第8話 俺のクラスメイトが絶望中な件
「終わった……」
「諦めるしか、無いんですかね?」
マホと赤元が絶望したような声を出しており、その表情に希望なんてものは見えない。ここ最近は何故だかアクロコとの戦いがなく、つかの間の平和が続いていた。
しかしこの二人の様子から分かるように、平和は永遠に続かないのだ。そして俺は二人をただ見つめ続ける。
「いや勉強しろよ」
定期テストに絶望を覚える二人に呆れながら。アクロコとの戦いや、ランの勧誘であっという間に時間が経っていて忘れていたが、今は5月中旬。つまりは定期テストの時期である。
まだあと数日も時間はあるが、逆に言うとあと数日しかないのだ。俺らの通っている学校では赤点を取ると追試、そして赤点を複数取っていると保護者との三者面談となる。
もしマホが赤点を取ったら保護者として誰が来るのか気になるが……まぁ、異世界の保護者か誰かでも連れてくるのだろう。この世界に両親が来てるかとか、簡単に世界を行き来出来るのかと言った事情は知らないが。
そして赤元とマホの二人は授業に付いていけていない状態である。どうやらこの学校では頭が悪かったり、授業についていけてない人物が定期テストの度に頭を抱えるのは風物詩だと噂で聞いた。そんなの風物詩にするなよ。
「もう駄目だ、おしまいだぁ……」
そしてここにもう1人、風物詩と化している人物が居た。そう、ランである。以前勉強を教えていた時から察しているかもしれないが、身体能力化け物のランは勉強が苦手である。
ステータス全て身体能力に極振りしたのかと言いたくなるランであるが、意外にも一応授業はちゃんと聞いていて、ノートも書いて提出物もしっかりと出している。ただし勉強は苦手である。
本人曰く「力男が教えてくれないと分からない」と言っているが、中学卒業したあとはどうするんだよ。高校、大学と俺と同じ所に進学する気かよ。
「助けてよリキえもん」
「誰がリキえもんだ」
人に泣きつく暇があるならパンでも食べて暗記してろ。テストに対して頭を抱えているお馬鹿3姉妹であるが、この三人が勉強に付いていけないのはそれぞれ別の理由がある。
ランは単純に授業の内容が頭に入っていないのだろう。毎朝の勉強会では躓く部分はありつつも、俺の説明自体は理解出来ているからランにとって、その教え方が合ってるか合ってないかだろう。
次にマホ。マホはいつ頃かでも語ったかもしれないが、今までとは常識も何もかも違うのだ。むしろ毎授業、頭から煙を出しながらも付いていこうとする姿勢は尊敬はすれど貶す部分では無いだろう。
そして最後に赤元。赤元は普通に頭が悪い。あまり喋ったことは無いが、これでも小学校からの付き合いであり、テストがある度に頭を抱えている姿を目撃されていては、何があったのかは理解出来る。
「リキえもん地球破壊爆弾出して~」
「テスト嫌だからって地球破壊させようとすんな」
超能力使っても出来ねぇよそんなの。ちなみにだが俺はテストに超能力は使わないタイプの人間だ。これでも転生前は超能力なんて持っていない、普通の人間だったのだ。
理由は分からないが、転生後から使えるようになった超能力を使ってテストをするのはズルしてる感覚があるし、なにより転生前と転生後で2回も中学の授業を受けているのだ。分からないからって超能力を使うのは俺のプライドが許さないのだ。
「まぁいいや。ほら、早く図書館で勉強するぞ。あとこれは貸し1つだから」
定期テスト近くは全部活休みのため、ランも放課後はどうせ暇だろう。いつも勉強教えてるのは貸しも何もしてないが、まぁ放課後の時間を勉強を教えるのに使うのだ。貸しを作ってもバチは当たらないだろう。
「ん? 今なんでもって」
「行き先耳鼻科に変更するぞ」
誰もなんでもするとも、なんでも言うこと聞けとも言ってないんだよなぁ。あと俺の背中に乗っておんぶしてもらおうとするな。自分の足で歩いていけ。
「「ジー」」
そんな光景を見ていた魔法少女が約2名。いや、魔法少女と言っている時点で二人しか当てはまる人物が居ないが。
マホと赤元であった。顔を突っ伏して絶望していたのは何処へ言ったのやら、頭を机に付けながらも器用に顔だけを俺らの方向へと向けていた。
「ラン」
「グッド!」
おんぶは諦めたのか、俺の背中から離れたランに視線を送る。何がとは言わずとも内容は通じたようで、2人も勉強に誘って良いかと喋る前に許可が降りた。
「一緒に勉強するか?」
「するー!」
「はい!」
戦いに巻き込まれるのは嫌であるが、それが理由で2人を避けるかはまた別の話である。さすがに無いとは思いたいが、赤点を取って補習中にアクロコが街を荒らしてる。けど補習中で動けない~なんて事になったら、目も当てられない。嫌だよ補習で戦いが出来ないニチアサなんて。
それにアクロコが何もアクションはして来ない今は平和と見て良いだろう。何か企んでいる可能性はあるが、それなら行動を起こしてきて無抵抗で攻撃されるよりも、戦える赤元とマホの近くに居る方が安全だろう。
「力男さん」
「ん、どした?」
早速4人で図書館へと向かおうとした時、マホに呼び掛けられてその動きを止めた。テレパシーを読めばなんて言おうとしてるか分かるが、言おうとしてるのをわざわざ読む必要はないだろう。
「3人に対して1人で教えるのは大変じゃ無いですかね?」
「あー、確かに。教える側がもう1人ぐらい欲しいな」
「うーん。他に勉強教えられそうな人に心当たりって有る?」
他と言っても、俺はそこまで友好関係広くないからな。このクラスでも友だちと呼べるのは、ここに居る3人ぐらいだろう。
知り合い程度の認識だと陸上部の部長とかが居るが、勉強出来るかは知らない。それにアッチも自分のテスト勉強があるのだ、定期テスト直前に「勉強教えて」と頼むのは迷惑だろう。
「じゃあオレの友だち誘って良いかな? 良いとも~」
「1人で完結させんな。いや、アテが有るなら嬉しいけどさ」
ランの知り合いとなると、陸上部部長のように変人が多いイメージであるが、勉強を教えられる人物とのことだから、大丈夫だろう。多分きっとおそらくメイビー。
そうしてランはそのアテである人物を誘うために学校へと残り、俺たち3人は一足先に図書館へ行って席を確保するのであった。




