第89話 ワルインダーの側近が強敵な件です
魔法少女の名前は分かりやすいのにしたい。
最初は空……空と言えば青かな、と思ってスカイブルー。その後はプリキュアの法則を参考に「スカイ〇〇」にしてるけど、ダセェ! よく思ってる。
まぁ私にネーミングセンス無いし、今さら名前を変えるような事はしませんが。
「ぐっ、はぁ……はぁ……」
「つ、強い!」
帰宅途中、突如現れたコマツールと戦いを始めた私達。
あの時戦った頃よりも強くなっている、それなのにコマツールとの実力は未だに開いており、4VS1にも関わらずコマツールに攻撃を当てられず、私達の身体にはダメージと疲労が積み重なっていました。
「はあああああ!」
「やあああああ!」
スカイイエローがリボンでコマツールの四肢を縛って、スカイグリーンが、動けなくなったコマツールに向かってハンマーを振るいます。
「ふむ。この程度ですか」
「え!?」
「きゃっ!」
「スカイイエロー! スカイグリーン!」
しかしコマツールは自身を縛っているリボンを力ずくで引っ張り、スカイイエローを振り回します。
そしてスカイグリーンはその行動に巻き込まれるような形で、スカイイエローと一緒に投げ飛ばされます。
「さて、実力差をハッキリさせた所で再度貴方達に確認しましょう。5人目の魔法少女について知っていますか?」
「知らないって言ってるでしょ! しつこいよ!」
2人の必死の猛攻をもろともせず、服に付いた埃を軽く払い、世間話をするように、私達へ5人目の魔法少女について聞いてきます。
「ふむ。その様子から考えるに、本当に知らないようですね」
「さっきからそう言って……ます!」
私はコマツールへとパンチを繰り出しますが、後ろへ跳んで避けられてしまいます。
河川敷で戦った時のように払い除ける、ではなく避けるなので私の攻撃を脅威と思っているのかもしれませんが、コマツールからはまだ余裕が感じられます。
まるで、私達なんかいつでも倒せるかのように。
「では次の質問です。新聞とやらに載っている、魔法使いについて知っていますか?」
「ッ!」
新聞に載っている魔法使い、と言うのは今スカイイエローとして戦っている咲黄ちゃんのお兄さん。つまりは部長さんの事でしょう。
私達が魔法少女であると周りに知れ渡りそうになった時、ガク先輩に言いくるめられるような形になりましたが、身を挺して誤魔化してくれた部長さん。
魔法使いと言うのは私達の正体を誤魔化すために使った名前ですが、それとコマツールが動いている事にどんな関係があるのでしょうか。
「おや、その反応……どうやら知っているようですね」
「知っているのなら、どうするつもりですか?」
「どうすると言われましても、その方が5人目の魔法少女か確認するだけですよ」
「貴方にはあの写真が女の子に見えるのかしら? どう見ても違うじゃない」
「でもカッコいいよ?」
「スカイイエロー、それは後にしてちょうだい。話が逸れていくわ」
相変わらず部長さんが大好きなんですね。
緊迫した空気にも関わらず、フリフリとした格好をしているあの部長さんをカッコいいと言うスカイイエローに、思わず苦笑いが零れます。
「性別は関係無いですよ。ただ、名前に『魔法』と入っているのが気になりましてね」
「魔法って言葉によく反応するわね。意外にも臆病なのかしら」
「否定はしません。魔法少女は5人揃うと厄介極まりないですからね。揃うかもしれない、そのその可能性があるだけでも警戒する価値はあります」
5人揃うと厄介? 私の知る伝承では魔法少女は最初から5人です。
もしかしたら、私達のように1人ずつ増えていって、最終的に5人になったのかもしれませんが、少なくとも私自身は聞いた事がありませんね。
私達の知らない「何か」が魔法少女に隠されているのか、単に私が聞いた事ないのか。
魔法世界の図書館で伝承について調べていたガク先輩ならその「何か」について知っているでしょうか?
明日聞いてみるとしましょうか……無事、ここから脱出出来ればの話になりますがね。
「自称なのか、偶然名前に魔法が入っているのか、それとも本当に魔法少女なのか。判断に困りますが……まぁ関係無いです。貴方達を倒した後、魔法使いを消せば問題ないですから」
「…………消す?」
「はい。魔法少女は5人揃わなければ、充分に力を発揮する事は不可能。ですので貴方達を動けなくした後、1人になった魔法少女候補である魔法使いを消せば、私の目的は達成され」
部長さんを消す、息をするかのように平然と述べるコマツールの言葉の続きは、コマツールの身体を縛ろうとしたスカイイエローのリボンを避けたことにより、遮られました。
「おっと、危ないですね」
「……さ……ない」
「なんですか?」
「お兄ちゃんは、私が消させないもん!」
「ふむ。私相手に啖呵を切る勇気、そして兄妹愛は認めましょうか。でも力無き人間が私に挑んできても無駄ですよ」
「無駄なんかじゃないもん! お兄ちゃんは私を温かく見守ってくれて、魔法少女の事が周りにバレそうになった時も、魔法使いと嘘をついて守ってくれた。そんなお兄ちゃんを……貴方なんかに消させない!」
「ほぉ?」
スカイイエローの怒りの言葉をそよ風としか思っていないのか、表情一つ変えないコマツールですが、その言葉の中に気になる部分があったのか、指を口に当てて何かを考え始めます。
「『スカイリボン』ッ! スカイグリーン、スカイブルー!」
「分かったわ!」
「はい!」
その隙に、スカイイエローはコマツールの身体をリボンでグルグル巻きにします。四肢を縛ろうとした時と違って、これなら引っ張られることはありません。
「この程度、破れば」
「『スカイバリア』ッ!」
コマツールは全身に力を入れてリボンを破ろうとしますが、スカイレッドがコマツールを小さな箱に閉じ込めるかのように、周りにバリアを展開して動けなくします。
仮にリボンが破られたとしても、スカイレッドのバリアで周りの空間が充分に確保出来ていない現状では、腕や脚を伸ばしきれないため上手く力を入れられず、バリア内から脱出するのは困難でしょう。
「『スカイアタック』ッ!」
「『スカイハンマー』ッ!」
「ぐぅ!」
コマツールがリボンとバリアからの脱出を図っている内に、私とスカイグリーンはコマツールへと接近します。
私は拳を握り、スカイグリーンはハンマーを握ります。
私達が攻撃する瞬間にスカイレッドはバリアを解除し、リボンを破ろうとしているコマツールへと攻撃が当たります。
私とスカイグリーンの攻撃によって吹き飛ばされたコマツールはダメージこそ受けたものの、まだ動ける様子です。
ですが勢いづいた今が攻めるチャンスです。
「やはり魔法少女、4人だけとは言え厄介ではありますね。ですが、収穫はありました」
「空間が、崩れて……?」
しかし白い空間が崩れ、戦う前に居た住宅街の景色へと戻ることにより、その勢いは失っていきます。
「どういうこと? どっちが倒れるまで、出られないって」
「確かに私はどちらかが倒れるまでと言いましたが、それしか方法が無いとは言っていませんよ」
「嘘が上手なのね」
「嘘をついた事なんて、今まで生きてきて一度も。私は全てを喋っていないだけですよ」
確かにコマツールは嘘をついてません。
空間から出る方法は、どちらかが倒れるまで以外の方法は何も言っていませんでした。
その方法しか無いとも、他に方法があるとも。
勝手にコマツールを倒す以外方法が無いと思っていたのは私達ですが、ここまでされると、まるでコマツールの手のひらで踊らされている気分になりますね。
「決着はまたの機会につけるとしましょうか」
「待ちなさいッ!」
未だに底が見えないコマツールは、スカイグリーンの静止を聞かずその場から突然消えました。
突如現れたコマツールとの戦い。今回は私達の勝利となりましたが、実際は見逃してもらったようなもの。次も勝てるかと聞かれたら……私は首を横に振るでしょう。
コマツール、そして一度も姿を見せないワルインダーの総帥の2人が今後控えていると考えると、武者震いで身体が震えてしまいます。
私達は今後、ワルインダーの魔の手からこの街を、そして友達を守り続けられるのでしょうか?
「…………ふむ。やはり魔法使いと言う名称はただの嘘でしたか。万が一を考えましたが、無駄足だったようですね」
「ですが、今の魔法少女の強さを知れたのは収穫でした。あの強さ……想像以上に弱かったですね」
「もっと強くなければ私はおろか、総帥にも勝てませんが……あの魔法少女ですからね。きっと大丈夫でしょうね」
コマツールからすれば、魔法少女はまだ4人だったのに、突然自称魔法使いが登場して驚いているかもしれないけど、私も部長が魔法使いを名乗るって言う元々予定してない事態を勢いで展開に組み込んだので、こうなった事に驚いてます。
部長が一番ワルインダー振り回している説、あるかもしれない。
リュウ→部長の言葉を聞いて、ワルインダー脱退を決意
コマツール→部長が魔法使いを自称しているので、5人目の魔法少女かもしれないと調べに来た




