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第11話





私たちの後にすぐ王族の方々が入場し、全員が揃ったところで国王様が皆に挨拶を始めた。


「本日は集まってくれたこと、非常に感謝する。今日はいくつか発表したいことがあってだな……取り敢えず、大公夫妻、こちらに来たまえ」


国王様の呼び出しに、私とリアンは会場中が見渡せて1番目立つ王族の方達が立つところに行く。


「皆も知っているかもしれぬが、余の弟エイドリアンが1ヶ月前に結婚したことをここに正式に発表する!お相手は元ミッドール公爵家令嬢のコーデリア嬢だ」


挨拶されるように促された私は、1歩前に出て淑女の礼をした後に会場にいる貴族たちを見た。


会場がざわめく。

コーデリア本人は気付いて居ないが、コーデリアはこの1ヶ月で本当に美しくなった。前から美しくはあったが、大公城で過ごすうちに幸せを感じ程よい肉付きになったのも大きい。


「先月エイドリアン・フィンリー様と結婚致しましたコーデリア・フィンリーですわ。ミッドール公爵家とは絶縁致しましたのでなんの関係もないただの大公妃ですが、どうぞよしなに」


絶縁、という言葉に会場が少しざわつく。

そして令嬢たちは私の横をチラチラと見ている。

本当にこれがあの悪名高い大公なのかと思っているのだろう。

恨めしそうな目で見てくる公爵家の方達を私は横目で見る。ふふふ、いい気味ね。


「コーデリア嬢、ありがとう。では次、我が弟、エイドリアンだ」


次にリアンが1歩前に出て一礼した。お辞儀まで素敵。


「エイドリアン・フィンリーだ。至らない所もあるがどうぞ宜しく」


簡潔に済ませる所はかっこいい。きっと緊張してるのね、かわいい。

あら、かわいいとかっこいいがごっちゃに…まあ仕方ないわ。全部事実なんだもの。


「王家はこの婚姻を祝福する。皆の者、異論は無いな?」


国王様に異を唱えるものなど居ないだろう。と思っていたが、思った以上に阿呆な奴らがいる事をすっかり忘れていた。


「コーデリア!少し美しくなったからといって調子に乗るんじゃない!」


その声は会場中に響き、先程までのざわめきが一気に静まった。

声の主はレルウィルドだ。


「お前が私より階級が上だと…?そんなの有り得ないではないか!」

「そ、そうよコーデリア!それに絶縁だなんてこんな大勢の前で言うことないじゃないの!」

「そうだぞ、コーデリア嬢。些か常識を学び直した方が良いのではないか?」


レルウィルド、継母、ミエール公爵家当主と順に声を上げる。

頭が悪すぎて頭痛がする。

だがここで毅然とした態度を取らねばと私は私を奮い立たせると、隣にいたリアンが私の背中をさすってくれた。


リアン……ありがとう。悪者にならず私を助けてくれて。


いつまでも喚く2つの公爵家と1人の男爵令嬢に向かって私は叫んだ。


「お黙りなさい!私がフィンリー大公妃という事を忘れていないかしら?それ程までに不敬罪で裁かれたいのね?」


私がそう言うと皆黙った。なんという情けなさ。

すると国王様が話に入り始めてきた。


「発表することがいくつかあると申したな、それを発表しようでは無いか

本日をもってミエール公爵家とミッドール公爵家の爵位を没収する!両家で結託し余への虚偽申告、そして国家予算の横領や機密事項の漏洩、奴隷売買の斡旋、コーデリア・フィンリー嬢の絶縁状や婚姻届等の書類の偽造は非常に悪質であり重罪とみなし国外へ追放とする!」


あの人たち、そんな事までしていたのね……呆れて物も言えないわ。


国王様の言葉を聞いた両公爵家夫妻とレルウィルドの顔のなんと面白いこと。産まれてこの方ずっと誰かにお世話して貰って生きてきたあの人たちが1人で生きていくなんて無理に等しいだろう。実質死刑宣告のようなものだ。


「そして男爵令嬢アミィ、あろうことかそなたは婚姻どころか婚約すらしていない、婚約中の男…レルウィルドとの間に子を授かったな?」


それを聞いて会場がどよめく。

あの噂は本当だったのか__と。


「そなたの行為は恥ずべき行為ではあるが子を授かってしまったことは仕方ない。子に罪は無いからな」


それを聞いたアミィは少しほっとしたような顔になった。馬鹿な娘と私は心で毒づいた。


「よって、シルリル修道院送りとする」


それを聞いたアミィは顔面蒼白になり、その場に倒れ込む。

シルリル修道院というのはとても寒さが厳しく、そして礼儀を重んじ質素倹約を掲げる修道院だ。

離島にある為脱出は不可能で尚且つシスター達がとても厳しいと聞いたことがある。

いい所じゃない。性根を叩き直していらっしゃいな


魂が抜けたような顔をするアホな方々。


すると、俯きながらなにやらぶつぶつと何かを言ったと思ったレルウィルドが、私にむかって拳をあげて走り出してきた。


きゃ…と悲鳴を上げたその時、隣にいたリアンがレルウィルドの腕を掴んでいた。


「貴様…!私の妻に危害を加えようとするとは何事か!!」


リアンは見たことも聞いたことも無いような怒った声でレルウィルドを制していた。そして首根っこを掴んで衛兵の方にレルウィルドを放り投げた。


「衛兵、元公爵家夫妻たちとこの男、それからアミィとか言ったな?元男爵令嬢を連れて行け」


そう命じたリアンは間違いなくこの世で1番かっこよかった。

リアンに見とれていた私を正気に戻すように国王様がゴホンと咳払いをした。


「少々騒がしくなってすまなかったな。余の弟、エイドリアンには常に迷惑を掛けていた。本当は心根の優しい子なのだ。なぁ、コーデリア嬢?」


私はハッとし理解した。今がリアンがどれほど素晴らしい人物なのか語る場なのだと。


「はい。それはもう優しくて誠実で……とても勇敢でいらっしゃいますわ。今まではお兄様……国王様の王位継承に関わらないために人嫌いの悪名高い大公を演じていたまでのこと。この方は素晴らしい方ですわ……」



私はそれから、照れたリアンに止められるまでひたすらリアンの素晴らしい所を言い続けた。

私とリアンの親しげな掛け合いを見て国王様や王族の方達が傍で涙ぐんでおられたので、やはりリアンのことが心配でならなかったのだろうと察しがついた。


その後は美味しいものを食べて、想像以上にダンスがうまかったリアンと2人で踊って、沢山の貴族の方々に祝福の言葉を貰った。あの忌々しい記憶なんて消え去るくらいに、それはそれは楽しいパーティーを過ごした。




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