第60話 怪人との戦いがピンチな件です
「くっ!」
私は自身の尻尾を切り離して飛ばしてくる怪人の攻撃を、後ろへ跳んで回避します。
すると私が先程まで居た場所に尻尾が当たり、爆発を巻き起こします。それはまるで、この街を壊した時のような、いえこの街を壊している爆発と全く同じものです。
私に向かって攻撃してきた怪人───トカゲのような見た目をしている───は、自らが切り離した尻尾を再生させ、私の方を睨み続けてきます。
怪人の攻撃は爆発する尻尾を切り飛ばしてくる攻撃のみ。尻尾が再生しますが、怪人自身の動きは遅いので1匹だけなら私1人でもなんとか出来ますが、
「おヤ、もう終わりですカ? 魔法少女」
「姉ちゃん……!」
「大丈夫ですよ、マジュくん」
マジュを庇いつつ、怪人とスリュウを同時に相手するのは骨が折れますね。せめて他にも誰か居てくれれば助かりますが……。
私は勇子ちゃん達と城下町へ遊びに来た時、1人で勝手に走り出してしまったマジュくんを追いかけていきました。
しばらく街を走る内にマジュくんに追い付き、来た道を戻ろうとした時、怪人が街を襲撃してきました。
突然の襲撃に、周りの人達はパニックになって逃げ惑う中、マジュくんもパニックになり脚が縺れて転んだ拍子に、右足を捻ってしまい動けなくなりました。
私はマジュくんが戦いに巻き込まれないよう、一度抱えて安全な場所まで移動させようとしましたが、怪人の隣にスリュウが現れました。
私の目の前には怪人とスリュウ、後ろには動けないマジュくんが居る状態となり、マジュくんを抱えて一緒に逃げれそうな隙が無いため、私はマジュくんを守るような形で怪人とスリュウに戦いを挑み始めました。
私1人では厳しい相手。ですがこの城下町には勇子ちゃん達も居ます。
遠くからでも分かるような爆発音でしたので、すぐにでも駆け付けてくれると思いますが……この場所とは別にもう一つ、同じような音がしたのが気掛かりですね。
ペンヨウには戦いが始まる前に、勇子ちゃん達を探してここに来てもらうよう頼みましたが、あちらでも怪人が出て戦っていると仮定するならば、助けはあまり期待出来ないですね。
「やりないイ。怪人トカゲール!」
私がそう考えている間でも、相手の攻撃は止まることはありません。
スリュウは怪人トカゲールに私を攻撃するように命令をしました。
トカゲールは私とマシュくんに目掛けて尻尾を切り飛ばしてきましたが、私は動けないマジュくんを抱えてジャンプし、尻尾の攻撃をかわしました。
しかし、かわせたのはその一度のみ。私の攻撃を読んでいたと言わんばかりに、トカゲールはすぐに尻尾を再生させ、その再生させた尻尾を空中で身動きが取れない私達へと、切り飛ばしてきました。
「マジュくん!」
私は抱えているマジュくんを庇うように、空中で無理矢理身体を捻って、トカゲールの尻尾を無防備な背中で受けます。
尻尾は私の背中に当たると同時に爆発し、その衝撃はは私の身体全体へと伝わっていきます。
私はマジュくんと共に地面へと吹き飛ばされますが、マジュくんを力強く抱え、落下時の衝撃を全部自分自身で受けます。
「ぐっ、ううッ!」
無防備な状態で受けてしまったトカゲールの攻撃。マジュくんを守るために身体全体で受けた落下時の衝撃。
それより前に、マジュに攻撃が届かないよう何度も尻尾を受け止めた疲れもあったのでしょう。
私はトカゲールとの戦いでかなりのダメージと疲労を身体に背負ってしまい、その場で立とうとするも脚に力が入らず、バランスを崩してしまいました。
「…………魔法少女と言えド、家族を庇えば何も出来ないのですネ。その足手まといを見捨てれバ、貴方だけで助かるのでハ?」
「お、俺が……姉ちゃんの足手纏い?」
「えエ。強大な力に守られるだけの貴方でハ、ただの足手纏いでス。もし足手纏いになりたくなりのなラ、その魔法少女と縁を切って───」
「……じゃ……せん」
「エ? なんですカ?」
今にでも倒れそうな程の痛みが身体中を走りますが、私はスリュウの言葉によってジワジワと込み上げてくる怒りで強く拳を握り、無理矢理身体を起こします。
「マジュくんは足手纏いなんかじゃありません!」
「ッ!」
「マジュくんは私の弟です。私はマジュくんを、家族を見捨てるなんて出来ません!」
「ハァ……やはり、貴方も家族を助けるんですネ」
「え?」
スリュウが小声で呟いた事に私は疑問を浮かべました。
内容までは聞き取れませんでしたが、スリュウが一瞬だけ見せた悲しそうな声色と表情に、私は自然と力の入っていた拳を軽く開きました。
今の言葉は気のせい、では無いですね。
どうしてそんなにも悲しそうなのか。いったい何を抱えているのか。
私は更なる疑問が浮かびましたが、スリュウは何事も無かったかのように、すぐ声色と表情を元に戻し、私達に敵意を向けてきました。
「トカゲール。魔法少女にトドメを」
「させない!」
私はマジュくんを守ろうと前に出ようとしますが、先程力が抜けてしまった影響か、前に一歩出ると共に身体は崩れて地面へと倒れてしまいました。
マジュくんを守らないと。
その思いから私が一生懸命身体を起こそうとしていると、マジュくんが捻っている右足を引き摺るようにして私の前に立ち、スリュウの方を向いて両腕を広げました。
「マジュくん!?」
「姉ちゃんは俺が守る!」
「…………そんな怪我している状態で人を庇うなんテ。そんなのは周りの事を考えない人間がする行動ですヨ。全ク、無力な人間が何をしようとも無駄だと言うのニ」
「無駄じゃありません!」
「姉ちゃん……」
「マジュくんは傷付いても私を守ってくれました。それを無駄だなんて言わないでください!」
「いいエ、無駄ですヨ。力が無ければ何も出来なイ、何も守れなイ。そんな力が無かったから僕ハ……いエ、今は目の前に集中ですネ。トカゲール!」
守っていたはずが、守られてしまった。
私は知らず知らずの内に大きくなっていたマジュくんの背中を眺めつつ、トカゲールから切り離されてくる尻尾からマジュくんを守ろうと、なんとか起き上がろうと身体に力を入れようとします。
ですが脚に上手く力が入らず、地面が氷で出来ているのかと言うほどに滑り、起き上がれません。
ならせめてマジュを引っ張って、私が上から覆い被さるような形でマジュくんを守ろう。
そう決意した時、私とマジュくんの横を人が通りました。
その人は普通の人間では出せないスピードで私達の前へと立ち、左手に持っているハンマーで尻尾をトカゲールへと打ち返しました。
「マホ……いえ、スカイブルーの言う通り、無駄なんかじゃないわよ」
「スカイグリーン!」
「遅れて悪かったわね。少し道に迷っちゃってたわ」
その人───スカイグリーンはハンマーを地面へと突き立てて、後ろに居る私達へと優しく振り向きます。
「さて、と……よくもマホやマジュを痛め付けてくれたわね。それ以上するなら私が相手になるわよ!」
スカイグリーンはトカゲールとスリュウの居る正面を向くと、ハンマーを振り回しつつ、大きな声で啖呵を切るのでした。
戦闘描写無い組(咲黄&緑)を活躍させようとしたら、勇子&マホが噛ませみたいな描写になったでござる。
言うて戦闘描写自体、アクロコ戦。コマツール戦。ニワヨウ戦。前回、そして今回ぐらいだけどね。




