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みおぎ   作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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出自⑥

「糸口はそう当てずっぽうでもなかったようじゃ。のぉ?倫鉄。」

良顕は得意そうなまなじりを向けた。


「まさに、」

倫鉄は頷いた。


もとより、良顕の示す探索の方針について、異存があったわけではない。

仲介とかいう遊女の斡旋人を探索の切っ掛けにしようなど、それこそ倫鉄のどこを叩いても出てこない発想だ。


「して、」

良顕は、ハチロウに視線を合わせ、続きを促す。


「はっ!」

一度頭を下げたハチロウは、素早く姿勢を正した。

「皆さまお察しの通り、与兵衛は、すぐさま養い子の斡旋に動きました。

その日のうちに一家を連れて山を下り、屋敷に連れ帰って身綺麗にさせ、例の素封家そほうか早飛脚はやびきゃくを出したそうにございます。

そこで私は、養い子の噂を聞きてからやや日が経っておったはずだにと気になりまして訊ねました。『よもや、一足遅れの用無しとのうれいなしや。』と。そうしますと与兵衛、『たといそうなろうとも、一度会うてさえ貰えれば、こっちが勝つと踏んだ。』と何やら自信ありげで、なぜにと問うまでもなく、母親が山奥に置いておくには惜しいほどの上玉じょうだまであり、姉も兄も小綺麗なわらしであったからと申しました。

与兵衛に絆された母親は、割にあっさり赤子を手放すに同意。われたが五つになる姉でなく、まだ赤子の妹と知っていささか驚いておったようですが、無事に育つ見通しを天秤にかけ、早い話しが赤子の方を見限った。

与兵衛言うに、人買いの土壇場でこれは日常茶飯事、お前もその端くれなら分からいや。と、

そして時を開かず、返ってきたふみには、

『一刻も早く来られたし。ついては、一家揃って参上されたい』と、支度金まで添えられていたそうにございます。」

喋り続け、ハチロウの声が枯れてきた。シゲキチに白湯を勧められ、話が中座する。


「して、その素封家の所在は?」

待ちきれない良顕が尋ねた。


多度津たどつとのことですが…」


「まだそこへは?」


「はっ。

この探索、とくに大事である事重々承知しておりまするが、物事があまりにトントン拍子にいきましたゆえ、むしろ今一度、僧正さまのご指示を仰ぐべきと存じまして、」


「なるほどの。」

良顕が少し伸びた顎ひげを撫でながら言うと、良晉も頷いた。


「まさに、賢明な判断ですね。

今のところ確かは、その赤子と禿が同年配と見られるとのことのみ。今も昔ももらいは世に数限りなくおります。これはその内一つのたといに過ぎませぬゆえ。」

キツい言い方にも聞こえるが、

確かにその通りなのだ。

良晉の言葉はいつも周りの過ぎた熱中を冷ます。


「儂もそう思う。

公明さまの話を聞き、ついつい儂も出島の火事の究明などにきょうが乗ってしもうたが、好奇心が寝た子を起こしては本末転倒であるからの。」

寝た子とは、リンを手放した親、村の大人、上役、もしかすると、例の放生ほうじょうとかいう祈祷師をも含んでいるのだが、

もし、ハチロウシゲキチが独断にも肱川の川上の村まで踏み込んでいたら、もしそれを聞き付けた放生にその狙いまでも気取られてしまったら、とまで思い至ってしまい、倫鉄はぶるりと身体を震わせた。


「とすればもう...」

ハチロウが良顕を上目遣いに見上げている。


その意味するところを理解して良顕は小刻みに首を振った。

「いんやいや。探索は続けてもらうぞ。」


「そうは仰いますが僧正。

今は、リンさんの身の安全が一大事でございますよ。禿の探索行ったは確か。公明さまにおかれましてもこれにて薬種問屋への義理は果たされたいうものではありませんか?」

と、良晉が諭す。


僧正は口を尖らせた。

「リンさんは大事だ。守らなければならん。だがしかし、くだん禿かむろも大事じゃ。知りたいんじゃよ!儂は、」

早口にそう言うと、ぷいと顔を良晉と反対の方に向ける。これ以上放っておくと、子供のように足をバタバタと踏み鳴らすのも時間の問題である。

また始まった。良晉と倫鉄はため息を吐き、その板挟みになったハチロウとシゲキチは、キョロキョロと視線を彷徨わせるしかなかった。



























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