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みおぎ   作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
33/35

出自④

「リンさんは?」


公明の餡子作りを自らが命じたであろうに、いざリンの姿が見えないとなると、良顕は残念そうに言った。

その場に座した全員が顔を見合わせて笑う。


良顕は、一つ咳払いをした。

「では、ハチロウ。探索の次第を頼もう。」

最早、その声は好好爺こうこうやのそれではない。


「はっ。」

ハチロウが張り詰めた空気を切るように応え、全員を見渡した。

「私は僧正様の命を受け、シゲキチと共に、まず、話にあった禿かむろを世話した仲介ちゅうかいを探すことから始めました。

同業人を装い、宇和島うわじま長浜ながはま大洲おおずと、肱川ひじかわの川なりを聞きこんできました。」


倫鉄は、びんは長めで、少し側頭を膨らませ、まげを心持ち横にずらせた見た事のない髪型の二人を見やった。

そう言えば着物も大ぶりの柄で、これは羽振の良い、浮いた生業の人物に扮していたからなのだと納得がいった。


「して見つかったか?」


「はっ。

その一帯を仕切っている与之助よのすげというのを見つけました。与之助はよわいからして、当時は子供のはずだと思われましたので、父親について聞きますと、隠居しておりましたが息災でした。名は与兵衛よへいと言います。私は同じ生業を松山より東向こうで始めたんだが、良い出物がないとボヤいて見せました。同業で名高い与兵衛さんの爪の垢を煎じて飲ませて貰おうとやって来たと言いますと、面白がって話に乗ってきました。

与兵衛は主に娘らをこの四国の湯治場やら遊郭に送っていたそうで、与之助もそのやり方を継いでいるとのこと。

『では、瀬戸内のあっち側には送らねぇのかい?』と聞くと、

『それは、逆立ちしてもないわな。』と言うのです。」


「「「ない?」」」

良顕、良晉、倫鉄の三人が同時に声を上げた。


「娘を集めるのに縄張りがあるなら、卸すのにも縄張りがあると言うのがそいつの言い分で、つまり、与兵衛の畑は大洲、長浜から南、市場は四国の内と、」


まるで大根でも扱うような言葉が出るたび、倫鉄の眉間に皺が寄っていく。

まあまあ、

と、良顕が手をヒラヒラとさせると、ハッとして顔の強張りを解いた。


「別のおきて破りが居ったのでしょうか、それとも人攫いでしょうか、」

良晉が呟く。

同じ事を思ったか良顕も頷いている。


「あるいは。

ですが、私には一つ思い出した事がありまして、」

ハチロウは、隣に目顔を送った。

それを受けシゲキチは、

「おいに親はいません。親に売られましたから、」

淡々と言い放った。

「売られた先は、松山よりずーっと東の旅籠はたご。やけん言うてみたんです。もし、親に男ん子を買うてくれ言われたらどうするん?て、」

シゲキチの身の上話は予め聞き及んでいたのだろう。良顕と良晉が頷いていた。


女子おなごより買値は安いが、むしろ力仕事の担い手として引く手は数多だと与兵衛は言いました。じゃあ、同じように女子には子守りや炊事の働き手としての引き手があるんじゃないのか?

そのこたえは、稀にはあるが、この頃はとんとないと、とどのつまり子守りや炊事の働き手ではどうしても買い値が安いから親も泣く泣く御仮場所おかばしょ行きを選ぶしかないのだと、」





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