始まりの手紙は机の中に
――こっくりさん、こっくりさん……
闇の中で声が響く。とても静かで、おとなしげな少女の声だ。
――おいでになられたら、お答えください
少女の声にこたえるかのように、ずずずっ、と重々しい音がする。その音を楽しむかのように、少女は口角を上げ、微笑んだ。
「さぁ、どうやって……」
――壊してあげようかしら
日本の首都、東都にある月華学園。共学であるという点を除き、この学校の特徴をあげるとすれば、屋上に社のようなものがあるということだろうか。
しかし、社の前に鳥居は無く、また、何が祀られているのかもわかっていない。そのため、この学校に通う迷信深い生徒や教師は、自分の信仰している宗教の神や普段お参りしている神社の祭神を勝手に崇めている。
そのような奇妙な学園が通るグラウンドに人だかりができていた。その中心には白目をむいている女子生徒がいた。そしてその傍らにはこの学校に勤める擁護教師が応急処置を行っていた。その周囲に、部活を途中でさぼって見学に来ている生徒や帰宅途中の生徒が野次馬根性で取り囲み、人ごみができていた。
そのなかに、土御門明晴はいた。
あまり騒々しいことが好きではないが、それなりに野次馬根性は持っているので、ついついこの群衆が何を目的としているのか、知りたくなってしまったのだ。
だが、単に倒れた生徒を心配してができていただけと知り、そろそろ帰ろうかと思い、立ち去ろうとした瞬間、背筋に寒気を覚え、反射的に振り返った。
しかし、どこにも気配の元を見つけることができなかった。明晴は社のある屋上の方をしばらく見ていたが、特に何も見つけられなかったため、その場を立ち去った。
明晴が向けた視線の先にあった屋上。その社の傍らに一つの影があった。そよそよと流れる風に、長髪が揺れる。その髪を整えながら、影の主は冷たい微笑を浮かべた。
――気づいたんだ……面白い子がいるのね、さぁ……
どうやって壊して、遊ぼうかしら
翌日、明晴は教室に行くと自分の机の中に、「昨日の件で話がしたい、屋上で待っている」、という内容の手紙が入っていた。明晴は話をしたい、と言われてほいほい誘われるような人間ではない。しかし、手紙の最後に、「新聞部」、と書かれていることが気になった。
この学園で新聞部といえば、生徒会でも対立することをためらう、と言われるほどこの学園内で力を持っている。うわさ程度ではあるが、新聞部はこの学園の理事長のプライベートな部分を部誌で発表したことがあるという。それほど広い情報網を持っている組織が相手になっているのだから、もし断ってへそでも曲げられたら、今後の学校生活を送る上で不利となる情報を故意に、そしてかなり捻じ曲げて流すことくらいはするだろう。
そう予測した明晴は、屋上で話をせざるをえなかった。
はじめまして、風間護です。
大学で文芸部に所属していました。
より多くの方から、私の作品についての批評をいただきたく、このコミュニティニ参加した次第です。
この作品は、文芸部でも発表していない作品にクトゥルフ神話の要素を私なりに加えて書いています。一応、六話で完結させようと考えていますが、もう少し長くなるかもしれません。
まだまだ稚拙な文章なので、もし直す要素がありましたら、ガンガンご意見いただけると幸いです。
では、次回をお楽しみに。