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父親のウォルトは娘の目を見て、重い口を開いた。
「リリィが救聖隊として選ばれた」
「え?」
ユキは姉が魔法を使っている姿を見たことが無かった。
でも、魔力があることは知っていた。
魔力は感じることが出来る。
魔力が多ければ多いほど相手の魔力量を感じることができる。
逆に魔力が少ないユキでも感じ取れるということは、それだけリリィが魔力を秘めている証となる。
それでも〈光魔法〉が使えるということは見たこともなければ、聞いたこともなく、知りもしないことだった。
「お父様は、知っていたのですか?」
娘の問いに父は左右に首を振る。
「私は知っていましたよ」
アリアの言葉が部屋に響く。
その声にウォルトは目を見開いた。
「どうして…」
「私はあなたよりも、そして村の皆より少し多く魔力を持っているから、見えるのです」
「なにを?」
「あの子を纏う光が」
ふと思い出したことがある。
あれはまだユキがリリィに抱きしめられていたとき。
彼女は暖かくて優しくて、時折光みたいなものがキラキラと輝いていた。
「あの子が生まれてきたとき、あまりにも光り輝いていたから神様がくれた宝物だから、そう見えるのねって思っていました」
アリアはそのときのことを思い出して、親馬鹿でしょう、と小さく笑った。
「でもその光は消えることがなく、あの子が立ったときも、言葉を発するようになっても、そして今も、昼夜を問わず輝いている」
その言葉を聞いたウォルトは来客の言葉を思い出した。
『あの光は、聖なる光。あそこまで輝く者を私は知りません』
リリィが特別な存在であることは明らかだった。
「どうして、今まで黙っていたんだ」
その言葉にアリアの瞳が揺らいだ。
初めてだった。
母親が泣く姿を見たのは。
「それを国に知られてしまっては、あの子は、連れていかれる!」
手で顔を覆って泣きじゃくる母を父は彼女の肩を抱き寄せた。
ユキはその横で、その言葉の意味を受け入れられずにいた。
(連れて、いかれる……?)
あの眩しいお日様をどこへ連れて行こうとするのか。




