幕間 アイツのいないクリスマス
私は一人、夜の街を歩いていた。
本当なら今頃はアイツとお祝いしているはずだったのに、あのバカはクラス会をサボって――
絶対殴ると心に固く誓った。
◇
佐倉詩織は普通の女子高生だった。普通に成長して、普通に遊んで、普通に恋をした。
幼馴染の源本森羅は変なやつで、独特の雰囲気をして、なぜか気になった。
初めは嫌いだった。少し怖くて、それ以上にむかついた。
次に友達になった。すぐに仲良くなって、ずっと一緒にいた。
最後に恋をした。いつの間にか惹きつけられて、気付いたら好きになっていた。
だから――
何度も言う様に佐倉詩織は普通の女子高生だ。だから……
目の前で起こることが理解できなかった。
◇
明るくライトアップされた通りをふらふらと歩く。周囲に一人でいるのは他にいないようで、自分だけが浮いているような気になってくる。
夜道を歩いているというのに賑やかなイルミネーションが照らしだし、喧騒が暗くなる心に影を落とす。
だから気付かなかった――――
◇
世界各地で同時多発的に起こった災害と、巻き起こる事件の数々は『惨劇の聖夜』『流血のクリスマス』などと呼ばれ、世間を震撼させた。
その裏で進行している事態に気付く者はいない。その時何が起こっているかを知るのは遠くない未来――
その日、一人の男が消えたことをまだ誰も知らない。