第85話 私の友達が寝不足な件です
第6章は全体的にシリアス多めになりますが、今回はギャグ100%です。
「おはようございます」
「おっはよー!」
「おはようございまス。マホさン、勇子さン」
力男さんに魔法少女としての秘密を共有したり、数ヵ月ぶりに魔法世界に帰省したり、夏祭りを楽しんだり、リュウさんの正体がワルインダーの幹部だったりと……怒涛の夏休みが明けて、今日からとうとう2学期が始まります。
実の所、学校が始まるのが楽しみすぎて、あまり眠れなかったのは内緒です。
だ、だって仕方無いじゃないですか! 今まで学校があったと言うのに、突然無くなって少し寂しかったんですよ!
それにリュウさんも目に若干の隈がありますから、私と同じようにワクワクして眠れなかったに違いありません。ええ、きっとそうです!
「勇子さン、ちゃんと宿題は持ってきていますカ?」
「バッチリ持ってきてるよ!」
「一度取りに戻りましたけどね」
「ちょっ、マホちゃんそれは言わないで!」
学校にワクワクしていて見逃していた私も悪いですが、宿題を家に忘れそうとしてないでください勇子ちゃん。
私が魔法で身体を強化して、ものすごい速さで取り戻ったから良かったですが、折角昨日頑張って終わらせたのに、水の泡になるじゃないですか。
勇子ちゃんに苦笑いをしつつ、この教室の光景に何処と無く違和感を覚えます。
あれ、おかしいですね。夏休み前と同じ教室の風景の筈ですが、何かが足りないです。教室を見渡せばヒントがありますかね。足りないモノ、足りないモノ……
「あれ、力男さんとランさんはまだ来ていないんですね」
「はイ。ランさんは夏祭り以降あっていませんガ、力男さんは昨日元気でしたよネ。何かあったんですかネ?」
私は教室を見渡して、力男さんとランさんが居ない事に気が付きました。
いつもなら力男さんがランさんに勉強を教えているような時間ですが、今日に限っては2人とも居ませんね。
ランさんが居ないのは部活かもしれないと予想はつけられますが、2人のバックが机に無い事から考えるに、そもそも学校に来ていないようです。
遅刻ですかね? でも2人とも遅刻するような性格では無いですし。何かあったのかと、少し心配してしまいますね。
「学校の時間だオラァ! みんな、おはよー!」
「ランさン、おはようございまス。今ちょうどランさんと力男さんの話をしてイ、テ……?」
しかしその心配は杞憂だったようで、話をしているとタイミングよくランさんが教室に来ました。
今日はいつもより遅く学校に来たのだろうと結論付けることにしましたが、学校に来るのがいつもより遅かった事以上の驚きが私を襲い、思わず思考が停止しました。
「あのランさン。その背中にあるのハ」
「ん? これは力男だ!」
「何があったんですカ!?」
ランさんは背中に力男さんを背負っていました。
体調が悪いのかと顔色を確認してみますが、目に隈がある以外は特に異常は無さそうです。熱は平熱ですし、顔が真っ青になったり、呼吸が荒い様子もないです。でしたら、これはいったい?
「実は昨日、宿題終わらすために力男の家に泊まったんだ! 寝ずに昨日の夕方から朝まで宿題に付き合ってくれたんだが、力男が学校行く時間になると寝ていてな……背負ってきた!」
ランさんは力男さんを椅子に座らせると、ソッと机に伏せるような形で寝かしつけます。
うーん、ワルインダーに攻撃されて、と言う可能性も考えましたが怪我している様子も無いので、これは本当に寝不足なだけのようですね。
それにしても、マジマジと力男さんの顔を見るのは初めてですね。
最近までは何処か壁があるような感じでしたからね。まぁ今はそんな事無いので、きっと夏休みの内に仲が深まったからでしょうね!
「悪いが寝かせてやってくれ。力男はとても疲れているんだ」
「誰のせいだよこの野郎」
疲れているのなら、無理に起こすのは止めようと力男さんから離れようとしましたが、それより先に寝ていた筈の力男さんが伏せていた顔を此方に向けてきました。
あくまで顔を上げる、ではなく向けるだけですけどね。
まだ眠いのか、睡眠不足なのか目の焦点が若干定まってないように見えます。
「あ、力男くん! 起きたんだね」
「なんとかな。学校来るまでにランの背中で仮眠したから、あと数時間は動けると思う。多分……それよりランは眠くないのか?」
「そりゃあこう見えて眠くzzz……」
「寝てるじゃねぇか」
ランさんは眠くないと答えようとしましたが、突然電池が切れたかのように力男さんに覆い被されように寝始めました。ランさんも眠かったんですね。
「はぁ。悪いマホ、このままの体制で良いからランを座らせてくれないか? さすがに立って寝るのは辛いだろうし。あとHRが始まったら起こしzzz……」
「寝てしまいましたね」
「僕と勇子さン、更にはランさんの宿題まで見ていたようですからネ」
一度起きたものの、再度眠気が襲ってきたのか力男さんが眠り始めてしまいました。
私はランさんの椅子を用意しつつ、眠ってしまった2人を微笑ましく眺めます。疲れているようですし、2人が起きないよう静かにしておきますか。
「恋愛の気配を感じるわ!」
「緑ちゃん、そんな大きな音で扉を開けちゃ駄目だよ」
しかしそんな思いを胸に抱いたのも束の間、緑ちゃんが教室の扉を開けて咲黄ちゃんと共に教室へと入ってきます。
恋愛の気配ってなんですかね? 私とマジュくんとの間にある愛の話でしょうか。
「あれ、力男くんとランちゃん寝ちゃってるね。夜更かししちゃったのかな」
「ランちゃんの宿題を終わらすために、2人とも朝まで寝ていなかったようでして」
「朝まで、寝ていない…………ねぇマホ。知っていたら教えてほしいのだけれど、力男は何処でランの勉強の面倒を見たのかしら?」
「力男さんのお家と言っていましたね。昨日の夕方から朝まで家に居たとも」
「つまりはお泊まり!?」
「どうしました緑さン。そんなに反応して」
「どうしたも何も、異性と家で1日過ごすのは恋人のする事よ!?」
「え、そうなんですか!?」
「それじゃあ私とお兄ちゃんは既に恋人同士!?」
じゃあマジュくんと毎日同じ家で過ごしていた私は既にマジュくんと恋人なんですか!?
確かに私とマジュくんはずっと一緒に過ごしてきた夫のような存在だとは思っていましたが、まさかマジュくんから告白されるよりも前に恋人になっていたなんて……私はマジュくんから告白してくるのをずっと待っていたと言うのに、一緒の家で過ごしていると恋人だなんて。ぐぬぬ、盲点でした!
「そうなのリュウくん?」
「聞いたこと無いんですガ!? と言うよリ、この状況どうするんですか勇子さン。ストッパーが誰も居ないですよ」
「まさか私とマジュくんが既に結婚していたなんて……!」
「えへへ。お兄ちゃんとの結婚式の会場、何処にしようかな~!」
「もはや恋人通り越して変な方向に話が拗れてきてませんカ!?」
結婚と言えば指輪ですが、私は既にマジュくんから指輪をもらっているので何一つ問題ないですね。
あの指輪をもらったのは5年と3ヶ月前。家族4人で、村から城下町までの道にある花畑へとピクニックしに行った時の話です。
私は何度か訪れた事がありますが、マジュくんは初めて見た花畑に興奮して、満面の笑みを浮かべていました。
それを見た私はマジュくんに喜んでもらおうと、生えているお花を少々摘まみましてマジュくんに冠を作ろうと思いましたが上手くいかず、泣きそうな所をマジュくんが「姉ちゃん、これ俺の気持ち! これあげるから元気出して」と言ってくれて、指輪をくれました。
指輪と言っても、茎1本を軽く縛ってその中に指が入れらるような簡易な指輪ですけどね。
それでも私にとっては嬉しいモノでした。細い茎で作られた指輪だったので、帰る途中で茎が切れて指輪が無くなってしまいましたが、あの指輪は私の心の中にいつまでも残っています。
だからマジュくん、全てが終わるまで待っていてくださいね。無事に片が付いたら私と2人で新婚旅行です!
そうしてずっと思い出に浸り続けている私を心配して、勇子ちゃんとリュウさんに話しかけられるまで、マジュくんへ思いを募らせるのでした。
━オマケ━
「姉ちゃん、別の世界でも元気にやってるかなぁ……ッ! なんだろ、急に寒気が」
ボケが渋滞しすぎて突っ込みが足りない……力男、早く起きてくれーッ! てかこの作品の8割ぐらいの突っ込みを力男が担っているんで、居なくなったら突っ込みが足りなくなる。
突っ込みが足りないので、マホが恋人からいつの間にか新婚旅行まで話を進めてるし、咲黄は結婚式の会場を考えてる。
あと今回書いてて判明したけど、緑が恋愛系で変な事言ったらマホと咲黄も乗るんでストッパーがいなくなる。大丈夫かこの魔法少女達……。




