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昼間のことについて考えました

 水に毒が仕込まれていたことに対する二人の驚き様が尋常ではなかったのでヒカルは理由を尋ねた。

 二人の話によると

・問題の水は『水神の里』から取り寄せた特別なもの

・国王の信任を受けた者だけが取扱を許され、厳重に管理されている

・つまり裏切り者が居るか管理に穴があるかのどちらかということになる

 

 国王以外で口にしてる人間が居るかどうかに関しては『居ないと思う』との返答。

 口にできるのは王族や来賓のみだが、酒類が苦手な国王以外は皆エールやワインを飲むために実質国王専用飲料水となっているらしい。


 その話を聞いたヒカルは少し考えた後

「貯蔵してある水を見せてもらえますか?

 監視付きで構いません。いえ、むしろ信頼できる人物の立ち会いがある方が好都合です」

「ならばワシ自らが立ち会おう。

 今回の一件で信用していた者への信頼が揺らいでしまったし、城に居なかったリリアでは今の見張りの者達が顔を知らぬからな」



 一行は問題の水が保管されている地下保管庫に来ていた。

 ここには『水神の里の水』を含めた貴重な高級食材などが保管されており、国王の信任を受けた者や許可を得た者以外の侵入を禁止している。

 念のために、ヒカルは他の食材や酒樽に手を近付けてみるが反応はない。

 そして最奥にある『水神の里の水』の保管場所にたどり着いた。

 左右の棚に封印の施された小さな(かめ)が幾つも並んでいる。

「ここのある瓶は全て未開封の物ですよね」

「確かにそうじゃが?」

 ヒカルが瓶の一つに手を伸ばすと手と瓶が光りだし、その発光は周囲の瓶にも伝播していく。

「この封印は一度開けたら元には戻せませんから、毒の混入は封印以前に行われたということになりますね。

 しかも、これだけ多数の瓶が反応したとなると瓶に仕込んであったとは考えにくい」

「これは里の方を調査する必要がありそうじゃの」

「その調査にわたしを加えて頂けますでしょうか?

 今回の件は、わたしの使命に関わる事件だと思うのです」

「こちらから参加を願うつもりじゃったが、それならば好都合ですな

 ヒカル殿、お頼み申しますぞ」

「はい」

「じゃが、今からでは今日はもう遅い。部屋を用意させるので泊まっていくといい」

「ありがとうございます」


            ◇ ◇ ◇ ◇


 ヒカルは充てがわれた部屋でベッドに横たわり、自分の手を見つめながら今日あった事を思い出していた。

(投石で人が・・・それもあんなに酷い状態で死ぬとは思わなかった)

(今日、わたしは人を殺したんだ・・・)

(だけど、その事になんの感情も湧いてこない)

(あの時も、状態の酷さには驚いたけど死んだことに対する感情の動きはなく、冷静に一人二人と続けて仕留めた・・・)

(物語で悪役が無残に死ぬシーンに嫌悪はないし、むしろスカッとする)

(でも、現実で自分が当事者で殺して何とも思わないのはやっぱり異常だよね・・・)

「これも改造の影響かな・・・頭の中弄られたんだし・・・」

 自分が元からそんな人間だったとは思いたくもなかった。

「でも、こういう精神構造じゃないとこの世界じゃやっていけないか・・・」

 おそらくこの先も自らの手を汚すことになるだろう・・・

 ここはそういう世界なのだ。悪人が司法の裁きを受けること無くその場で殺されるのは日常茶飯事であり、殺さなければ自分が殺される。

 そんな世界だから少なくとも『敵を殺す』という事に躊躇いを覚える余裕はない。躊躇えば殺される、自分だけでなく守るべき人々も殺される。しかも女の身である自分は辱めを受けた上で殺される。

「これも一応神様の気遣いなのかな・・・」

 そう呟くとヒカルは目を閉じ、間近に迫っていた睡魔に意識を委ねた。


            ◇ ◇ ◇ ◇


 翌日、ヒカル達を含めた10人の調査隊が結成された。

「あの、なんでリリア様がここに?」

「私も同行させていただきます。

 私は王女であると同時に巫女でもあります。水神の里はその名の通り水の神の守護を受けた土地、神の庇護下の地に異常があったとあれば巫女として出向かないわけにはいきません。

それに、城に残るよりはヒカル様と共に居たほうが安全だろうという父上の判断でもありますわ」

 そんな話をしていると隊員の一人がヒカルの前に立ち敬礼をする。

「伝説の聖女様と共に任務を遂行できる事を大変光栄に思います!」

「リリア様?」

「わ、私じゃないですよ!」

「申し訳ありませんヒカル様」

 昨日隊長と呼ばれていた護衛の男が慌ててヒカルに駆け寄る。

「昨日、襲撃の件の調査のために襲撃を受けた場所に戻って調査をしていたのですが、ヒカル様のことを怪しむ隊員達に対してモブリオが『ヒカル様が如何に強くて素晴らしい方か』を力説してその流れで聖女の件も・・・」

 モブリオというのは、もう一人の護衛の男の名前である。

「同行してた時は我慢して抑えていたようですが、アルフォンスの件でヒカル様にかなり心酔したようでして・・・」

「で、その当事者はどこに?」

「罰として居残りで書類作業です。今回の調査への参加も熱望していただけにかなり堪えてるはずです」

 そう話していると堅牢な造りの馬車が近づいてくる。

「姫様!馬車の準備が出来ました!」

「では、ヒカル様、姫様、馬車にお乗り下さい。今度のはそう簡単には壊れませんので昨日のようなことがあってもちゃんと目的地までお届けします」

 隊長に促され二人は馬車に乗り込む。


「総員整列! これより水神の里調査任務に向かう。

 昨日の件もある、各自警戒を怠るな!」

 一行は先導に4騎、ヒカルとリリアを乗せた馬車、殿に3騎という編成で水神の里へ向けて王都を出発した。

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