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第00話:プロローグ
「……おい、リコ。また『聴こえる』のか?」
少女――リコの肩で、相棒のカラス、クロが忌々しげに呟いた。
風が、少女のぼろぼろの毛布をはためかせる。
歳は十か、十二か。汚れた服に身を包み、古びた革の魔法の鞄を抱え、
彼女はただ黙々とひび割れた街道を歩き続ける。
「……とても、優しい唄が聴こえる」
リコがじっと見つめる先。
街道から外れた荒野の彼方に、長い年月の果てに風化し、もはや丘の一部と化した古城の残骸がおぼろげに見えた。
ペンダントが、確かな熱を持って、その場所を指し示している。
「……魔王の、城」
その言葉に、クロがぎょっと目を見開く。
憎悪と絶望が渦巻いていたはずの、滅びの場所。なぜ、そこから。
少女はもう歩き出していた。
四十年の時を超えて響く、あまりにも優しい「最期の唄」を、届けるために。




