく、あの子が立ったときも、言葉を発するようになっても、そして今も、昼夜を問わず輝いている」


 その言葉を聞いたウォルトは来客の言葉を思い出した。


『あの光は、聖なる光。あそこまで輝く者を私は知りません』


 リリィが特別な存在であることは明らかだった。


「どうして、今まで黙っていたんだ」


 その言葉にアリアの瞳が揺らいだ。

 初めてだった。


 母親が泣く姿を見たのは。


「それを国に知られてしまっては、あの子は、連れていかれる!」


 手で顔を覆って泣きじゃくる母を父は彼女の肩を抱き寄せた。


 ユキはその横で、その言葉の意味を受け入れられずにいた。


(連れて、いかれる……?)


 あの眩しいお日様をどこへ連れて行こうとするのか。





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