第55話 私の疑問が確信に変わるな件さ
【昔々、この世界では人間と妖精のニ種族が暮らしていました。
妖精は不思議な力で人間達を助け、人間達はモノ作りの力で妖精達を助け、互いに助け合って過ごしていました。
そんな平和がいつまでも続く……そう思われていたある日の出来事でした。突如として『邪神』と名乗る存在が現れました。
邪神は言いました。
「我は全ての世界を滅びへと誘う者。この世界も我の手により滅ぼさせてもらおう」と。自分達の世界を滅亡なんてさせない。人間達と妖精達は邪神に立ち向かいましたが、そんなちっぽけな力は邪神の前では無力そのものでした。
このまま何も出来ず、邪神に滅ぼされた世界の1つになる。その時でした、5匹の妖精達が異世界から選ばれし5人の女の子を連れて来ました。
彼女らは5匹の妖精達から力を借りて、邪神へ無謀な戦いを挑みました。そして長い長い激闘の末、邪神は倒され彼女達と妖精達の力により、何処かへと二度と目覚める事が無いよう完全に、どんな事があろうとも解けないような封印が施されました。
そうして邪神を倒した彼女達を人々は『魔法少女』と呼ぶようになり、人間を魔法少女へ変身させられる妖精達の力が悪用されないよう、妖精達の住む国を作りそこに悪しき者は踏み入れられないよう結界を作りました。
めでたし、めでたし。
著:ダウニア・ゲジム】
私は何冊目か数えるのが億劫になるほどの、魔法少女の伝承が載っている本を閉じて目を瞑る。
現在私はマホくんの村が属している国の図書館へと来ていた。理由としては単純に調査を進めるため。ここならば年中開いているようだし、1人1人に聞き込みするより本を読んだ方が情報を手に入れるのが早いからね。
「全く。魔法少女の伝承はどれもこれも、似たような内容のようだね」
この伝承を書いたダウニア・ゲジムって人物はいったい何を考えてこれを書いたんだろうね。私が今読んだ伝承は子ども向けの部類のようだが、伝承の中に「ちっぽけな力」だの「無謀な戦い」と書いてあるのは中々に酷いと思うのだが?
それに邪神の名前や封印場所が載っていないとは……マトモに伝承する気があったのだろうか怪しいね。伝承を幾つも読んでみたが、変わった情報とすれば著者───恐らくだが、伝承を残した人物を著者として統一しているのだろう───が同一人物で、文章に多少の違いはあっても、大まかな内容自体は同じぐらいだろうか。
「ガクの世界とライヨウ達の世界は文字が違うライが、どうしてそんなサラサラ読めるライ……」
「王の側近として欲しい逸材フク。問題があるとすれば、性格と行動力と、賢すぎていつの間にか国を乗っ取りそうな所フク」
「文字程度、絵本を読めば簡単に覚えられるさ。それとフクヨウくん、私は国家転覆なんてするつもりは無いさ」
私は1人で調査するより複数人で調べた方が効率が良いだろうと連れてきた、年長者で物知りであろうライヨウくんと、王様であり伝承や妖精国について詳しいであろうフクヨウくんの呟きに返事をする。
絵本ならばページを捲る度に分かりやすい絵が付いているかね。絵の内容をさえ理解すれば、何が書いてあるかは大体理解出来る。そして絵本何冊か読んでいけばどんな法則で文字が使われているか読み取れる、これだけでマスター出来るさ。
「一応聞くが、君達は伝承に載っている邪神について何か知っているかい?」
「ライヨウが産まれるよりずっと昔の話だから知らないライ」
「王族にも伝わってないフク。きっと悪い奴が邪神を復活させないよう、あえて一部の伝承を途絶えたのかもしれないフク」
フクヨウくん、どうしてその「悪い奴」って部分で私を見るんだい? それじゃあまるで私が、自分の実験のために邪神の封印を解こうとする危険な人間みたいじゃないか。
研究優先の私でも、さすがに取り返しのつかないマネをするつもりはないさ。実際、君達妖精を研究のために解剖したりしないだろう? もっと私を信頼したまえ。まぁ、逆に言えば取り返しのつくような実験ならばなんでもするがね。
それと今はワルインダーの方が優先さ。誤って邪神の封印を解いた結果、世界征服を企む悪の組織ワルインダーVS魔法世界を滅ぼしかけた邪神VS魔法少女なんて事態になったら目も当てられない。仮にそんな事になったら、負けるのはマホくん達だろうね。
ワルインダーの怪人と互角の勝負をしている今のマホくん達では、2番手のコマツールとやらを倒すのは困難だろうし、それより上のワルインダーの総帥となれば尚更である。
邪神の方も、強さが伝承通りならば恐らくそのコマツールよりも強いだろうからね。ワルインダーか邪神、例えどちらかが倒れたとしても、残った方に今のマホくん達では全滅させられるだろうね。
「ところで聞きたいのだが、この伝承にある妖精国の結界とはどんなものだい?」
「伝承以外の事は知らないライ。フクヨウ、王様としてそういうのは伝わってるライ?」
「王様代理だけど、一応はフクヨウにも伝わってるフク。妖精や清い心を持っている人間だけが妖精国に入れるようにする結界フク。多分だけど今も起動してると思うフク」
「おっと、それはおかしな話だね」
もしライヨウくんの話が本当ならば、ワルインダーの手によって妖精国が滅ぶことは無いだろう。それこそ、清い心を持っていながらも誰かに騙されていたり、妖精自身が国を滅ぼそうとしない限りは…………いや、少し待ちたまえ。
「ライヨウくん、フクヨウくん」
「気付いたフク?」
「そんな言い方をされればね」
私は顔を押さえて上へと視線を向ける。
妖精国を滅ぼしたのがアクロコと呼ばれる人物としか知らなかったが、まさかそんなことになっていたとはね。
だがそれと同時に謎が解けた。
私はこの世界に来るまで、どうして今まで妖精国は襲われる事は無かったのか疑問に思っていた。
魔法世界で今まで産まれてきた人間が全員善良とは限らない、妖精の力を目につけた悪党が1人や2人居てもおかしくはないだろうに。
理由としては結界により、悪党が妖精国に入れないようになっていたからであった。
そんな疑問が同時に新たに別の疑問が浮かんだ。
どうしてワルインダーによって妖精国は滅びたのかとね。全く、そんな方法があるなんて盲点だったよ……。
「一つ聞かれてくれたまえ。それに気付いてるのは誰が居る?」
「フクヨウ、ライヨウ、クラヨウの3匹だけフク」
「マホくんは妖精国出身じゃないからまだ分かるが、ペンヨウくんも気付いてないのかい?」
私の質問にフクヨウくんは首を縦に振る。
他の妖精くん達が気付いているなら、ペンヨウくんも分かると考えていたが……いや、それは一度後で考えるとしよう。今は確認が大事だ。
「念のため確認させてほしい。それが勘違いの可能性は?」
「無いライ。今は力男の家に居候をしているようライで、一度力男の家にお邪魔した時に」
「待ちたまえ。それは初耳だ」
力男くん、君は何をしているのかね?
散々戦いに巻き込まれないと言うような行動をしながら、特大の爆弾を抱えるなんて何を考えているのだが。
もしかしたらそれを知らないだけかもしれないが、ワルインダーの幹部を手元に置いてるだけでも充分爆弾そのものだろうに。
「……話を続けて良いライ?」
「あぁ、すまないね。頼むよ」
「分かったライ。一度力男の家にお邪魔した時に、ペンヨウと一緒にゲームしているのを興味があるフリをして、観察していたライが……」
「疑問が確信に変わったと」
然り気無くペンヨウくんが妖精国を滅ぼした張本人と仲良くゲームをしている驚くべき事実が発覚したが、今は関係無い話なので置いておくとしよう。
ライヨウくんはペンヨウくんと一緒にゲームをしているアクロコを観察して、ずっと抱えていた疑問が確認になった。いや、確認になってしまったようだ。
「最初会った時は力男がクローンでも作ったと思って警戒したフク。でも実際は……」
力男くんに誰かのクローンを作る技術なんて無いが、君達からすればクローンの方が良かったと言うべきだろうね。
「ふむ…………」
どうやらワルインダーは、この国にあるどの本にも載っていなく、長生きしているライヨウくんより深く、王様のフクヨウくんと同等かそれ以上の妖精の知識を持っているようだ。
これは、思った以上に厄介な相手のようだね。
いつか魔法少女が誕生した時のために、伝承を後世に残そうと思いましたが……文章を書くのは難しいですね。ついつい変な書き方をしてしまいました。 by ダウニア・ゲジム
…………なんか後書きに侵入してる奴が居る!? ほら、ここ後書きだから。本編とは別次元の場所なんだよ。分かったら早く帰りな。シッシッ!
さて。本編内でガク先輩が何かに気付いたようですねぇ。多分読者の中にも「これあれじゃん!」と思った方が居るかもしれませんが、本編ではまだ明言するまではお口チャックでお願いします。




