第79話 僕の決意が固いな件でス
ひろプリは「ヒーロー」だったり、わんぷりは「動物」と言った作品のテーマがあります。
じゃあこの作品は? と聞かれたら私は「過去」と答えますね。第65話の時点で決めました。要するに後付けですね。うん、テーマ決めるの遅いな!
「義姉さん」
「私の事は総帥と呼べと昔言った筈だが……まぁいい。それで、私の忠告を聞く気になったか?」
「いエ、そういう訳でハ。ですが義姉さんに話がありまス」
楽しかった夏祭りの翌日。僕はその思い出を胸に仕舞イ、魔法世界に戻リ、ワルインダーのアジトで義姉さんと対峙していましタ。
義姉さんに正面切ってマトモに話すのは数える程度。家族と言えど緊張しますネ。ですが自分の気持ちを言わなけれバ!
「話だと? 私はスリュウに話す事など何も無い」
「僕にはあるんでス!」
「…………そこまで言うのなら聞くだけ聞いてやろう」
「ありがとうございまス」
いつもなら「早く去れ」と取り合ってくれない義姉さんですガ、僕の真剣な態度に感化されたのカ、それともただの気まぐれなのカ、今日ばかりは聞いてくれるようでス。
僕は喋る前に一呼吸置いテ、心を落ち着かせまス。大丈夫、僕自身の気持ちを義姉さんに正直に伝えル。それだけで良いんですかラ。
「僕はこの前義姉さんに心を鬼にしろと言われましたガ、こんな自分にも譲れないものはありまス」
「譲る譲れないと考えるのは後にしろ。今は世界征服を達成するのが優先だ。分かったなら早く」
「ですガ! 自分の思いを優先していてハ、僕を拾ってくれた義姉さんヤ、コマツール様に恩を返せないと悩ましタ」
悪い事をしている自覚はありまス。それでも恩を返そうト、自分なりに悪党として頑張りましタ。けど駄目だっタ。
学校に潜入した最初ハ、どう魔法少女の友情を崩そうか考えていましタ。
その第一歩として魔法少女に関わると言う下心ありきでランさんに近付いテ、陸上部に連れられて後に義姉さんと話す切っ掛けをくれた部長に出会いましタ。
そして学校なんて通った事無くテ、勉強について頭を抱えていると力男さんが助けてくれましタ。
当初の予定とは狂いましたガ、結果として見れば魔法少女に近付くと言う当初の目標には近付きましタ。
あとはそこから力男さんやランさんを利用しテ、魔法少女の友情が崩壊するよう行動するだケ。でも僕は動けませんでしタ。
何故なら学生として過ごすのが楽しかったかラ。勉強に頭を抱えながらも教えてもらイ、怪談話に怯えテ、宿題が嫌だと子どものようにランさんと勇子さんと一緒に学校に住むと宣言しましタ。
端から見ればアホそのものでしょうガ、全てを失い悪党になると決意した僕にハ、そんな生活は二度と手に入らないモノだと思っていましタ。
だからこそ僕はその生活を捨てられずニ、自分の信条を捨てられずニ、拾われた恩を捨てられずに悩んでいましタ。
「そんなある日、ある人間が教えてくれましタ。人は誰だって争イ、喧嘩をするのだト」
「確かに一理ある。実際、私自身も魔法少女と争っているのだからな」
「だから義姉さン……僕は義姉さんと喧嘩をしまス。今まで生きてきテ、一度もしてこなかった喧嘩ヲ」
「ほう?」
「僕は義姉さんが大好きでス! ですが自分の意見を曲げる事は出来なイ!」
「…………」
僕は義姉さんに対して啖呵を切りまス。
これは部長から貰ったアドバイスであり、僕の紛れもない本音でス。これ以上は悪党になれないイ、でも義姉さんやコマツール様の脚を引っ張りたくなイ。
だから僕は決めましタ。
「僕は今日からワルインダーを抜けさせてもらいまス」
「そうか」
「まぁやり残した事を終わらせてからになりますけどネ」
「やり残した事だと?」
「はイ。最低限のケジメを付けるためにモ、魔法少女と1対1で全力で戦いまス。怪人を操るのではなク、自分自身の手で」
悪党として三流にもなれない自分が貫ク、僕なりに考えたワルインダーの幹部としてのケジメ。何もせずにワルインダーを抜けるのハ、義姉さんやコマツール様に一生顔向けが出来なイ。
怪人に頼った戦い方は僕の力とは言えなイ。かと言って僕1人で魔法少女4人に勝てるとは思わなイ。
でも1人だけなラ、学生としての姿と幹部としての姿を持つ僕なラ、一つだけ勝ち筋がありまス。
「止めておけ。魔法少女は強い、無駄に貴様が傷付くだけだ」
「これは自分の意見を曲げられズ、かと言って押し通す事も出来ない半端者ガ、それでも一生懸命決めた決断でス。何を言われようとモ、これだけは押し通させてもらいまス」
「なら好きにしろ。コマツールには私から伝えておこう」
「お願いしまス」
「…………スリュウよ、最後に一つだけ言わせてもらおう。私は貴様がどんな選択をしようとも、世界征服をする目的は変わらない。戻ってこいとは言わない。だが、家族の元に戻るのに許可など要らない。よく覚えておけ」
「義姉さン! ありがとウ、ございまス……!」
「早く行け。私の気が変わらない内にな」
義姉さんの考えている事は相変わらず分からなイ。でも部長の言う通リ、大切に思っているのだと知れタ。義姉さんはワルインダーを抜けると宣言した僕を家族だと言ってくれタ。今はそれだけで胸がいっぱいになりまス。
僕は義姉さんに頭を下ゲ、荷物を纏めてワルインダーのアジトを去るのでしタ。さテ、次が僕にとって最後の戦いでス。魔法少女に勝つ作戦を入念に練らなけれバ!
「大きくなったな、スリュウ」
私はアジトを去るスリュウの姿をジッと見つめて、拾った頃の小さな姿を幻視する。
成長したのもあるが、恩を返したいと言う理由ではなく、葛藤しつつも自分の意思で進む道を決めた事に、私は義姉として誇りに思う。
私がスリュウを拾ったのはどれほど昔だったか。もう思い出せないが、あれは『厄災』と呼ばれる現象が起きた翌日であった事だけは覚えている。
自然災害なんかとは違う。そもそも便利上厄災と呼んでいるが、アレがいったい何なのかはスリュウも、スリュウより昔に、同じく厄災で全てを失った私にも分からない。
「話は終わりましたか? 総帥」
「あぁ。スリュウはワルインダーは抜けるそうだ」
「そうですか。これで残るは私と総帥の二人だけですね」
「あぁ、そうだな」
元々は私、コマツール、スリュウ、そしてコマツールが拾ってきた記憶喪失のアクロコの4人であったワルインダーも、いつの間にか2人だけになってしまった。
「…………コマツール、一つ聞かせてくれ。私は何処かで道を間違えたのか?」
「と、言いますと?」
「私は私やスリュウから、家族や故郷を全てを奪った厄災が怖い。厄災について何も知らないからこそ、再び厄災が起きれば全てを失うと体験しているからこそ、分からないのが怖い」
厄災について知るのは私、スリュウ、コマツールの3人だけ。村も、国も、村人も、そして厄災を後世に伝えようとした勇気ある者も全員、厄災に捲き込まれて消えていった。
いつしかそんな厄災は訪れなくなり、人々の記憶から忘れ去られた。だが厄災を経験している私は怖いのだ。本当に厄災は消えたのか、もう今後起こらないのか。私からまた家族を奪うような事は無いのか。
「分からないこそ、全てを管理しようと世界征服を計画した。世界を征服なんて動きをすれば魔法少女に妨害されるだろうと、先手を打って罪無き妖精を絶滅させようとしたが失敗。結果としてアクロコは消え、魔法少女は4人に増え、挙げ句の果てにはスリュウも私の元から離れた」
「やはり魔法少女は厄介ですね」
「もはや後戻りは出来ない、過去には戻れない。それは厄災を経験した私自身がよく知っている、もし戻れるのなら、私は…………ッ!」
パパとママに会いたい。
世界を、そして厄災すらも全てを知ってもう二度とあんな事が起こらないようにと。そう決めた日からずっと隠し続けていた本音が、スリュウの決断した姿を見てポロッと溢れ落ちてしまう。
「すまないコマツール、総帥としてあるまじき態度だった」
「お気になさらずに」
だがそんな思いも、すぐ胸の奥へと閉まった。私は総帥だ、過去のような出来事を起こさないためにも心を強く持たねば。悪い事をしている罪悪感を押さえなければ。
そうしなければ……涙がポロポロと溢れちゃうから。元の家族に会いたいって、甘えたいって、悪い事をしていると叱ってほしいって、弱い心が出ちゃうから。
ここで一つ裏話。
実は脳筋系幹部を考えてましたが没にしました。理由としては「あれ、別にコイツ要らなくね?」と思ったからですね。
Q.厄災ってなに
A.今回初登場した単語。内容は秘密。
この作品は9.9割が後付け設定で作られてます。
そしてこれを作者が突っ込むのは違うだろうけどさ……お前、アクロコに失敗したら消すって言ってなかった? あの時の残虐描写どこに行ったよ。
色々後付け設定を付けた結果、総師が異様にアクロコに厳しい人になってしまった。アクロコが何をしたって言うんだよ! ただ妖精逃がしちゃって魔法少女誕生させただけじゃねぇか!




