第99話 マホの応援団が結成な件
今回の話は「何してんだコイツら」ぐらいの目で見ましょう。
『次の種目は障害物競走です。選手の方は入場門に集まってください。あと私は放送部の副部長です』
「私の出番ですね」
「頑張ってマホちゃん!」
借り物競走などの他の競技も次々と終わっていき、とうとうマホが出場する障害物競走となった。
初めての体育祭なのが理由か、マホは緊張で身体が震えているが、それ以上に楽しさが上回っているようで、笑顔で入場門へと向かっていく。
『また、次の競技の判定は写真部が行います。あと私は放送部の副部長です』
「写真部!?」
「どうしたラン。そんな驚いて」
写真部って聞いただけでそんなに驚くって、もしかして写真部と仲悪かったりする? いやでも、ランが誰かと仲悪いのは想像出来ないな。
てかこの学校に写真部あったんだ、俺の周りで部活入ってるのランや部長、それにガク先輩だけだから部活関連の事全然知らないんだよな。
「写真部ってのは、写真を撮ることに命を掛けている部活なんだ。0.1秒、0.01秒の壁を越えるために毎日激しい修行をしていて、大会で全国瞬間シャッター切り選手権大会に出場したりと高い実績を残してるんだ!」
「写真部ってそんな存在だっけ?」
「カメラのシャッターを押す時の反射神経だけなら、オレの8割近くの速さを持ってると有名だぜ!」
「お前の8割に驚くべきか、条件問わず同じ以上の速度を出せるお前に驚くべきか、俺には良く分からねぇ」
カメラのシャッターを切る速度を競う大会なんて聞いた事無いし、全国大会を優勝じゃなくて全国大会に出場だから、世界を探せば限定的とは言え、ランの8割以上の反射神経を誇る相手がわんさか居るのか……うん、ちょっと怖いから写真部には近付かないでおくか。
「まさか力男、写真部知らないの!?」
「知らねぇよ?」
「生徒会でも有名だよ」
「聞いたことねぇよ?」
「力男さんもまだ情報収集が足りないですネ」
「キレそう」
「なんで僕にだけそんな扱いなんですカ!?」
リュウはなんだか全身から「雑に扱って良いよ」ってオーラが出てるからな。
雑と言ってもさすがに悪口言ったり、パシリに使ったりする訳じゃないが、気軽に軽口を叩いて良いと思ってる。
『次の選手、スタートに移動してください。あと私は放送部の副部長です』
「マホちゃぁぁぁん! 頑張れえええ!」
お、マホの番来たか!
勇子は放送と共にマホがスタートへと並ぶ姿を見て、いつ頃から準備していたのか。背中部分に『I♡LOVEマホちゃん』と書かれた法被を着て、表に『マホちゃん頑張れ』裏に『マホちゃんファイト』と書かれた団扇を両手に持って……
「おい待てなんだそれ!?」
「え? ただのマホちゃん法被とマホちゃん団扇だよ?」
「マホさんを応援するためのグッズですヨ。それがどうかしましたカ?」
「お前らは何を言っているんだ」
当然のように言われても困るんだが。
しかもリュウもいつの間にかマホ応援グッズを装備してるし……まさかこれ、作ったのか? よく見たら法被にサイズ表記のタグが付いてないし、団扇も市販で売ってそうな団扇に文字の形を催して切り取った紙を張り付けたようだ。
「はい、力男くんもこれ着て応援しようね」
「お、おう……ありがとうな咲黄」
「咲黄ちゃん! オレのはオレのは!」
「ランちゃんのも用意してるよ」
「サンキュー!」
端から見たら複数人が同時に同じ法被を着て、両手に団扇を持ってる変な集団に見えるんだろうなぁ……つーか今日のコイツらどうしたんだよ。
「緑、おい緑!」
「何かしら」
「今日の3人なんか様子おかしいんだけど!?」
俺は緑に小声で話し掛ける。
マホの番なのに話す時間はあるのかと思われそうだが、スタート時に鳴らすピストルの準備に手間取っているようで、マホが走り始めるまでに多少の余裕はあるのだ。
「マホって体育祭初めてじゃない? 勇子が楽しい思い出にしようと法被や団扇を用意しようと提案して、リュウそれに乗っかって、咲黄も咲黄で生徒会の権限を使って持ち込みありにしちゃったのよ」
「何してんだアイツら」
用意周到すぎるだろ。
楽しい思い出を作りたいのは納得する。法被や団扇を作るのは100歩譲って納得する。リュウは純粋に学校生活楽しんでるから「面白そう」って理由が乗っかりそうだから納得する。
けど咲黄はなんなんだよ、何処で生徒会の権限を振り回してるんだよ!
「私では3人を止められなかったわ。くっ……!」
「そうやって悔しがってるわりには、緑も法被と団扇を装備済みなんだな」
「こ、これは! 折角用意してくれたのに使わないと悪いと思ったからよ!」
「はいはい、そういうことにしとくよ」
緑もマホを応援したかったんだな。
そういう俺も咲黄に貰った法被に身を包んでいるけどな。わりとこれ着心地良いな。薄い生地だから風通しが良くて着てるのに暑いって感じしないし、余裕を持った大きさしてるからサイズが小さくと動きにくい事も無い。
この団扇も手作り感が味わい深い。
ファイトと頑張れ、表と裏で書いてある意味は同じなのは少し気になるが、大文字で書かれているのでもの凄い目立つ。
具体的に言うと、他の観客がギョッとした目で此方を2度見してくるぐらい。これならマホにも見てもらえるな。
勇子、咲黄、緑、リュウ、ランそして俺の6人がマホ応援グッズを装備している間に、スタートの準備も終わったようだ。
『それでは見合って見合って~……はけっよい、スタート!』
「行けえええマホちゃぁぁぁん!」
勇子の応援、そしてスタートと同時になるピストルの音でマホは走り始める。
障害物競走に置いてある障害物は全部で3つ。
コース上に置かれている平均台1本をバランスを崩さずに渡り、ハードルを飛び越えて、網の中を潜って最後はゴールまでダッシュする。
純粋なスピード勝負ならば、一部の例外は除いてマホに敵う人物は居ないだろう。
だが障害物競走はスピードだけで全てが決まる内容では無い。
中々障害物を突破出来ない焦り、前に進めない苛立ち、障害物に躓いている間に後ろから追い上げてくるかもと言う恐怖。
誰だろうと勝つ可能性が残されているのが障害物競走である。
「マホ! 焦るとバランスを崩すわ、慎重に進みなさい!」
「はい!」
けれどマホには関係無い。何故なら応援してくれる友達が居るからである。
団扇を握る力が強くなりつつも、冷静さを崩さない緑。
的確な指示をマホへと出し、マホはそのアドバイスを素直に受け入れ早くゴールするよりも、慎重に平均台を進む事を選び障害物をクリアする。
「ハードルは当たるギリギリで飛ぶんだぞマホちゃん!」
「はい!」
珍しくマトモな陸上に関する知識を喋るラン。
ランの事だから「空中を蹴ればハードルを飛び越えられる」と言うかと思ったが、今回ばかりはいつもの奇行は鳴りを潜めて真面目なアドバイスであった。
「マホさン! 一歩一歩確実に進んでくださイ、まだ後ろとは充分に距離が空いてるので焦らなくて大丈夫でス!」
「はい!」
そして最後の障害物。網の中を身体を伏せた状態、つまりは匍匐前進で進んでいく。
脚では無く身体全体を使ったゆっくりとした動き、更には網に身体が取られてつい焦ってしまうだろう。
だがリュウは焦っているであろうマホが冷静になる言葉を掛ける。
「あと、少し……ッ!」
「マホさン!」
「「マホ!」」
「マホちゃん!」
「行っけええええ! マホちゃぁぁぁぁぁん!!」
俺達の言葉に鼓舞されるように、マホのスピードはグンッ一段と上がる。
それはまるで自身に掛かっているリミッターを外したゾーンと呼ばれる世界に入ったかのように、俺達の応援がマホの身体に力を与えたかのように。
ゴールへと一直線へと走り、とうとうマホはゴールテープを切った。
『マホ・ツカエール選手、大差を付けて今見事ゴールしました。あと私は放送部の副部長です』
「よっしゃあああ!」
「マホちゃんすげえええ!」
「やった!」
「やりましたネ!」
「やったわね!」
「お"め"で"と"う"マ"ホ"ち"ゃ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"!!」
「君達は何をしているのかね」
「あ、ガク先輩」
俺達6人がマホが1位でゴールした事に喜んでいると、3年生の席に戻ったはずのガク先輩がまたこちらに来ていた。
どうしたんだろ、ガク先輩もここでマホを応援したくなったのか?
「さっき3年の席に戻ってなかったか?」
「君達が目立った格好をしているから様子を見にきたのさ」
「ガク先輩も着てみるかしら?」
「着てみるも何も、そう何着も用意なんて」
「あるよ?」
「…………そうか」
咲黄は準備万端だなぁ。
何故か遠い目をしているガク先輩は、咲黄から受け取った法被と団扇を装備する。
よし、これでマホ応援団は7人になったから、1人がセンターとして前に出た時に綺麗な並びになる! なお、センターは勇子固定。元々これをしようって提案したのは勇子だからな。異論は認めない。
「ふむ。ところで次にマホくんが出る競技は何かね?」
「200m走だな」
元々マホは障害物競走だけの予定だったが、他の種目が足りなくて「どうせなら出てみたいです」と、そっちも出場する事になったんだよな。
「では私も応援に協力しようではないか」
そうこなくっちゃな!
そうして俺達7人は次の200m走でもマホを全力で応援するのであった。
※主人公達は凄い盛り上がっていますが、ただの体育祭です。ラスボス戦とかではないです。
まだ種目が残ってるキャラが居ますが、じっくり進めると時間が掛かるので一部はダイジェストになります。




