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誰もが知ってる? この童話

 うららかな昼下がり、よく晴れた雲ひとつない高く澄み切った空の下。クヌギやコナラと言った広葉樹が茂った雑木林の並木を歩いていく少女の姿があった。


 年の頃は10代前半ほど。切りそろえられた細い真っ直ぐな金髪。幼さの残る整った顔立ち。愛らしい大きな目は湖の底を思わせるような神秘的なエメラルドグリーンだった。

 子供用の色の明るいワンピースドレスは恐らく母親が丹精込めて一針一針縫って言ったのだろう。花模様の刺繍がいくつか刺してあった。生地の鮮やかさ、目の詰まり方一つとってもこの少女の家の暮らしぶりの豊かさが垣間見える。小奇麗な可愛い少女、というのが多くのものが抱くだろう印象だが不思議と少女の第一印象はその頭をすっぽりと覆い隠してしまう『赤いずきん』だった。


 軽やかな娘らしい足取りで土を踏みしめて歩く手には、バスケットがあり、中にはパン、ワインボトルハムやベーコンと言った日用食品が幾らか入っている。少女は今。森の向こうに住む『祖母』の元へと『お使い』に行くところだった。


 そんな赤い頭巾をかぶった少女を木陰から除く二つの目があった。



「幼女……幼女……ハァハァハァ……」


 それは、狼……いや、二足歩行を可能にしてるどうやって進化したんですかと、突っ込みがきそうな狼だった。木の陰から幼い少女を涎をたらしつつ見つめる狼。その金色の瞳がちょっと引きそうな位ギラギラと鋭い眼光を燃やしている。


「幼女かわいいよぅじょぉぉぉおお! ペロペロしたいぃぃぃっ!」


 多分、食欲的な意味でだろう。

肉が柔らかいからとかそうゆう意味であろう。恐らく……多分……うん……。

そして狼は、獲物との距離、およそ100メートルを目測し、一度息を潜めるとスッと呼吸を止める。


 この狼は実は何日も水しか口にしていない。とある理由から群れを追い出され一匹狼として生きていくしかなかったからだ。普通は『狼』は鹿や猪などを狩り、捕食する。だが、この狼にはもう鹿や猪などの高速で走る動物を狩るだけの体力はなかった。人間、それも少女ならば走ったところで大した動きも出来ない、あまり上等とはいえない人間の肉だがえり好みしているだけの余裕はもう狼にはなかった。だからこそ、ここで何か食べておかなくては死ぬだろうと考えたのだ。

 このとき狼は狩りにおける失敗の一つを犯していたのかもしれない。

 

 それは、相手が野生であれ、家畜であれ、人間であれ。『狩られるものをナメテかかる』ことだった。



「よ、ようじょぉぉぉお!」


 妙な叫び声を発しながら狼が赤い頭巾の少女の首元にかぶりつくべく飛び掛る。




「フッ、それは残像だ」

「な、何っ!?」


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