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氷雪のフルーレ  作者: たなぼた まち
はじまり
11/40

11

「君は十歳だったか」

「はい」


 ユキが異世界に転生して十年の月日が流れた。

 この十年でだいぶ大きくなった。

 姉のリリィは四つ歳上だが背丈がほぼ変わらない。きっとユキはまだ大きくなるだろうと父親であるウォルトは言った。


「私のところに通い始めて三年か。どうしてここへ来ようと思ったのだ?」


 三年前に先生の家の扉を叩いたユキはまだ小さかった。

 勉強ができるところはないのか、と両親に聞いたら二人とも驚いていたが、この先生のことを教えてくれた。そしてユキは思い立ったが吉日といわんばかりに、その昼にこの学び舎に通い始めた。


「知っていることが多いに超したことはないかなと思いまして」


 ユキは家族を思った。


「役に立つ、立たないは今分かることじゃなくて、死ぬそのときまで分からないと思います。知らなかったせいで家族が危険にさらされたり、守れるものを失ったりしたくはないです。だからできること全部やっておきたいんです」


 この勉強も何かの役に立つかもしれない。

 剣の練習も、体力作りも、すべて将来何かの役に立つ。

 ユキはそう思いながらこの十年生きてきた。


「君が本当に十歳なのかたまに疑いたくなるよ」


 ははは、とユキは乾いた笑いを返す。


「そうなると私だけでは申し訳ないな」


 先生が珍しく困ったように眉を下げた。


「私は歴史や地理、生物、語学などは教えることができるが魔法に関してはからっきしでな。魔力がほぼ無いから魔法学には触れてこなかったのだ。恐らく君にとって、とても大事な学問になると思うのだが」


 魔力は生まれつき持った力である。

 魔力が多ければ多いほど、強力な魔法が使える。

 だがそのような大量な魔力を身に備えて生まれてくる者の方が少なく、ハリー夫人のように日常で少し使うくらいの魔力の持ち主の方が多い。


 ユキは困ったように笑った。


「大丈夫です。私も魔力あまり無いので」


 ユキもまた村の人たちと同じように魔力をあまり持たずして生まれてきた。


 生まれて数年経ち、ユキの魔力量が少ないことを知ったウォルトは頭を抱えて唸った。


『こんなところまで私に似てしまったか…』


「でも魔力が無くてもそれを補えるように頑張りますので、先生よろしくお願い致します」


 年相応の笑った顔を見て、先生も「こちらこそ」と嬉しそうに口角を上げた。



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