表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹って、思ってたよりブラック企業でした  作者: 天城ハルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/33

第14話 深層:切らないと、壊れる

深層管理ブロックは、音が違った。


ざわ……という葉擦れじゃない。

もっと低く、重く、骨に響く振動。


「……ここ、根の音じゃないですね」


俺が言うと、リリエラは短く答えた。


「心音よ」


心音。


世界樹の、心臓部。


■ 深層の第一印象


視界に入った瞬間、分かった。


今までの現場とは、質が違う。


根が、太い。

絡まり方が異常だ。

黒ずみは“点”じゃなく、“面”。


【根系深層ブロックD-03】

【腐敗進行率:71%】

【推奨対応:切除】


切除。


はっきり出た。


「……いきなり、これですか」


俺は笑おうとして、失敗した。


「まだ72時間あるって」


「“全体”はね」


リリエラが静かに言う。


「ここは、もう限界」


■ 深層ルール


ログ=フェアが現れる。


「深層管理ブロックへようこそ」


妙に丁寧だ。


「ここでは、通常ブロックと異なる運用が行われます」


嫌な予感しかしない。


「一点目。

 処置失敗=即時全体影響」


即時。


「二点目。

 判断猶予は最大30秒」


短すぎる。


「三点目。

 切除判断は、管理補助者単独で行えます」


単独。


俺は、はっきり聞いた。


「……共有ログは?」


ログ=フェアは一拍置いた。


「努力義務です」


努力義務。


■ 声が、聞こえない


フィルタは、最強設定。


静かだ。

異様なほどに。


俺は、あえて意識を集中させた。


切れない。


「……完全遮断か」


リリエラが言う。


「深層では、基本仕様」


「理由は?」


「聞いたら」


彼女は一瞬、言葉を止めた。


「切れなくなる人が出たから」


出た、過去形。


■ 初判断


警告音。


【進行加速】

【腐敗進行率:71% → 74%】


数字が、跳ねた。


「……来てます」


「ええ」


リリエラは俺を見る。


「30秒」


数えなくても分かる。


俺は、根を見た。


声は、聞こえない。


でも、分かる。


――ここを切れば、全体は助かる。

――ここを残せば、連鎖する。


頭の中で、選択肢が並ぶ。


どれも、誰かを切る。


■ 条件の限界


「……共有します」


俺は、ログ入力を開いた。


指が、止まる。


30秒。


「書いてる時間、ない」


リリエラが言う。


「判断して」


俺は、歯を食いしばった。


「……切りません」


即答だった。


「カナタ!」


「まだ、いける」


根に手を当てる。


痛みが、今までと違う。


深い。

重い。

逃げ場がない。


【腐敗進行率:74% → 76%】


下がらない。


「……っ」


視界が揺れる。


■ 深層の現実


ログ=フェアの声が重なる。


「警告。

 判断遅延」


「警告。

 連鎖進行」


「警告。

 全体影響率上昇」


リリエラが叫ぶ。


「切って!」


俺は、震える手を止めた。


切れば、数字は戻る。

切らなければ、世界が揺れる。


それが、深層。


■ 決断の直前


俺は、初めて理解した。


今までの現場は、

まだ優しかった。


ここは、選択そのものが罠だ。


「……条件、守れないですね」


俺は、苦笑した。


「一人で判断しない、なんて」


リリエラは、俺を見た。


「それでも」


低い声。


「選びなさい」


俺は、息を吸った。


そして――


■ 未決断(引き)


【腐敗進行率:76% → 78%】


数字が、また跳ねる。


世界樹の振動が、はっきり強くなった。


フィルタの向こうで、

何かが壊れ始めているのが、分かった。


俺は、まだ――

切っていない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ