泉の暮らしとステータス
「はっ!? 夢か」
なんか変な夢だったな。
ブラックサンタっていうよりボンテージの女に鞭で追われて、逃げ込んだリングでトナカイとボクシングを……
というか相手のセコンド佐倉じゃなかったか?
そう、確かサンタ帽被っただけのなんちゃってサンタ佐倉が夜中に忍び込んできて、馬乗りで無理やり起こすからイラついて、めっちゃ布が少なかったから
「痴女かよ」
って言ったら、ガチギレしたから逃げ出したんだよな。
危なかった。前面の布がもっと少なかったり、すぐに降りなかったらノクターン行きだった……
もっとも、エロじゃなくてグロだった可能性もかなり高いが。
それからトナカイと引き分けたり、佐倉に介抱されたり、渡されたプレゼントから拳が飛び出してまた気絶したことを思いながら身支度を整える。
本当に変な夢だった――
◇
「はじめまして人間さん。私はこの泉の精霊です」
あれからなんだかんだあって、この人を紹介された。人っていうか精霊だけど。
会話にならなくて大変だったからな……精霊ってこととここが精霊の島ってこと、それから――
「あなたは何者ですか?」
彼女の話をまとめるとこうだ。
ここは精霊の流刑地であり、外界とは隔絶している。
といっても結界もなく出入りは自由、ただし実質不可能らしい。
周囲の海は凶悪な魔物が棲息しているが空は比較的安全、だがここまで飛んでくるのは無理。なにせ航空機の類はなく、長距離飛行できるものは魔物でも少ない。結果、航路は1つしかない。
危険な海にあって魔物の近づかない特殊な海域。そのなかで波も穏やかで魔物が絶対に迷い込まないルート。しかし、その航路にも問題がある。
この島に近い大陸は今では死の大陸と呼ばれ、草木も生えない荒れた大地が広がっているだけの生物が住めない土地であり、少数のアンデットのみが存在している。
ここに来るのは精霊だけ、好奇心旺盛な風の精霊くらいらしい。
「なるほど……異世界から」
あっさりするほど信じてくれたな。というか、気付いたらここにいたことぐらいしか言ってないはずなんだが?
「変わった気配がしますし、常識がありませんから」
ニコニコして言われた。笑顔が素敵ですね。
「ありがとうございます。それに無い事じゃないですからね、迷い人も」
そうですか……それとなくバカにされてる気がするのは気のせいですかね。
「気のせいですよ」
さっきから俺喋ってないんだが? それにしてもいるのか、他にも異世界人。召喚とかもあるのかな?
「心は読めませんよ? 他に聞きたいことは」
「今はないです。ありがとうございます」
心"は"か、思考はともかく顔色は読まれてるな。疑問に思ってたのはばれたけど内容はわからなかったみたいだし。どこまで筒抜けなのか……
「それではステータスを見せてもらえませんか?」
は?ステータス?
「ふふっ。この世界にはステータスがあるんですよ? スキルを教えてくれるだけでもいいです」
「どうすればステータスはわかるんですか?」
「ステータスオープンと言えば見れますよ。見せようと思えば他人に見せることもできます」
「そうですか。では、ステータスオープン」
おお、たしかに表示された。これ見えてないのかな?
「どうかしましたか?」
めっちゃニコニコしてる。どうなんだこれ? 見えてて笑ってるんじゃないよな?
って、なんだこれ。わからなすぎてどうしようもない。
「もしかして見えませんか? おかしいですね……」
「大丈夫です。見えてますから」
「それならよかったです。何かあれば言ってくださいね」
これは本当かな?
(チラッ)
(ニコニコ)
……もういいや、警戒するだけ無駄だわ。そもそもこの人に頼らないと生きていけそうにないし、いい人だしな。
「ちょっとこれ見てもらえますか?」
‐《ステータス》‐
名前:シンラ ミナモト
種族:人間
筋力:60
体力:100
知力:90
耐久:40
器用:80
敏捷:75
魔力:450
スキル
固有スキル「魔導書庫」
精霊の書 ????? ?????
異界辞書 魔物図鑑 道具手帳 魔法事典 ??? ??? ??? ??? ??? ???
仮想巻物 地図帳 旅行日記 住所録 ??? ??? ??? ??? ??? ???
「これは……すごいですね」
そうなんですか。
「精霊の書を見せてもらえますか?」
そこから現れたのは、犬と猫だった。