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家出1日目 家出少年と社会人女性の出会い

初めはただ、めんどくさいだけだと思っていた。

でもなぜか、いつの間にか。

毎朝起きて、学校へ行く。友達との会話、授業の数々。学生として当たり前の毎日だったはずなのに。

俺は何のために生きているんだろう、そう考えるようになっていた。

「将来のために勉強しなさい。」

「仕事は生活の質を向上させます。」

「人は死ぬときに、それまで生きた意味が生まれます。

 これを“人生”と呼ぶのです。」

何を言っているんだ?人は必ず死ぬ。それがいつなのかは誰も知らない。

それなのに人は、いつ来るかわからない終わりの時のために毎日、辛いこと、嫌なこと、苦しいことを「死にたい」とまで思っても乗り越えて「生きて」いる。

そんなのあんまりじゃないか。

「死ぬ」ために「生きる」なんて。それが”人生“だなんて。


だから「それ」から、

「そこ」から、

俺は逃げた。

「次は終点湯上、湯上〜お忘れ物にご注意下さい。列車停止の際は車両が…」


「ん…ここは…?」

大体2時間半くらい電車に揺られていたらしい。自分の家があった市はちょうど県の反対だ。

「ずいぶん遠くまで来たなぁ」

1人でここまで遠出をするのは初めてだ。下調べをしてきたわけではないし、帰りの時間も一切調べていない。帰るつもりは、ない。

いわゆる家出、というやつだ。

今日は10月中頃の火曜日。家には親父と再婚した義理の母と妹がいる。親父は5年前に死んだ。

母は元からあまり家に帰ってくる人じゃなかった。去年から半不登校の学費泥棒が「家出します。」という書き置きを残して消えたことを知ったところで、特に何も感じないだろう。

親戚との関わりもほとんどなかったから、そこを経由して話が広まることもないだろう。

問題は妹だが、そこまで必死に探すほど義理の兄妹に絆は無い、と信じている。

「自由だ…」

自分で言って笑ってしまった。今までは不自由だったんだと。

携帯(解約済み)を取り出し時間を見る。

「さてと、とりま稼ぐか。」


「よし、日銭はとりあえず稼いだな。」

貯めておいた元手38万は今は7万ほど増えていた。

やっぱ換金めんどいな、パチンコは。でも景品があっても今は困るだけだから仕方ない。

「あとはゲーセンでいっか。」

学校に行かない日は基本パチンコ屋かゲーセンに行っていた。

おい未成年!とか聞こえてきそうだけど今は勘弁してほしい。

換金云々も(つまびら)にはできないが、とりあえず成人に見える顔立ちで、身長もあるから見た目は問題ないとだけ言っておく。

とにかく約2年通っていたし、センスもあったらしく赤字になったことがなかったので、死ぬ決心が着くまでは、こうしてだらだらとしていられるだろうと思っている。


…。

……。

「だ、である調」疲れちゃった、やめまーす。

いつもとは違うゲーセン、景品たちを一通り眺めて優良そうな景品を選んで取っていくっていう簡単な作業。

「やっぱ久々だと腕落ちてんな…」

本当なら1.5倍くらいは取れてると思うんだけど。環境が違うから。うん、そーゆーことにしとこう。

流石に家出1日目に目をつけられたくないから景品は20個ほどで撤退。

売りに行こうと思ったその時。


「あのっ、そのフィギア私に売ってくれませんか!」


そこに居たのは…明らかにパジャマでそのまま家を出てきたかのような20代の女性。

顔はすごくいいし、身長も俺の好み的にはバッチリなんだけど。

「なんか…残念な人だな…」

しまった、どタイプな女性だったから余計に残念感が口から溢れてしまった!

「え?もしかして私今、初対面の男の人に哀れみの目を向けられてるの?

 初対面なのに心の声だだ漏れなんだけど?!…あぁ死にたい。今なら6階くらいからだったら

飛び降りれるよ私…」

案外低いじゃねぇか…っとまた心の声が漏れるとこだった。

「えぇと…ごめんなさい。」

「やめて!今謝られると余計ダメージがっ!」

なんだか不思議な人だなぁ。

そう思った。






「で、家出してきて今ここで日銭を稼いでたんですよ。」

「へぇ〜しっかりしてるね…って家出?!」

「いや、今までの話聞いてました?!」

「ううん聞いてたんだけどね、ちょっと急展開すぎて置いてかれちゃったや…」

たはは、と笑うこの人は鳴宮(なるみや) みくりさん。

そしてこの人。指輪なし。パジャマ。携帯を見たのは2回だけでどっちもゲーム通知。

間違いなく、男はいない。断言できる。

「携帯は…?持ってるよね?」

「解約済みです。ただの時計です。」

「用意周到だね…今日はどこで寝るとかは決めてるの?」

よし、一か八か。

「あのそれなんですけど…泊めてもらえません?」

「うんうん、そうだよねぇ〜…ってはならないよね?!」

「お願いします!」

「いやえっと、ほら私こう見えても社会人だしっ」

「でも一人暮らしで、男がいるってわけじゃないですよね?」

「ぐっ、鋭い…でもなんでわかっt「見ればわかります」

「うわぁーんまたひどいこと言われてるよ私…」

「というわけでお願いします!」





こうして宿を手に入れ、無事に家出1日目を終えることができると思っていました。

あの惨状を目の当たりにするまではね。






歳を重ねていくにつれて、いろんなことを考えるようになりました。

「生きる」ことや「死ぬこと」についてもそうです。

これから何度か出てくる主人公の考えは100%僕の考えがそのまま反映されています(笑)

偏った考え方が人と触れ合うことで傾き方に変化が生まれる。

そんな話が書きたいと思って(自虐を込めつつ)机に向かっています。

つまらない話かとは思いますが、それでも付き合っていただけるという方は

家出2日目でお会いしましょう。

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