ある少年の幸せな日常
ジェイミー視点のSSです。
これはだいたい本編終了から3年経っています
僕の名前はジェイミー。ジェイミー・フィンリー!
先月10歳になったよ!
僕はもう立派なお兄さんだからね。メイドのソフィアや執事のスティーブと計画して、来月のお母様とお父様の結婚記念日に向けて色々準備してるんだ。
僕のお父様はね!強くて優しくてかっこいいんだ。まえ〜に僕が魔獣に襲われそうになった時も、1番に助けに来てくれたんだ。お父様は僕のヒーローなんだよ!
僕が辛い時いつでも助けてくれるもん。
あ、あと僕のお母様もヒーローだよ!
お母様は僕のヒーローだねって言ったら、女の子でもヒーローになれるかしら?って言ってたけど、間違いなくヒーローなんだ!
物知りで、ピアノと歌が上手で、お父様とは違う強さを持っていて……たまに僕がご飯の前にお菓子をつまみ食いしたりするとちょっぴり怖いけど、それでもいつも優しい。
2人とも、僕の大切な家族なんだ。
僕は小さい頃、両親が死んじゃって、これからどうしたらいいのか途方に暮れていたんだ。
その時の僕は今の僕より小さかったし、なんにも知らなかったから。
いつもいたお父さんとお母さんが突然居なくなって、住んでいたおうちに誰もいなくなっちゃって。
毎日泣いてたなって思う。これからどんなに悲しいことが起きても、あの時の悲しみには勝てないよ。
でも、そんな時にお父様が助けに来てくれたの。
最初は少し怖かった。でも!お父様はすぐに優しい顔で笑って
「私の養子にならないかい?……必ず、君を幸せにすると約束するよ」
そう言ってくれたんだ。そしてその約束を、お父様は今まで1回も破ったことがないんだよ!
僕のお父様はすごいひと。
なのに周りの人はお父様を悪く言っていたのが凄く嫌だったんだ。でも、お父様は「それでいいんだよ」っていうし、僕にはどうしようもできなかった。
そんな時この大公城に現れたのがそう!お母様!
お母様は瞬く間にお父様の噂や悪い話を消し去って、かわりに良い話をたっくさん広めたんだ!
お父様は照れていたけど、僕はとっても大満足だったよ!
大公城どころか大公領の雰囲気もすっごく明るくなった。
それにお母様のお陰でお父様が悪く言われるようなことなんてなくなったし、僕は幸せ。
____コンコン
部屋の扉が叩かれた音がしたので、扉の方まで行って扉を開けると、そこには肩で息をしたソフィアが立っていた。
「!?ソフィア!?ど、どうしたの、そんなに息を切らして」
僕がそう聞くと、ソフィアは僕の目を真っ直ぐに見て言う。
「おくさまが……おくさまが……!!」
「え、お母様がどうかしたの!?」
「たいへん………で………」
ソフィアの様子から事の重大さを感じた僕は、ソフィアからお母様の居場所を聞き出し走って向かった。
お母様…?どうしたの…!?何事もありませんように………!!!!
僕は後から後から垂れてくる嫌な汗を振り切るように駆けた。
お母様がいると聞いたサロンに行くと、そこには大公城お抱えの医者の先生と、ソファーに座るお母様と、その後ろでたたずむお父様がいた。
お母様が僕に気が付いて、あっと言うように声を出す。
「ジェイ……」
「お母様!どこか怪我をしたの!?それとも病気!?」
僕が慌てて駆け寄ると、お母様は苦笑した。
「ジェイミー、落ち着いて」
「でも……お母様には元気でいて貰いたいから……」
「ふふ。ジェイミー、貴方はお兄さんになるのよ」
お母様の言い方に僕は首を傾げる。
「僕はもうお兄さんだよ?」
「ふふふ、ちがうの。貴方に妹か弟ができるのよ」
「…!!!!」
お母様の言ったことの意味が分かった僕は、つい目をキラキラと輝かせてしまう。
「妹か弟!?ほんと!?やったーー!!!」
「ああ、ジェイミーはしっかりお兄さんになれるかい?」
お父様が嬉しそうに微笑む。
僕はもちろんだよ!と大きな声で答えた。
お母様はそれを見て幸せそうに笑う。
その次の年の秋、大公領に小さな天使がやってきた。
「お兄様っ!早くいらしてくださいな!」
約束のピクニックを目の前に、僕よりもずっと先を小さい体で走る妹。
「ちょっとまってよアンジェ!」
慌てて走り出す僕。
「お母様もお父様もおそいですわよっ」
「はいはい、ごめんなさいねアンジェ」
「ジェイミー!アンジェ!転ばないように気を付けるんだよ」
後ろから、のんびりと声をかけるお父様とお母様。
お日様の日差しが、今日はいつもより少し優しい気がした。
とりあえずこれにて完結とさせて頂きます〜!
短編から連載版まで、全てチェックしてくれた方々、本当にありがとうございました。