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俺のクラスメイトが魔法少女な件  作者: のろとり
~第4章~魔法少女のターンが始まるで章
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第65話 過去の出来事が変更不可な件

「…………あー、クソッ!」


 俺はアクロコと一緒にテレポートで部室から自宅へと帰り、リビングでガク先輩が話していた内容を思い出していた。

 なんだよ、王様って。なんだよ、王様自身が国を滅ぼしたって。なんだよ、なんなんだよ! いったいアイツら(ワルインダー)はアクロコに何の恨みがあるんだよ!


 どうしてガク先輩がわざわざアクロコを呼んでまでその話をしたか分からないが、アクロコが睡眠薬を飲んで眠っていて助かった。

 もし話を聞いていたら、自身の正体と今までの行動に対して感情が爆発して、自暴自棄になってもおかしくないのだから。


「力男、大丈夫ワニか?」


「あ、あぁ悪い。少し考え事してた」


 自宅に戻ってきた辺りで目を覚ましたアクロコに心配され、俺は咄嗟になんでもないように装う。だが正直言っていつものように、隠せているか自信が無い。

 そもそも今の俺はどんな顔をしている? 悲しみか、怒りか、全てを通り越して無表情なのか。


 はぁ……自分の感情すらコントロール出来ない状態だと、いつアクロコに「お前は王様だった」なんて過去を話すか分からないな。ここは自室でふて寝して休むやり過ごすか。


「力男。その考え事って、もしかしてワニャアの事ワニ?」


「……なんの事だ?」


 俺は立ち上がろうと腰を浮かしたまま止まり、アクロコから視線を逸らして、秘密を悟られないようにする。


 落ち着け。確認はしていなかったが、アクロコが起きたのは家に帰ってきたから。

 つまりはガク先輩のあの話を聞いていなかったんだ。

 だから大丈夫、何も聞かれてない。いつも通りに話をするんだ。


「実はガク先輩が呼び出されて、スーパーのタイムセールを逃してちゃってな。いやぁ残念だな~ハハハ」


「無理に誤魔化さなくても良いワニ。途中から話を聞いてたワニ」


「マジか」


「マジワニ」


「いつから、聞いてたんだ?」


「力男が机を叩いた辺りからワニ。驚いて目を冷ましたら、ワニャアが元王様とか話してる所だったワニ」


「あー、あの時か」


 確かに机を叩いたな。具体的に言うと、ガク先輩が「アクロコは元王様で自分の国を滅ぼした」って言う受け入れたくない非情な現実を聞いて台パンしたな。


 アレで起きたのか。なるほど、なるほどなぁ……俺が原因じゃねぇか! 何が眠っていて助かっただよ、眠り妨げてるじゃねぇか! 何も聞かれてないじゃねぇんだよ、重要な部分まるっきり聞かれてるじゃねぇか!


 つーかその時から起きてるって事は、テレポートで自宅に戻ったのもバレてるよな? まぁもうそれは良いや。一緒に住んでる以上、超能力の事をずっと隠すのは難しいと思ってたし。


 それに俺が超能力を隠しているのは、周りに知られたら騒ぎになるからだ。

 家から出ないアクロコに知られても超能力の事は広まらないし、ワルインダーにここを嗅ぎ付けられた場合はテレポートで逃げる想定をしてたんだ。

 万が一に備えて超能力を使えるのは話した方が良さそうだな。


「なぁ……アクロコ。アクロコのガク先輩の話を聞いて、どう思った?」


 少なくとも自暴自棄になっている様子は無いが、内心ではショックを受けているかもしれない。

 テレパシーを使って内心を探る手もあるが、俺はアクロコの口から直接聞きたかった。

 俺と同じように、非情な現実を突き付けられた同士の思いを。


「以前も話したワニが、ワニャアにはコマツールに拾われるより前の記憶がないワニ。そして今も、記憶は戻ってないワニ」


「あぁ、そうだな」


「だからワニャアが王様だと言われても実感が無いワニ。ただ……」


「ただ?」


「不思議と本当の事だと確信しているワニ」


 頭ではなく、心で理解出来たと言うべきなのだろう。

 アクロコの顔には戸惑いと、達観しているのが感じ取れる。現実を直視してショックを受けている様子は無さそうだな。


「アクロコはこれからどうしたい」


「どうってどういう意味ワニ?」


「えっとだな。ペンヨウに謝りたいとか、ワルインダーに復讐したいとか、なんかこう……そういうのだ」


「フワフワしすぎワニ」


 そういうなよ。俺が今思っているのを、どうやって言葉にすれば良いのか俺自身も分からねぇんだからさ。


「ワニャアは……償いたいと思ってるワニ。記憶が無かったとは言え、自国や国民を滅ぼしてしまったワニから」


「命令されただけなのにか?」


「命令されたとは言え、実行したのはワニャア自身。償えるほど軽いモノでは無いワニが最低限、妖精国の復興を手伝いたいと思ってるワニ」


 これは国を滅ぼされた被害者であるペンヨウ達が決める処罰なのだろうが、アクロコと一緒に暮らしていて情が移ったのもあってか、俺としては「記憶を失ってたなら」と甘く見てしまう。


 だがアクロコにとって、記憶喪失の部分は些細な問題のようだ。それまでの経緯がなんであれ国を自分の手で滅ぼした。だから罪を償いたいようだ。


「辛くはないのか」


「ワニ?」


 俺の無意識に出た言葉にアクロコは首を傾ける。

 前世を思い出して、思わず出てしまった言葉を隠すように俺は口を抑えるが、喋ってしまったならもう言葉は戻せないと、口に当てた手をこめかみ部分へと移動させて言葉を続ける。


「非情な現実を突き付けられて、絶望したり後悔したりしないのか?」


「絶望も後悔もしてるワニ」


「だったら、なんで……」


「そのままだと前に進めないからワニ」


「前に?」


 どういう意味だろうか。

 そんな俺の疑問を溶かすように、アクロコは丁寧に説明し始める。


「ワニャアは力男に拾われるまで過去に囚われ続けていたワニ。過去のワニャアは何をしていたワニか。けどそれを知ると同時に、ワルインダーで手を悪に染めたワニャアは(過去)の場所に帰れないんじゃないかと怖かったワニ」


「そして総帥からの魔法少女を倒すと言う最後の命令に失敗、コマツールに粛清された所を力男に拾われたワニ」


「懐かしいな」


 あれは5月の下旬辺りだったか。そこから目覚めてずっと居候させてたから、かなり長い間一緒に住んでるのか。

 ペラペラとそれっぽい理由を並べていたが、本当はアクロコに同情を覚えたのが居候させるようになった本当の理由だ。


 今思えば、転生したばかりの俺と重ねてたのかもしれないな。

 過去の記憶も今の居場所も何もかも無くなったアクロコと、前世の世界も親友も何もかも消えた俺。何処と無く親近感を覚えていたのかもな。


「拾われた最初は困惑したワニ。ワニャアはここで暮らして良いのか、過去を思い出さなくて良いワニか。けれど力男と平和な日々を過ごす内に、それらを気にしないようになったワニ」


「そんなある日、ペンヨウが家に来たワニ」


「あの時のペンヨウは、ワニャアの事を相当恨んでいたいたワニ。まぁ恨まれるような事をしたワニだから、当然と言えるワニが」


 今でこそ仲が良い……かはちょっと微妙だが、敵意を向けるような事は無くなったが、俺の家でアクロコと再開したペンヨウは、親の仇のように睨んでたな。いや、実際に親の仇なんだけど。


「でもペンヨウは水に流してくれたワニ。ある日、力男が席を外してる時にペンヨウに恨んでないか聞いたワニが、そしたら『恨みはあるセイがそれは過去のアクロコに対してセイ。改心した今のアクロコに恨みは無いセイ』と言ってくれたワニ」


 そんなことがあったのか。

 ペンヨウがそういう性格じゃないのは分かってるとは言え、アクロコに嫌味の一つや二つぶつけるほど恨んでいただろうに、全部水に流していたのか。

 アクロコとばったり会わせてしまった時も思ったけど、ペンヨウは本当に強いな。


「ワニャアはずっと過去に囚われ続けたワニ。でもペンヨウは違ったワニ。嫌な過去すらも受け入れて、前に進んでいたワニ」


「今のワニャアがいくら丸くなろうとも、ワルインダーで悪事を働いていた事、妖精国を滅ぼした事、元王様なのは変えられない過去ワニ」


「けど、その過去をいつまでも引きずっていては、いつまでも前に進めないワニ。だからワニャアは決めたワニ。辛くとも、絶望しても、後悔しても、過去を受け入れて前に進むべきワニと」


「そう、か……おお、そうかそうか!」


「ちょっ突然何ワニか!」


 俺は嬉しくなりアクロコの頭をグリグリと撫でる。

 アクロコは恥ずかしそうに撫でる手を退けようとするが、幼児にすら劣る程度の力では俺の指1本すら退けられない。


「中々に覚悟決めてるじゃねぇか。てっきり来世にすら引き摺るレベルで心の傷に負ってると思ってたんだがな」


「勝手に殺すなワニ!」


「よし。アクロコが覚悟を決めた記念として、ファ〇チキ買ってこよう! 何個だ、何個欲しい?」


「ファ〇チキ!? なら1億個お願いワニ!」


「小学生かよ!?」


 そもそも1億個とか、この街にあるファ〇チキ買い占めても足りないだろ。取りあえず近所のコンビニからあるだけ買ってくるので満足してくれない?


「全く…………ありがとうな、アクロコ」


 俺もアクロコのように前に進まないとな。

 俺の胸の中には、未だに前世で最期の感じた無力さや後悔が今でも閉まわれている。前世で俺の死ぬ原因となった邪心に対しての憎しみがある。親友との思い出がある。


 どれもこれも、今の俺を構成するのに欠かせない過去だ。でもずっと前世(過去)に縛られたままだと、いつまでも前に進む(今世を楽しむ)ことができない。


「なぁアクロコ」


「なにワニ?」


「この夏休み(人生)、いっぱい思い出作ろうぜ!」


 だから……そう。まずは前に進む一歩目として、学生は学生らしく楽しく夏休みを過ごそうじゃねぇか。

【次章予告】

 マホ達と魔法少女の秘密を共有したり、ガク先輩達が魔法世界に旅行に行ったり、アクロコの過去が判明したりと……中々に濃い夏休みだったなぁ。まだ夏休み半分も終わってないけど。


 ん、もしもし? あぁランか。え、なに。ジャンボパフェ食べたり、プールで泳いだり、神社のお祭りに行きたい? 予定多すぎだろ。まぁ良いや、ここ最近シリアス続きだったし、久しぶりに日常を楽しみますか! ってあれ、日常パート以外もあるの?


次章:俺の夏休みが騒がしい日々になるで章

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