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猫を助けたら改造されました

 長い黒髪をはためかせ、青空ヒカルは走る。

 路上に一匹の猫、それに気付かず迫るスマホ脇見のDQNカー。

 気付けば考えるよりも先に体が動いていた。

 そして間一髪、猫を抱き上げてDQNカーの前を駆け抜ける。


 キィィィィィィィィ! ドッカーン!


 ブレーキ音と激突音に驚き顔を向けると、そこには彼女の予想とは違った光景が広がっていた。

 潰れてもうもうと煙を上げるDQNカー、その上に佇む闇を凝固させたような黒い体躯に赤い目を光らせる異形。

 バケモノと目があった瞬間、彼女は意識を失い崩れ落ちた。


            ◇ ◇ ◇ ◇


「え、なにこれ!」

 ヒカルは自分の置かれている状況に戸惑った。

 目を覚ますと手術台のような物に全裸大の字で拘束という異様な状況。

 自体を把握しようと意識を失う前の状況を思い出す

(たしか学校の帰りにDQNカーに轢かれそうな猫を助けたら、ものすごい音がして・・・

 音の方を見たら潰れたDQNカーの上にバケモノが居て、それで目があって・・・

 え、まさか、バケモノに攫われたの!)

 絶望的な帰結にたどり着いた彼女は背後の影に気付いていなかった。


 がしっ!

 

「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 突然頭を鷲掴みにされ、驚きと恐怖で変な悲鳴をあげる。

「や、やだこわ・・・いやぁぁぁぁぁ!」

 頭を鷲掴みにした手がズブズブと頭の中に入り込んでいく。

「◆∝†∬∵□?■≫√∽‡¶Å‰♯⊆ ◯▽※〒←〓 ≡≒≪ ♭∋∀ ∠∂∇」

 手の主が何かを言っているが未知の言語で全くわからないし、それ以上に頭の中、つまり脳を直接弄られるという恐怖でそれどころではない。

「あ、頭、の、脳、いじられてる! あ、あ、なんか入って・・・ああっ、んひぃ!」

 脳を弄られて何かを入れられる恐怖と共に未知の感覚が全身を駆け巡り、声が出てしまう。

「あ、あ、んん、んぁ、あぁん、んん、んああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 経験したことのない快楽の前に声を抑えることも忘れ、指が抜ける感覚とともに絶頂に至る。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・、お、終わったの?」

 だが返答はなく、前方に半透明で顔も性別もわからない影としか言いようのないものが現れる。

 新たに現れた影は彼女の下腹に手を伸ばす。

「え、ちょ、ちょっと、こんどは何・・・あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 指が下腹に沈み込み体内を探るように動く。

 影は手を引き抜くと光り輝く小さな宝石のようなものを取り出し、それを下腹部へと近づける。

「はぁ・・・はぁ・・・ぁぁ・・・」

 嫌な予感と恐怖に震えながらも、先程の衝撃の余韻で舌が回らず言葉が出ない。

「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 それは予想通り下腹部に沈み込み、体の中に埋め込まれる。

 その後も新たな影が次から次へと現れては彼女の全身を外と中から弄び、光り輝く玉を埋め込んでいき、その間彼女はただ叫び声を上げ、汗や涙を流し続けることしかできなかった。


 影が現れなくなる頃には満身創痍となり、荒い呼吸に胸が揺れていた。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・・こ、今度こそ終わった?」

 彼女の呼吸が整うのを待っていたかのように後光をまとった女性の影が姿を現す。

「今ならばあなたの使命、わかりますね」

 一瞬、何のことだか分からず困惑するが、脳裏に自然と知らないはずの情報が浮かび上がってくる。

 元いた世界が異世界から来た魔王に蹂躙されて滅んだこと、猫を助けたことで『小さな命の為に危険を顧みずに行動できる勇気と優しさを持つ者』として眼の前の神様に認められて選ばれたこと、魔王の誕生を阻止して二つの世界を救う為に過去の異世界に行かなければならないということ、そして今まで行われていたのはそのための強化改造手術だということ、その他にも異世界の言語や情報など、全てが最初に脳を弄られた際に情報として送り込まれていた。

「うん、わかったけど、とりあえずこれ外して。シャワー浴びたい」

「まだですよ、最後の仕上げの前にあなたの要望を聞く必要がありますので」

「要望?」

「ええ、神の視点ではなく人間の視点で必要と思う能力を考えてほしいの」

「人間の視点で・・・」

「何でもありとはいかないから、よく考えて」

 ヒカルは目を閉じ、異世界の情報を脳裏に浮かべながら嗜好を巡らせる。


            ◇ ◇ ◇ ◇


「これでお願いします」

「アーティファクトで対応できる分は除けば十分可能な範囲ね。それじゃあ、追加分と最後の仕上げに入るよ」

 小さな光の玉がヒカルの体に入りまた刺激が全身を駆け巡るが、落ち着きを取り戻した彼女は声を抑えて耐えた。

「これが最後ね」

 赤青緑の3つの光が舞い降り、ヒカルの体に沈んでいく。

「んっ! んん、あぁ、うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 これまでにない強烈な刺激が全身を駆け、抜け耐えきれずに悲鳴をあげて全身を痙攣させる。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 眼の前が真っ白になり意識が飛びそうになったその時、光の爆発が周囲を覆い尽くし光の収束と共に全身を駆け巡る刺激が沈静化した。

「・・・こ、こんどこそ・・・終わりだよね・・・」

「ええ、これで終了です。お疲れ様」

 大量の汗で周囲には匂いが立ち込め、拘束も外れていたが、疲労しきったヒカルにはそれを気にする余裕もなく、そのまま意識を暗転させた。

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