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知られてしまったひよこの存在
「はぁ…貴方のような人は、時々いるんですよ」
彼女は呆れたような顔でこちらを睨んでいる。俺はその言葉と視線に圧倒され、喉が締め付けられるようだ。言葉を発しようものなら涙が出てきてしまう気がする。
「…ただ、ちょっと不思議ですね。やるとしたら、もっと何十匹も持っていくと思ったんですが…」
「教えてくれます?なんで一匹だけなのか。」
ヒナタが言っている言葉の意味はよくわからない。俺は依然、黙っている。
「なにか言ったらどうなんですか?なんで、そのひよこだけを盗もうと?」
重い口を、なんとか開けて言葉を発する。
「ぴーちゃんは、オスだ…。だから、だから…」
言おうとした言葉がうまく出てこず、まとまらない…。
「ぴーちゃん…?その、ひよこのことです?…にしても、そのひよこ以外にもオスのひよこなんて星の数ほどいるでしょう。ますます、意味がわからなくなりました。横流しするのが目的じゃなかったんですか?」
「横流しなんかが目的じゃない!」
俺は思わず声を荒げる。
「あ、ご、ごめんなさ…」
「キミがやったことは、横領罪です。そのひよこをボクに渡しなさい。さもなくば…」