第71話 私の後輩が自宅に遊びに来たな件さ
「さぁ、上がりたまえ」
「お邪魔しまーす!」
「お、お邪魔します」
魔法世界へ行く事になった日、私はマホくんと勇子くんと約束した「家政婦を見にまた遊びに来て良い」を果たすため、2人を自宅へと呼んだ。
2人を家へ上げて私の自室に行く前に、約束は先に済ませておこうと少しばかり寄り道をし、家政婦が仕事している場所へと案内した。
「心様、そちらのお客様は」
「この前話した私の友達さ。マホくん、勇子くん。紹介しよう、私の家で家事などを頼んでいる家政婦さ」
「こ、こんにちは! マホです!」
「勇子です!」
「初めまして。私はメイドの家政婦でございます」
「「…………?」」
メイド服を着ている家政婦の言葉に、2人は首を傾げる。
全く、マホくんと勇子くんが変な勘違いをするからその自己紹介は止めてほしいと頼んだのだがね。
「それは自称の間違えだろう? すまないね、彼女はメイドに憧れていて、時折変な事を言うのさ」
「心様。私は正真正銘家政婦でございますが、誰がなんと言おうとメイドでございます」
「それはもう家政婦として認めていないかね?」
例え見た目や心はメイドであったとしても、家政婦として雇われている以上は家政婦以外の何者でも無いと言うのに。
癖の強い性格ではあるが、これでも雇っている家政婦の中ではトップの技術を有しているのだから驚きだ。
部長くんもそうだが、癖の強い性格をしている人間ほど何かに対して秀でているのかね?
「さ、私の部屋は此方さ。着いてきたまえ」
「心様。お菓子や飲み物のご用意は」
「既に私の方でしているさ。このだだっ広い家の家事に加えて、私たちの気遣いまでするのは大変だろう?」
「え……私のメイドとしての技量を見せる場面は無いんですか? 紅茶を高い所から入れたり、トランプマジックの練習を日夜していたのですが」
「君はいったい何を目指しているんだい?」
「メイドでございます」
「少なくともそれは私の知るメイドでは無いね」
マジシャンにでも転職した方が良いと思うのだが……本人はこの仕事を気に入っているようだからね。これ以上言うのは止めておこうか。
私は自称メイドを名乗る家政婦の元を後にして、自室へとマホくんと勇子くんを案内した。
私の友人が居る間、部屋に入らないよう頼んでいるからね。ここなら人の目を気にする必要はないだろう。
「さて、ここには私達以外居なくなったさ。ペンヨウくん、ライヨウくん。出てきても問題ないさ」
「ぷはぁ! やっぱりカバンの中は暑いセイ」
「この程度で根を上げるライか」
「ライヨウはお爺ちゃんだから、気温の変化に気付きにくいんだセイ」
「何か言ったライ?」
「何も! 何も言ってないセイ!」
「ハハハ……ってあれ。ガク先輩、これって」
「あー、少し待ちたまえ。飲み物とかの準備が終わってから話を聞こうではないか」
何やら妖精くん達が盛り上がっていたり、マホくんが私に話しかけてきているようだが、今は飲み物とかの準備に手間取って手が離せない。
ふぅ、実験の際は部屋を出る機会が少ないからいつでも水分や軽食を補給が出来るようにと、小型冷蔵庫を自室に設置していて正解だったね。
お菓子は小さめのクッキーにでもしようかね。そしてマホくんと勇子くん用の紙コップを取って……ペンヨウくんとライヨウくんの紙コップは色違いにしておこうか。
「暑くて喉が乾いただろう? 遠慮せず飲みたまえ」
「ありがとうございます。それでガク先輩、これなんですが」
そう言ってマホくんが指を差したのは、部屋の壁に飾っている拳銃サイズの水鉄砲であった。
あぁなるほど、さっきはそれについて聞いていたのか。
私は2人と2匹がコップに口を付けるのを確認してから、飾ってある水鉄砲を手に持ちボタンを押して変形させる。
「これは変形型水鉄砲だね。これがどうかしたのかい?」
「いえ……その、ランさんと言うお友達がこの前持っていたのと同じに見えたので」
「あっ言われてみれば確かに! これで咲黄ちゃんに吹き飛ばされて、みんなでプールに沈んだよね!」
「君達の間にいったい何があったんだい?」
確かに変形させれば威力こそは人一人を簡単に吹き飛ばせるが、咲黄くんが勇子くん達に向けて発射した挙げ句、プールに沈む状況とはいったい……。
「それはある研究の息抜きで作った玩具でね。外で試し撃ちをしていたら、咲黄くんと部長くん。そして咲黄くんの友達と出会ってね。名前は……そう、ランくんと名乗っていたね」
あれは確か魔法世界から帰還して数日と言った所だったね。息抜きとは言え、折角作ったのだからと河川敷で水鉄砲の性能を確認していたね。
通常形態では、見た目通りの性能しか出せないが持ち運びに便利だったね。何回か通常形態の性能確認後、変形させた場合の性能も確認していたら、3人が偶然近くを通りかかったのさ。
一度水鉄砲を降ろして軽く挨拶した後、改めて性能確認をしてたらランくんが私の持っている水鉄砲を見て目を輝かせてね。欲しそうにしていたものだから、どうせならと思ってあげたのさ。
「実はあの水鉄砲は試作品同然の玩具でね」
「人を簡単に吹き飛ばすアレが玩具、ですか?」
「玩具さ。あれは元々没となった研究の副産物で完成したものだからね」
元気パワーの持ち運び、及び放射と言う形で攻撃に転用可能か息抜き感覚で実験していてね。結果としては持ち運びは可能だけれど、攻撃に転用は不可能だと判明したがね。
まぁ研究はしたのだから、何かに活かしたいと思ってね。今は夏だからって安直な理由でその研究を元に水鉄砲を作ったのさ。とは言っても、元気パワーなんて微塵も関係無い代物だし、変形機能もふざけて付けたのだがね。
「あぁ、そうだ。君達に一つ言い忘れていたが」
「ん? なになに、ガク先輩?」
「君達は今から、ジュースの中に注入した薬の副作用で寝る」
「え、ガク先輩今なんて……zzz」
「え!? マホちゃ……zzz」
「マホも勇子と突然寝ちゃったセイ」
私がうっかり伝え忘れていた言葉を聞き、それに対して疑問を浮かべる頃には偶然にも薬が身体中を回っていたようで、2人はその場に倒れるように眠ってしまっていた。
「おっとと。私としたことが、薬について伝えるのを忘れてしまうだなんて。いやぁ、こんな失敗するだなんて想定外だったなー」
「それ、絶対にわざとライよね?」
「知っているかいライヨウくん。乙女には秘密が多いのさ」
「その返答は自白と一緒ライ……」
あぁ、そうそう。君達は薬について警戒する必要は無いさ。私はマホくんと勇子くんに用意したジュースにだけ、薬を盛っていたからね。
ふむ。2人が目覚めるまでざっと数分と言ったところだろうか。それまでにコップを変えておくとしようか、また薬を混入させたジュースを飲んで眠るようなマネがあっては面倒だからね。
【家政婦(自称メイド)】
ただのモブもとい一般人。
家政婦うんぬんの話を前にしたので、一度も描写無いのはおかしいかな~と思って登場させてみた。一言二言喋るだけの予定だったが、一言目が「心様、そちらのお客様は」と言う台詞で、なんかメイドっぽい気がするな? と思って自称メイドになった。多分今後出番は来ない。




