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プロローグ
にぎやかな喧噪を切り裂くように一人の女性が街を歩く。
彼女の周りにはだれもよりつかない。彼女と彼女の影だけがその空間を支配している。
カランコロンとギルドのドアを開くベルの音が鳴る。
開いたドアの前に立っているのは、ローブを身に纏い骸骨の仮面をつけている口元だけが見える黒髪の女性。
その人はコツコツと足音を立てながら私に近づくとその暗い瞳を仮面から覗かせてたどたどしく喋る。
「…今日は依頼、ありますか?」
見た目に反して幼い少女のような声を放つ彼女に頷きかけると彼女はその目を輝かせてからすぐに伏せる。
「今回の依頼は近くの村に現れた賊の討伐ですね。すでに人を殺しているらしいのでためらわずに襲ってくると思います。気を付けてください」
私が依頼書を出すと彼女はペンを握って『アンジェ』とまた幼い子供のような字で名前を綴った。
彼女の首に下げられた銅色のタグが鈍く光る。
「私も、頑張らないと…」
アンジェさんは小さな声で呟くと両手でこぶしを握り締めた。




