第74話 人外魔境部の部長が参上な件でス
※今回登場するキャラ達も真面目に話しています。
「ハァ……」
僕はアジトから人間界へと戻り、宛もなく街を歩きながら溜め息をつきまス。その溜め息の原因は義姉さんとの意見の対立。
どうして義姉さんがあんなにも甘さを捨てられるのカ、僕には全く分かりませン。
だからこそ悪党としては三流も良い所なのでしょうガ、三流と言われそうと僕には譲れない部分はありまス。
それは誰かを庇っている場面を見るト、出来る限り庇おうと前に出てくる人間を見逃す事でス。
極力言葉を掛けテ、それでも退かない場合は動けなくなる程度に痛め付けル。例えそれが子どもだろうト、妖精だろうト。
僕の目の前デ、人間が誰かを庇って居なくなるのは勘弁でス。
それを見るだけデ、唯一の家族だった僕を庇っテ、故郷と一緒に灰となり土に還った姉ちゃんを思い出してしまいますかラ。
ですがその譲れない部分を優先した結果、魔法少女を二度も見逃す失態をしましタ。
僕には義姉さんとコマツール様ニ、故郷も家族も失った所を拾ってもらって恩がありまス。
その恩を返したいと力は無くとモ、賢くなくてモ、弱者なりに悪党として振る舞ってきましたガ、やはり僕には向いてないのでしょうカ。
「ん? おお、リュウじゃないか!」
「この声はぶちョ……その格好、なんですカ?」
僕がそう落ち込んでいるト、フリフリな格好をしている部長が目の前から走ってきましタ。
あの新聞の内容、本当だったんですネ。正直ただのデマだと思っていましタ。
アジトに居た時は部長が魔法使いと名乗るっている理由ヤ、その目的について本腰を入れて調べようと思っていましたガ、こんな調子では身が入らないですネ。
「これは街をパトロールする時の服装だ! ところでリュウ、怪しい奴見たりしたか!?」
「鏡見ロ」
何処からどう見ても部長が怪しい人筆頭なんですガ。
ですがそうですカ、その格好は街をパトロールする時のモノですカ……余計にその格好をしている理由が分からなくなりましタ。
「鏡を見る……ハッ! まさか胸の所のリボンが曲がっていた!? くっ、これじゃあこの格好をカッコいいと言ってくれた妹の咲黄に示しがつかない!」
「美的感覚見直セ」
おっト、また敬語が外れてしまいましたネ。
悪党らしく振る舞おうト、コマツール様の真似をして敬語を使っていますガ、ふとした瞬間に素が出てしまいまス。
「ところでリュウ、元気無さそうだけどどうした? 相談に乗るぞ!」
「相談するような内容ではないですヨ」
「ん? そうか。でも誰かに相談したら気持ちが軽くなるかもって覚えておけ。ワイも勉強が出来ないって咲黄に泣きついたら快く教えてくれた事もあったからな!」
「兄としてそれで良いんですカ」
姉ちゃんは1人で大抵の事は出来テ、義姉さんは常に隙を見せない性格ですからネ。
その二人と比べるト、部長は出来ない事もあっテ、自分の隙を堂々と晒したりト、全くの正反対の性格をしていますネ。
「ワイは勉強が苦手だからな! けど咲黄は運動が苦手だから、その時はワイも色々手伝ってる!」
「仲が良いんですネ」
「兄妹だからな! リュウは姉とか妹とか妹とか妹とか兄とか弟居ないのか? あと言い忘れてたけど妹!」
「何回妹って言うんですカ。そうですネ、僕には義姉さんが1人居まス」
「おお、お姉さんが居るのか! 海外住みか!? それとも日本か!?」
「エ? ア、あー海外ですネ」
この世界では暮らす上デ、海外のハーフだと言う設定をすっかり忘れていましタ。ボロが出るところでしたネ、危ない危なイ。
「海外か! 離れて暮らすのは辛くないか? ワイだったら毎晩枕を濡らして街を沈没させる自信があるぜ!」
「貴方なラ」
「部長だ!」
「……部長なら出来そうなのでリアクションに困りまス。それにしてモ」
「ん、どうした?」
「いエ。義姉さんと喧嘩のような事になった僕とは違っテ、本当に部長と咲黄さんは仲が良いと思いましテ」
「喧嘩だと!? いったい何があった。間違えて冷蔵庫のプリンを食べたのか? それとも帰りが遅いからって名前を全力で呼びながら街中を探し回って恥ずかしい思いをさせたからか? はたまた自室で可愛いポーズとってるのを見たのか!?」
「それ全部部長が咲黄さんにした事ですカ?」
「ああそうだ!」
「胸張って答える場面じゃねぇだロ」
咲黄さんが大好きなのは充分に伝わりましたガ、この世界の兄妹はこんな感じなんですかネ? 僕と義姉さんとは大違いですネ。
どちらかと言えバ、姉ちゃんと幸せに暮らしていた時が近いようナ……いエ、あの生活はもう戻ってこないんでス。忘れましょうカ。
「喧嘩と言うよリ、僕と義姉さんとの間で意見が食い違ってしまっテ」
「なるほどな」
「僕には義姉さんの考えがよく分からないでス。それに僕は大切に思っているのかモ」
「大切に思ってるさ」
「部長?」
いつもの大声で元気そうに喋る時と違イ、部長は小さくモ何処か力強く僕の言葉を否定しまス。
義姉さんと同じように意見がぶつかってしまいましたガ、僕は反論せず不思議と部長の言葉を受け止めていましタ。
「実はワイも咲黄と喧嘩した事ある」
「そうなんですカ?」
「ああ! 意外だろ?」
「そうですネ。貴方達のように仲が良かったら喧嘩しないと思ってましタ」
「程度はあれど、人は誰だって争う。一方的だろうとも、我が儘だろうとも、自分も相手も意見を通したい。その結果起こるのが喧嘩だ」
世界征服をしたい僕達ワルインダー、それを阻止したい魔法少女。規模こそは部長の話している程度のモノでは無いですが、大まかに見ると喧嘩に当てはまりますネ。
「リュウ、お姉さんと喧嘩をするのは初めてか?」
「今まであまり関わろうとしなかったですかラ。そういえバ、正面から対立するのは今日が初めてですネ」
姉ちゃんとは生涯一度モ、そして義姉さんはどうにも話しかけにくいオーラを出していて喋ろうとすらしなかったですからネ。
拾われた時も僕の世話は主にコマツール様がしてくれていましタ。
その時からワルインダーの総帥として裏で動いていたようですガ、何が義姉さんをそこまで駆り立てるんですかネ。
「そうかそうか。なら次お姉さんと話す機会があったらこう言ってみろ! 『お姉さんは大好きだけど、自分の意見は曲げられない!』ってな」
「ですガ」
「ぶつかるのが怖い、自信が無いって?」
「ッ! なんで僕の考えガ」
「顔を見れば分かるさ。咲黄も自信が無い時は同じような顔をしてるからな!」
「…………どうしテ」
「ん?」
「どうして部長は僕にそこまで構ってくれるんですカ?」
部長自身は知らないですガ、僕はこの世界を征服しようと企んでいる組織の一員デ、部長の妹である咲黄さんと敵対関係にありまス。
そうでなくとモ、僕は部長はただの他人。面識も部活を体験入部した際に顔を合わせた程度でしかありませン。
関わったのは一度だけデ、恩が有るわけでも無イ。そんな僕に部長が構ってくる理由に皆目検討がつかないでス。まさか何か裏ガ……?
「何か困ってそうだったからな! それ以外に理由なんて無いさ!」
しかし僕のその考えとは裏腹ニ、部長は曇り一つ無い笑顔を向けてきましタ。
見返りを求めないその姿はまるデ、あの魔法少女や僕の姉ちゃんを彷彿とさせまス。
「部長ハ、優しいですネ」
「褒めた所で出るのは飴玉だけだぞ!」
「なんで持ち歩いているんですカ」
「泣いてる子どもにあげようと……ハッ! この暑さで溶けてる! リュウにもあげようと思ったのに!」
「誰も欲しいとは言ってませんガ」
「だが安心しろリュウ。夜になればもっと美味しい飴が食べられるぜ!」
「話聞けヨ」
さっきまで落ち込んでいた気持ちは何処へ言ったのやラ。優しくもちょっと抜けている所がある部長の姿を見テ、僕は笑顔をこぼしまス。
「実は今日の夜に神社で夏祭りがあってな。そこで美味しいりんご飴が食べられるんだ、気持ちをリセットする意味も込めて一緒に行くか!?」
「僕は別ニ……」
夏祭りには行かなイ。そう言おうとしテ、口を止めまス。
ここで部長と一緒に行動すれば魔法使いとしての行動理由が判明しますかネ。口を割らない以上、一緒に居ても無駄足になるかもしれませんがネ。それニ、
「いエ、一緒に行きましょうカ」
少しぐらいハ、ワルインダーの幹部スリュウ・コマツールとしての仕事を忘れテ、唯野リュウとして息抜きしても罰は当たらないでしょウ。
僕は魔法使いについて知るためだからと自分自身に嘘をついテ、部長と一緒に夏祭りをまわる約束を交わしましタ。
久しぶりに部長登場です。
ランもそうだけど、一発キャラだった一般人がここまで他キャラと絡むなんて誰が想像したよ……ちなみにですが、ガク先輩だけは練られたキャラなので一発キャラでは無いです。一般人ではありますけどね。




