説得チャレンジ
「さもなくば、今から警察に通報…いえ、すぐ近くにいる警備員に言いますからね。理由は何であれ貴方は最低の犯罪者です。今、そのひよこをボクに渡したら特別に黙ってあげますけど…二度とこんなことし…」
「いや、ぴーちゃんは渡さない!何をしてでも守る…!」
そうは言ったものの、ここからどうする…?逃げても警備員に連絡され、先回りされるだけだ。
難しいとは思うが、やはりヒナタを説得するのが安全な打開策か…?
「抵抗はやめなさい。今すぐ通報しますよ?」
「ちょ、ちょっと待ってください…!ヒナタさん…その、このひよこは、俺が盗んでなかったらどうなってるんすか?」
ヒナタは渋りながらもはっきりと言う。
「まとめてミキサーに掛けられて肥料になるか…冷凍されて動物園に肉食獣用の餌として輸送されますね」
「つまりそれって、死んじゃうってことですよね?ヒナタさんは、辛くないんですか?」
一瞬、ヒナタが目を見開いて、びくっと反応する。だが、彼女はそれを隠しつつ淡々と話し続ける。
「何を今更言ってるのでしょうか。貴方は1日に何匹も、何匹も、ひよこの性別を見分けている。ボクもそうですが、オスのひよこが殺されるのはこの業界では当たり前のことなのです。それに、貴方は今までひよこに対し愛着を見せる素振りはなかった…今まで、ひよこを見殺しにするのに耐えきれずこっそり横領しようとした部下は居ましたが…貴方みたいなタイプがひよこに同情するのは、ボクにはちょっと信じがたい」
「俺は…ぴーちゃんが、一人で一生懸命内側から殻を破ってて…ここまで頑張って生まれてきたのに、殺すなんて酷いこと出来ないんです」
「はぁ…それは他のひよこも同じ。今まで貴方が見ていなかっただけでしょう。貴方がそこまで浅はかな思考回路の持ち主だったなんて…失望しました。」
「…!それを言うなら!自分の感情に嘘を吐いて淡々とひよこを見殺しにするヒナタさんに、俺は失望しました!」
ヒナタは震えながら、
「もう黙って!御託を並べても、そのひよこを助けることは認めません!」
クソッ、こうなったら…
最終手段を使うしかない。